【新社長インタビュー・東京製綱浅野正也氏】鋼索鋼線など3本柱収益創出する供給体制構築 新会社、CFCCと防災製品を海外で拡販

――社長就任から1カ月余りが過ぎた。どのような言葉を社員に投げかけているのか。

 「決して現状に甘んじることなく、一人ひとりにプラスアルファの仕事に挑戦するよう求めている。常に時流に即したオペレーションの確立を通じて、世間の変化に素早く対応していかなければならない。ここ4、5年に限っても、東京製綱グループの生産・販売拠点は、これまでの中国や東南アジアから、北南米や中東、中央アジアなど世界各地に広域化している。グローバルに事業展開する中にあって、企業を大きく成長させうる可能性が生まれてくるものと認識している」

――今年4月には、会社分割で炭素繊維複合材ケーブル(CFCC)と、海外向けの防災製品を主体とする海外エンジニアリングの両事業を承継する新会社「東京製綱インターナショナル」が立ち上がった。

 「CFCCと防災製品の取り扱いを中心に、総勢100人程度の規模で始動している。7月下旬に岩手県北上市でCFCCの工場、6月と10月にそれぞれカザフスタンとロシア北西部のサンクトペテルブルグ市で防災製品の工場が稼働するように、新会社は、国内外に開設する新たな供給基地をマネジメントする役割も担う。防災製品の海外の2工場は、生産面はもちろんのこと地産地消の観点から営業面でも大きく貢献してくれると期待している」

――東京製綱インターナショナルは、関連の海外子会社を含め、初年度の今年度に58億円、翌2019年度に130億円の売り上げ目標を掲げている。

 「グループの売り上げ全体において、足元からの増加分に占める新会社の比率は高い。特にCFCC電線事業はほとんどゼロからの出発にあって、一つのプロジェクトが次のプロジェクトを呼び込むことになる。事業に連続性があるだけに、事前に入念な管理体制を整備しなければならない。今まさに新会社は今後の飛躍に向けた地ならしに取り組んでいるところだ」

――東京製綱インターナショナルが手掛ける以外の事業分野はどうか。

 「東京製綱の事業基盤を支える3本柱(鋼索鋼線・スチールコード・国内の防災製品)のさらなる強化を通じて、着実に収益を創出できる供給体制を構築していく。その一環で土浦工場(茨城県かすみがうら市)では、最新鋭でハイスペックな伸線やより線の加工機械などにより従来設備を置き換える工事を進めている。他の製品についても、国際市場の推移をにらみながら、設備の戦闘力を高め、生産性を上げることで、画期的なコストダウンにつながる手立てを模索していかなければならない」

――新製品の投入をめぐる市場ニーズも小さくない。

 「各事業部に研究開発部隊がおり、中でも防災製品では地域の要望に合わせた開発のために東北、大阪にも要員を配置している。既存事業においては設備と商品、それらを動かす人やプロセスなどを念頭に、小さな開発・改善の積み重ねを続けながら、少しずつポートフォリオを変えることが収益の伸びに結びつくものと確信している。一方で、一連の新規事業に携わる社員の成長も肌で感じている。早晩、東京製綱インターナショナルを軌道に乗せ、これまで種をまいてきたものを着実に刈り取るなどして、19年度が最終年度の中期経営計画に掲げた目標の達成に向かっていきたい」(中野 裕介)

 プロフィール

 入社以来15年間在籍した特殊合金の金型製作部門をはじめ、製造現場を長く歩んだ。リンカーンの格言「意志あるところに道は開ける」が信条。休日には20年来の陶芸でリフレッシュする。

 浅野 正也氏(あさの・まさや)1983年(昭58)東大工卒、東京製綱入社。2011年執行役員、12年取締役、16年常務。今年6月27日付で現職。富山県出身。

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