「1票差の逆転劇」が起きた2018年の選挙。インパクトがド級な選挙ニュース4選

7月も中旬となりました。今年の上半期には様々な選挙がありましたが、今回はこの選挙に関係する出来事の中で注目すべきいくつかの事項をピックアップしてみました。

「鉄腕アトム」候補者の名前で話題となった境町長選

2月4日に投票が行われた茨城県の境町長選は今年の上半期の選挙では最も話題になった選挙の1つといえます。

境町は人口が約25000人と決して大きな自治体ではなく、選挙前は特に注目されない一地方選挙と思われていた境町長選が話題となったのは、候補者の名前でした。この選挙では高嶋 勇喜と書いて、「たかしま てつわんあとむ」と読む人物が立候補していたのです。この高嶋氏の名前のすごい読みは大いに話題になりました。

これは通称であり、本名ではないだろうと思われていましたが、選挙ドットコムの過去の記事で紹介したように、驚くべきことに「てつわんあとむ」は本名であったのです。これは名前の読みを変える手続きは比較的簡単にできたため、高嶋氏は名前の読みを変える手続きを行い、「てつわんあとむ」と名乗って立候補したのです。
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1票差の当選からまさかの逆転劇。2017年葛飾区議選の逆転裁定

2017年11月12日に行われた葛飾区議選は最下位当選した大森由希子氏と次点で落選した会田浩貞氏がの差がわずか1票という大激戦でした。

この結果を受け、会田氏は選挙管理委員会に票の再点検を要求、区選管は棄却したものの、都選管は再点検を認め、今年2月に全票の再点検を実施しました。そして、過去の記事でも紹介したように大森氏の票となっていた2票が無効票と判定され、会田氏が逆転当選という裁決が下されたのです。

このような形での逆転劇は珍しく、特筆すべき事件といえます。なお、大森氏はこの結果を不服として裁判所に提訴。現在、裁判にてこの裁定について、争っています。

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過去にわずか3例のみ。現職が負けた中野区長選

6月10日に行われた中野区長選も話題となった選挙といえます。現職の田中大輔氏は中野区のランドマークである中野サンプラザを壊し、新たな施設を建設することを公約としていましたが、この中野サンプラザの存廃問題が選挙の大きな焦点となりました。この存廃問題は中野区だけではなく、新聞でも大きく取り上げられるなど広域的な話題となりました。

選挙戦は自民党や公明党といった国政の与党勢力が推薦する田中氏と立憲民主党や国民民主党、自由党、社民党が推薦、共産党や生活者ネットが支援という、国政の野党勢力が推薦支援する酒井直人氏、元都議の吉田康一郎氏、元区議会議長の市川稔氏の4名によって争われました。田中氏と酒井氏は推薦支援する政党の国会議員といった有力者たちが応援演説をしていました。特に酒井氏を推薦した立憲民主党は中野を地盤とする長妻昭 立憲民主党代表代行が全面的に応援していた他、枝野幸男代表までもが応援に入るという力の入れようでした。

選挙結果は5選を目指していた現職の田中氏が落選し、中野サンプラザの建て替え計画を見直すことを公約としていた新人の酒井直人氏が当選しました。現職首長が落選するというのは、そこそこ珍しいことですが、東京23区の現職区長と限定すると極めて珍しい事例です。東京23区の区長は1975年から選挙で選ばれるようになっていましたが、今回の中野区長選以前では、1975年の世田谷区長選、1991年の新宿区長選、1999年の杉並区長選の3例しかありません。このような珍しい事態になった要因は様々なものがありますが、現職区長への多選への批判や中野サンプラザの存廃問題が大きな要因になったと思われます。

有名インディーズ候補、又吉光雄氏が引退・死去

宮原ジェフリー氏が「合計17回の立候補、唯一神・又吉イエス氏がついに引退。歴戦を振り返る」で愛をこめて詳しく紹介しているように、個性的な名物候補、世間に広く知られた代表的なインディーズ候補といえる又吉光雄氏が6月30日に健康面での問題により、政治活動の終了を宣言しました。そして、7月20日に亡くなっていたことが23日に発表されました。
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街頭演説をする又吉氏

筆者はもともと個性的なインディーズ候補に興味を持ち、そこから変わった選挙事件の調査・研究という世界に入り込む要因になりましたが、又吉氏は筆者がそういったことに興味を持った最初期の人物の1人でした。極めて個人的なもので恐縮ですが、上半期の選挙に関する話題では最も衝撃的であったことから、ここで紹介させていただきます。

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