【新社長インタビュー】〈東洋製罐グループホールディングス・大塚一男氏〉飲料缶の小ロット対応強化 海外ビジネスの拡大推進

――ホールディングス社長就任の抱負を。

 「東洋製罐グループ各社が持っている技術やノウハウが我々の強みだ。創業から100年間で培ってきた有形無形の資産を組み合わせ、新しい価値を顧客に提供していくことが任務だと考えている。鋼板事業と製缶事業の技術が融合して完成したタルク缶のようなものを上市していきたい」

――新中期経営計画では、20年度に売上高8200億円、経常利益510億円の達成を掲げている。製缶事業で取り組むべき課題は。

 「アルミ缶はビール系飲料が漸減している一方、低アルコール飲料需要が底堅い。低アルコール飲料は多品種小ロット製品が多いため、ロットが小さいものをどう効率よく生産していくかが課題だ。これに対応した設備を導入するだけでなく、IoTを取り入れた新たな生産システムを構築する」

東洋製罐グループホールディングス・大塚社長

 「今年から出荷を始めたアルミボトル缶は、ペットボトルコーヒーの台頭という課題はあるが、市場動向を見て柔軟に対応していく。スチール缶は国内の飲料向けが減少しているが、堅調な海外の缶詰容器需要を取り込んでいく」

――海外での大幅な売上拡大を標榜している。

 「東南アジアで製缶ビジネスを展開しているがタイでは新拠点を設け、既存拠点の機能を移管して収益性を高める。ミャンマーは食缶の需要が期待できる。新ライン増設の検討やチャンスがあればアルミ缶も視野に入れたい。中東やアフリカでは人口増に合わせて飲料缶需要は伸びていくだろう。こうした需要には他社への技術提供なども含め、さまざまな選択肢をもって対応していきたい」

 「東洋鋼鈑がトルコで運営する表面処理鋼板の合弁会社では、食品用容器として十分にビジネスが成り立つブリキを生産している。中東やアフリカといった新興国を念頭に置いた場合、地政学的にも材料供給の基地としては非常に魅力的。ソリューション的な機能を通じて、潜在需要を取り込んでいく」

――包装容器では国内拠点の再編を視野に入れている。

 「飲料缶需要が減少している中で、より効率性を求めるために集約する考えを持っている。環境負荷を低減した新しい技術などを取り入れ、省人化やエネルギー効率の向上を図っていきたい」

――昨今熱を帯びる電気自動車市場は、どう捕捉していくのか。

 「車載用二次電池においては、ニッケルめっき鋼板を生産する東洋鋼鈑や、リチウムイオン二次電池用外装材の製造・販売を手掛ける合弁会社『T&Tエナテクノ』を中心に、素材供給の面で参画していく」

――株式公開買い付け(TOB)を通じて近く東洋鋼鈑が完全子会社になる。

 「人材の交流や移動がこれまで以上に活発になり、グループ全体における開発や市場調査、新しい事業、技術に対し、より積極的に活動できるものと期待している」

――原燃料価格が上がっている中、飲料缶価格を改定する考えは。

 「価格競争が激しい中でも原燃料アップ分の転嫁はしっかりと進めていきたいが、ものづくりのレベルを引き上げ、競争力を高めることの方が重要と考える」(遊佐 鉄平)

プロフィール

 入社以来スチール缶とアルミ缶の開発・設計部門で長く過ごした。国内で工場長を務めるだけでなく、ベトナムやタイの海外現地法人のトップも経験した。若いころはバスケットやテニスなどで汗を流した。最近では週末にゴルフやヨガで汗を流すだけでなく、この10年間は毎朝30分のウォーキングを欠かさない。座右の銘は、大学時代の恩師の言葉「現場に物理あり」。

略歴

 大塚 一男氏(おおつか・いちお)1983年(昭58)慶応義塾大学工学部機械工学科卒、東洋製罐入社。2005年広島工場長、13年執行役員、15年常務執行役員、16年社長を経て18年から東洋製罐GHD社長。1959年(昭34)11月24日生まれ、58歳。秋田県出身。

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