【アルミ圧延業で大型再編】世界最大手米ノベリス、米アレリスを買収 板販売400万トンへ、2位グループの約3倍

 印ヒンダルコ傘下でアルミ圧延世界最大手の米ノベリスは26日、同業大手の米アレリスを買収することで合意したと発表した。ノベリスは有利子負債などを合わせて総額26億ドル(約2886億円)でアレリスを統合する。缶材や自動車材で世界マーケットを主導するノベリスだがアレリスの統合で、注力事業と位置付ける自動車パネル能力を拡大するとともに空白だった航空宇宙市場に参入。さらに中国で両社の拠点を活用し合い、アジアでのシェア拡大も目指していく。

 17年度実績はノベリスが売上高114億6200万ドル(約1兆2723億円)、アルミ板販売量319万トン。アレリスは売上高28億5700万ドル(約3171億円)、アルミ板販売量80万トンだった。販売数量を単純合算すると400万トンとなり、2位グループの米アーコニックやオランダのコンステリウムと比較して3倍、日本最大手UACJとの差は4倍に達する。アルミ板業界においてガリバーが誕生することになる。

 ノベリスは来年4~10月中をめどに買収作業を完了し、アレリスを統合する。アレリスは自動車パネル拠点として50年以上にわたって欧州自動車メーカと取引があるベルギー・デュッフェル工場(年産能力10万トン)や、昨年に熱処理・表面処理ライン2基を導入した米国・ルイスポート工場(年産能力20万トン)を保有している。ノベリスが持つ技術ノウハウを活用して顧客対応力を引き上げる方針だ。

 またアレリスはドイツ・コブレンツ工場と中国・鎮江工場で航空機用厚板を製造し、世界の航空機大手に製品を供給している。ノベリスはアーコニックやコンステリウムが先行する航空機マーケットに参入し、さらなる事業拡大を目指す。またノベリス親会社の印ヒンダルコは、アレリスをグループ化することでインド市場におけるヒンダルコのプレゼンス向上にもつなげる考え。

 アレリスの買収問題をめぐっては、16年8月に中国忠旺が23億3千万ドルで買収することで合意していたが、米国当局が安全保障上の懸念を理由に認可を保留。承認が下りぬまま17年11月に交渉が打ち切られた。この時期からヒンダルコが所属するインド財閥アディティヤ・ビルラグループによる買収観測が台頭。今春にアレリスのショーン・スタックCEOは「単独での事業を継続する」としていたが、水面下では交渉が続き、評価額を引き上げて今回の合意に達したもようだ。

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