BMW 新型X2 試乗|ただのエントリーモデルなんかじゃない!BMWの末っ子SACはかなりの野心作

BMW 新型X2 xDrive20i M Sport X ボディカラー:ガルバニック・ゴールド(オプション)│シートマテリアル&カラー:マイクロ・ヘキサゴン・クロス/アルカンターラ・コンビネーション(イエロー・コントラスト・ステッチ付き)

新しい世界観と価値観を具現化すべく開発された、BMWの新しい“SAC”

BMW 新型X2 xDrive20i M Sport X ボディカラー:ガルバニック・ゴールド(オプション)│シートマテリアル&カラー:マイクロ・ヘキサゴン・クロス/アルカンターラ・コンビネーション(イエロー・コントラスト・ステッチ付き)

ラインアップの拡充を積極的に進めてきたBMWは、世界的に伸長しつづけるSUV市場に向けて、このほど新たに「X2」を送り出した。これによりついにXモデルも1から6までが揃ったことになる。

BMWでは1999年に初代X5を発売したときから、自社のSUVを「SAV(=スポーツ・アクティビティ・ビークル)」と呼んでおり、中でものちに加わった偶数のシリーズであるクーペ系の派生モデルについては「SAC(=スポーツ・アクティビティ・クーペ)」という呼び方をしている。

今回の新型X2もX1のスポーティ版であり、件の「SAC」のエントリーモデルという位置づけとなることには違いない。ただし、上級機種のX6やX4と同じものをただコンパクトにするのではなく、新しい世界観と価値観を具現化すべくキャラクターの違うクルマとして開発されている。

居住性は思ったよりもずっとよく、ラゲッジスペースの使い勝手も高い

BMW 新型X2 xDrive20i M Sport X ボディカラー:ガルバニック・ゴールド(オプション)│シートマテリアル&カラー:マイクロ・ヘキサゴン・クロス/アルカンターラ・コンビネーション(イエロー・コントラスト・ステッチ付き)

かつてBMWのクーペモデルに与えられていた伝統のCピラーのエンブレムを、長い中断を経て復活させたというのも、この新型X2で少しでも何か面白いことをやろうと考えたことがうかがえる。ただし、「SAC」の末弟とはいえ、見てのとおりあまりクーペっぽくないフォルムとされているのが特徴だ。

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それもあって、気になる後席の居住性をチェックしてちょっと驚いたことに、記憶にある兄貴分のX4やX6よりもヘッドクリアランスがだいぶ大きいように感じられた。平均的な成人男性の体格である筆者が座って、X4やX6は頭頂部が触れるかどうかぐらいの感じであるのに対し、新型X2はコブシが入る。座面がやや短めながらニースペースは十分に確保されており、背もたれもリクライニングできる。このサイドウインドウ形状ゆえ天地方向がやや狭いのはやむをえないが、居住性は思ったよりもずっとよい。

BMW 新型X2 xDrive20i M Sport X ボディカラー:ガルバニック・ゴールド(オプション)│シートマテリアル&カラー:マイクロ・ヘキサゴン・クロス/アルカンターラ・コンビネーション(イエロー・コントラスト・ステッチ付き)

さらにはラゲッジスペースも十分に広く、使い勝手は高い。アンダーボックスも広く、DC12V電源が選べたり、フックが二重で付いていたり、上部にもひっかけるフックがあったり、左側にはゴムベルトが、右側にはネットのポケットがあったりと、利便性を高めるための心配りが見られる。

リアシートについても、BMWがいちはやくそうしたとおり、40:20:40の3分割式で真ん中だけ独立して倒せるようになっているので、スキーのような長尺物を積みながらも4人の乗員がゆったり座ることができる。

エクストリーム・スポーツからインスピレーションを受けた「M Sport X」

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ボディサイズは4375mm×1825mm×1535mmと、1.8mをやや上回る全幅を持つが、全高は日本の機械式立体駐車場にも収まるものだ。

試乗したのは、「X2 xDrive20i M Sport X」というモデル。192ps、280Nmを発生する2リッター直列4気筒DOHCエンジンに8速スポーツATを組み合わせたAWD車であることまではわかるが、「M Sport X」という見慣れないグレード名が目に留まる。

これは既存の「M Sport」がサーキットなどフラットなスポーツをイメージさせるのに対し、3Dのエクストリーム・スポーツからインスピレーションを受けたものだという。ダイナミックなフォルムにグレーのアクセントが印象的なエクステリアをはじめ、内外装には数々の専用装備が与えられている。

なお、「M Sport」は日本にはあえて導入しないらしく、「Standard」と「M Sport X」の2グレード展開となる。パワートレインは下に1.5リッター直列3気筒DOHCと7速DCTを組み合わせたFWDの「X2 sDrive18i」も設定され、合わせて4モデルのバリエーションとなる。価格帯は436万円~515万円だ。

俊敏なハンドリングと軽やかなフットワーク

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モータージャーナリストの岡本幸一郎さん

225/45R19サイズのタイヤは、ややロードノイズ大きめで、ランフラットゆえか路面への当たりの硬さも感じなくはないが、走りは軽快そのものだ。

「xDrive20i」の車両重量は1620kgと、それほど軽いわけでもないものの、やや強化されたMスポーツ・サスペンションが標準装備される「M Sport X」は、俊敏なハンドリングと軽やかなフットワークのおかげで、試乗ステージであった箱根のワインディングを気持ちよく走ることができた。

後席に座ってみても、X4やX6がかなり締め上げられていて乗り心地が硬いのに比べると、新型X2のほうがマイルドで、先で述べた後席の居住性も含め、日常使いでもより不満が出にくいように思う。

動力性能も十分に確保されていて申し分ない。7000rpmからレッドゾーンのところ、6500rpmまでは軽々と回る。8速のトルコンATは、DCTかと思うほどダイレクト感があり、シフトチェンジの歯切れもよく、トルコン付きらしく細かい動きでもギクシャクすることもなく、いいことづくめだ。

新型X2、それはかなりの野心作

モータージャーナリストの岡本幸一郎さん

このように見た目がよく、実用性も高く、走りも上々と、売れ筋になる要素のそろったよくできたクルマであることはよくわかった。加えてニューモデルらしく安全運転支援システムはもとより、スマホと連携したコネクティビティも充実しているところも魅力に違いない。さらには、香取慎吾氏を起用したコラボレーションなど、かつてない新しい試みをいろいろやっていることにも注目だ。

BMWとしては新しい考えを持ったミレニアム世代の成功者たちにぜひ乗ってもらいたく、ひいてはXモデルの守備範囲の拡大を図り、新しいユーザーにBMWの魅力に気づいてもらうという使命が新型X2には与えられた、実はかなりの野心作でもある。今年50歳になったが気持ちだけは若い筆者も、なかなか気になるニューカマーであった。

[TEXT:岡本 幸一郎/PHOTO:茂呂 幸正]

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