完投数12球団断トツの巨人 菅野&山口の頑張りを勝利に結びつけられるか?

巨人・菅野智之【写真:Getty Images】

山口は今季6完投&菅野は5完投、チーム全体で12完投は断トツ

 7月27日に巨人の山口俊が史上79人目のノーヒットノーランを記録した。山口はこれが今季6完投目。12球団を通じて1位だ。また巨人の完投数は12となり、これも12球団で断トツ1位。今年の巨人は完投数が非常に多い。

 昭和の時代には、先発投手は完投するのが当たり前だった。試合数に占める完投数は、1980年にはパは34.6%(780試合270完投)、セが26.8%(780試合209完投)。DH制があるパの方が先発投手を長く投げさせることができる分、完投数が多かったが、両リーグともに3~4試合に1試合は投手が完投していた。

 しかし21世紀に入ると、先発、中継ぎ、クローザーの分業が明確化し、先発投手の完投数は激減した。過去10年の両リーグの完投率の推移。

2009年セ・7.6%(864試合66完投)パ・12.3%(864試合106完投)
2010年セ・9.8%(864試合85完投)パ・5.2%(864試合45完投)
2011年セ・7.1%(864試合61完投)パ・12.4%(864試合107完投)
2012年セ・6.3%(864試合54完投)パ・8.9%(864試合77完投)
2013年セ・5.4%(864試合47完投)パ・6.7%(864試合58完投)
2014年セ・5.4%(864試合47完投)パ・6.1%(864試合53完投)
2015年セ・5.7%(858試合49完投)パ・5.4%(858試合46完投)
2016年セ・5.5%(858試合47完投)パ・5.4%(858試合46完投)
2017年セ・4.0%(858試合34完投)パ・6.6%(858試合57完投)
2018年セ・5.6%(532試合30完投)パ・5.7%(530試合30完投)

 年度ごとに上下するが、最近10年に限っても、完投率は徐々に減少しているのがわかる。今では完投は十数試合に1回しか見られない。

巨人は救援陣の台所事情も完投数増加の要因?

 2011年にパの完投率が12.4%と跳ね上がったのは、田中将大(楽天)が14完投、ダルビッシュ有(日本ハム)が10完投したからだ。このように特定の投手の頑張りで一時的に数字が上昇することもあるが、全体として完投率は依然として減少する傾向にある。

 しかし今年の巨人は、山口俊が6完投、菅野智之が5完投、田口麗斗が1完投ですでに12完投。セ・リーグ全体の4割を占めている。完投率は12.9%に達する。このペースで完投数が増えれば、シーズン最終では18完投になる。シーズン18完投はパのチームでは近年も見られるが、セでは2006年の中日(19完投)、阪神(18完投)以来だ。

 今季、巨人の完投率が上昇したのは、山口俊が復調し、菅野との2本柱になっていることが大きいが、同時に救援陣に故障が相次ぎ、人材難になっていることも原因とも言える。多少、球数が嵩んでも、救援投手の台所事情から完投させるケースが増えている。

 しかし完投数が増えれば球数も増える。菅野、山口ともに今季はシーズン3000球に迫るだろう。翌年以降に疲労が蓄積する恐れもある。

 巨人は先発の2人が頑張り、打線も増強しているのに首位広島から10ゲーム離された3位だ。ペナントレースが激しくなる中、巨人は先発投手の活躍を勝利に結びつけることができるだろうか。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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