合同製鉄が朝日工業買収へ、来年2月めどにTOB

 合同製鉄は6日、関東の電炉鉄筋メーカー、朝日工業の株式を公開買付(TOB)で買収する方針を発表した。同日、朝日工業も合同のTOBに賛同する方針を発表。合同は今後、朝日工業の株主の賛同や公取委審査などを経て来年2月上旬をめどにTOBを開始する。

 合同はTOB開始に当たって、朝日工業を完全子会社か連結子会社にできない場合はTOBを断念する。TOBは朝日工業1株1800円で実施。発行済み株式総数700万株を買い付けた場合の資金は126億円で、全額金融機関から借り入れて賄う。

 朝日工業は埼玉県神川町の埼玉事業所で鉄筋棒鋼や構造用鋼など年間約31万トン(2016年度)を生産。関東市場を中心に販売しているほか、農業資材、砕石砕砂事業などを行っている。18年3月期業績は売上高358億円、経常赤字7400万円。

 合同は船橋で鉄筋約28万トン(16年度)を生産して同じく関東市場を中心に販売しているほか、大阪で線材・形鋼、姫路で構造用鋼を生産。18年3月期業績は売上高1297億円、経常利益21億円。

 合同と朝日が合併すると、鉄筋生産量は合計59万トンとなり、関東市場でトップの東京鉄鋼・伊藤製鉄所連合とほぼ肩を並べる。

 合同は買収で(1)顧客評価の向上(2)構造用鋼での補完(3)製造技術やプロセス(4)購買など調達効率化(5)物流効率化と輸送コスト削減(6)グループ人材育成の共有化(7)経理・財務・資金調達などの円滑化・効率化―などのシナジー効果を上げていく。

解説

朝日工業が合鉄のTOBに賛同/東京鉄鋼と伊藤製鉄所の提携に対抗

 合同製鉄のTOBを朝日工業が受け入れた背景には、関東地区にはベースサイズの鉄筋メーカーが5社と現状でも過当競争にある厳しい環境と、その将来性に強い危機感をもったことが挙げられる。特にネジ節鉄筋で圧倒的に強い東京鉄鋼が伊藤製鉄所との経営統合を見据えて今年5月に資本・業務提携を実施。同じくネジ節鉄筋の販売を強化していく方針の朝日工業にとっては「何らかの対抗手段を持たなくてはならない」(朝日工業の村上政徳社長)との考えが、今回のTOB賛同への後押しとなった。

 銀行系とされてきた朝日工業が新日鉄住金グループの合同製鉄の子会社となれば、関東ベースサイズ鉄筋メーカーは高炉系と独立系に分かれる形となる。ネジ節鉄筋のない合同製鉄を親会社とすることで、朝日工業としてはネジ節鉄筋メーカーとして存在感を強めていきたい考え。

 鉄骨(S)造へのシフトや鉄筋工の人手不足で、鉄筋棒鋼需要は東京五輪を控えた関東市場にあっても盛り上がりを欠く。合鉄のTOBにより朝日工業はネジ節鉄筋の販売推進とともに、関東市場での競争力強化を目指すグループ像に掲げている。合同製鉄の船橋製造所との生産連携を含め、両社の強みをいかに伸ばしていくのか。具体的な強化策が待たれる。(小堀 智矢)

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