金属行人(7月26日付)

 中国商務省が欧州、日本、韓国、インドネシアから輸入するステンレス半製品(ビレット・スラブ)や厚板、熱延鋼帯についてアンチダンピング(不当廉売=AD)調査を開始した。太原鋼鉄(山西太鋼ステンレス)による提訴を受理したもので、支持企業には宝武鋼鉄集団、鞍山鋼鉄集団傘下のステンレスメーカーが名を連ねる▼商務省資料でステンレス総輸入量を見ると、2018年1~3月期を単純に年率換算すれば、14年実績に対する増加率は7・3倍になる。急増は確かだが、18年1~3月期輸入でインドネシア製品が占める比率は86%に達する。背景にあるのは青山控股集団のインドネシア事業の急拡大だ。これに対して国有企業の雄である太原鋼鉄が業を煮やしたというのが市場関係者の見立てであり、本件に関してはさすがの青山の神通力も及ばなかったかとの嘆息も漏れる▼提訴にはWTOの場で争われたら勝ち目がないだろうと思われる内容が含まれる。それでも調査期間は1年から1年半に及びそうだ。日本から中国に進出しているユーザーにとってカントリーリスクを再認識させられる事態であり、ステンレス産業と需要産業が連携し、毅然たる姿勢で調査に対応していくことが望まれる。

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