森保監督率いる日本代表のライバルは?アジア大会、各グループ&大会展望

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いよいよ8月10日から始まる、アジア競技大会2018ジャカルタの男子サッカー。

2年に一度に開催されるこの大会は五輪と同じく23歳以下の選手がメインの構成だ。またこちらも五輪と同様に年齢制限のないOA(オーバーエイジ)枠3選手の選手起用が許されている。A~Fまでの予選グループの上位2チームが決勝トーナメントに勝ち進み、勝ち進んだ2チームは9月1日に行われる決勝に挑む。

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ちなみに、サッカーではアジア(AFC)に属するオーストラリアだが、オリンピック競技ではオセアニア地域所属のため今回のようなアジア主催の大規模なスポーツイベントには参加していない。

また、サッカーにおいてアジア大会は代表チームがクラブに所属する選手に対し拘束権を行使するようなメジャーな大会ではないため、各国とも有力な選手を招集できない特徴がある。

そうしたなかで開催されるアジア大会だが、当初は24カ国が参加を表明していた。

ところが、組み合わせ抽選会直後にUAEとパレスチナも参加書類を送付していた事実が判明(※大会本部は電子メールでの受付を提示していたが、両国は書面で受付を申請していた)。

その後両国は無事に予選グループに組み込まれたものの、大会開幕直前に今度は優勝候補と目されていたイラクが年齢詐称問題で除外処分を受ける事態が発生。開催前からのドタバタとした雰囲気は関係者やアジアサッカーファンを大いに不安にさせた。

ただ、開催地であるインドネシアは灼熱の気候そのままに、国民のサッカー熱はアジアでも屈指のレベルにある。

スタジアムの安全性などいまだに課題が山積するなかでの開催となるが、アジアにおけるサッカーの祭典の一つとして楽しんでいただきたい思いから各グループの展望をまとめてみた。観戦のお供になれば幸いである。

グループA

インドネシア(開催国)香港ラオスチャイニーズ・タイペイパレスチナ

展望

開催国のインドネシアを香港、パレスチナらが追う展開か。 

地元の期待を一身に背負うインドネシアは2017年にスペイン人指揮官ルイス・ミジャ氏を代表監督に招聘。かつてロンドン五輪でスペイン代表を率い日本代表とも対戦した実績を持つ大物指揮官のもと、今大会ではマレーシアでプレーする“インドネシアのイニエスタ”ことMFエファン・ディマス(23歳/セランゴールFA)、OA枠にかつて札幌でプレーしたMFステファノ・リリパリ(28歳/バリ・ユナイテッド)、ブラジルから帰化したFWベト・ゴンザウヴェス(37歳/スリウィジャヤ)ら実力選手を次々と招集している。

オランダ2部リーグでプレーするエースFWエズラ・ヴィリアン(20歳/RKCヴァールヴァイク)は所属クラブの意向により直前になって参加を辞退したものの、大観衆による迫力満点の後押しを受け躍進を狙う。

対抗馬は“書面エントリー組”の伏兵パレスチナと躍進著しい香港か。パレスチナは8月5日に行われた親善試合で強豪ウズベキスタンのU-23代表相手に2-1で勝利を収めた。チームはOA枠を使わない構成ながら、スウェーデン2部リーグでプレーする185cmの大型DFミシェル・テルマニーニ(20歳/AFCエシルストゥーナ)、国内リーグでブレイクしつつあるFWオディ・ダバグ(19歳/ヒラール・アル・クドゥス)ら伸びしろのある若いタレントが多い。

一方、香港は共にスペイン出身で香港のパスポートを取得したDFフェルナンド・レシオ(35歳/傑志)、FWジョルディ・トーレス(37歳/傑志)の両ベテランOA選手に注目。スペインで揉まれた経験を若いチームに還元し上位進出を図る。

グループB

タイウズベキスタンバングラディシュカタール

展望

この年代に多くのタレントを抱えるウズベキスタンが中心。ASEANの実力国タイ、そしてカタールにも勝機がありそうだ。

ウズベキスタンは今年1月に中国で行われたAFC U-23選手権で優勝。準決勝では今大会にも出場する“東京五輪世代”の日本代表に4-0で完勝し大きなインパクトを与えた。今大会も中盤の要であるMFオディルジョン・ハムロベコフ(22歳/FCナサフ・カルシ)、エースFWヤスルベク・ヤフシボエフ(21歳/パフタコール・タシケント)ら当時の主力が順当に選出されており、国内ファンからの期待は非常に高い。

AFC U-23選手権で3位に入ったカタールだが、当時の主力数名が負傷や所属クラブの事情によりメンバー外となった。スペイン1部リーグのビジャレアルが保有権を持つMFアクラム・アフィフ(21歳/アル・サッド)も所属クラブのAFCチャンピオンズリーグ・ラウンド8への準備のために欠場が決定。「カタールの至宝」の不在はチームに少なからぬ影響を及ぼしそうだ。

タイはJ3で活躍するMFジャキット・ワクピロム(21歳/FC東京)が選出。また同じくメンバーに選出されたDFケヴィン・ディーロムラム(20歳/タイ・ポートFC)はかつてスウェーデンの年代別代表に選出された経歴を持つ180cmの大型左SBだ。次代の「提携国枠選手」獲得を狙うJリーグの強化部にとっても見逃せない選手が揃う。

グループC

UAE中国東ティモールシリア

展望

OA選手を揃え優勝を狙ったイラクが土壇場で除外された激動のグループ。UAE、中国、シリアによる壮絶な突破争いが予想される。

UAEは来年1月に自国で行われるアジアカップに向けてチーム強化の真っ最中。A代表の監督を務めるイタリア人指揮官アルベルト・ザッケローニ氏はA代表のキャンプに参加しているためチームに帯同しないが、大会を通して課題であるMFオマル・アブドゥルラフマンら“黄金世代”以降の戦力の底上げを図りたい。

中国は佳境を迎えた国内リーグ戦に配慮しOA選手ゼロのメンバーで挑む。代表選出が予想される“海外組”FWチャン・ユニン(21歳/ADOデン・ハーグ)はイングランド2部のWBAが保有権を持つ184cmの大型ストライカー。彼を孤立させないような戦い方が上位進出のカギとなりそうだ。

ロシアW杯予選ではアジア・プレーオフまで進出したシリアは伝統のカウンターから勝機を狙いたいところ。ただ近年におけるシリアの年齢別代表は除外されたイラクと同様参加選手の年齢において疑いの目で見られがち。今大会で好成績を残し、周囲にポジティブな印象を残したい。

グループD

日本ベトナムパキスタンネパール

展望

“東京五輪世代”で上位進出を狙う日本と、“黄金世代”のメンバーが中心のベトナムの実力が頭一つ抜けている。パキスタン、ネパールは経験あるOA選手のもとで番狂わせを狙う。

日本は2年後に迫った五輪に向け、2歳年下のU-21代表で挑む。この世代屈指のアタッカーであるMF堂安律は参加しないが、1月のAFC U-23選手権に出場したMF三好康児(21歳/北海道コンサドーレ札幌)、6月のトゥーロン国際で活躍したMF三苫薫(21歳/筑波大学)らが選出された。先月にはチームを率いる森保一監督がA代表監督に就任。戦力的には大会上位を狙える陣容であり、アジアからの注目度は高い。 

AFC U-23選手権で史上初の準優勝に輝いたベトナムはU-23代表がA代表よりも人気が高い珍しい状況にある。当然今大会の国内での注目度は高く、さらなる飛躍に向けチームのモチベーションは高い。Kリーグでのプレー経験を持つMFルアン・スアン・チュオン(23歳/ホアンアイン・ザライFC)、近年は負傷に苦しむ絶対的なエースFWグエン・コン・フォン(23歳/ホアンアイン・ザライFC)らタレントの躍動に期待したい。

苦戦が予想されるパキスタンはOA枠として選出が予想されたFWカリーム・ウラーがトルコ5部リーグのイズミルスポルへ移籍したため急遽欠場が決定。代表でも主将を務めるエースの離脱は大きいが、デンマーク4部リーグでプレーするA代表の正GKユーセフ・ブット(27歳/グレイヴIF)は選出された。かつてカナダU-20代表に選出された経歴を持つ大型GKの経験はチームに落ち着きをもたらすはずだ。 

同じく苦戦必至のネパールだが、開催地のインドネシアでプレーするMFロヒト・チャンド(26歳/ペルシジャ・ジャカルタ)がOA選手としてプレーする。インドネシアをよく知るスター選手のもと、堅い守りからのカウンターで一矢報いたい。また現在ネパール代表を率いるのはかつてFC岐阜などで監督を務めた行徳浩二。日本との対決は楽しみだ。

グループE

韓国キルギスマレーシアバーレーン

展望

A代表と遜色ないレベルの戦力を揃えた韓国が頭一つも二つも抜けた存在。残るバーレーン、キルギス、マレーシアは戦力的に大きく劣る。

アジア大会を優勝することで兵役免除の恩恵を受けられる韓国は、ロシアW杯でもプレーしたFWファン・ヒチャン(22歳/レッドブル・ザルツブルク)、FWイ・スンウ(20歳/エラス・ヴェローナ)を選出。さらにOA枠として同じくW杯で活躍したGKチョ・ヒョヌ(26歳/大邱FC)、FWファン・ウィジョ(25歳/ガンバ大阪)、そして現在「アジア最高の選手」と言われるFWソン・フンミン (26歳/トッテナム・ホットスパー)が加わり、この大会では文字通り“反則級”の選手を揃えた。

欧州組のコンディションに不安は残るものの、兵役免除に向け選手たちは相当なモチベーションで臨むに違いない。グループリーグ突破はもちろん、現状では優勝の最有力候補だ。

開催地の隣国として期待が懸かるマレーシアだが、国内リーグを戦う各クラブと協会との間で調整がつかず有力選手が満足に招集できない状況にある。オーストラリアU-19代表歴を持つDFマシュー・デイヴィス(23歳/パハンFA)ら主力数名の欠場が決定しており、上位進出は難しい状況だ。

グループF

北朝鮮サウジアラビアイランミャンマー

展望

前回大会準優勝の北朝鮮がグループの中心。ミャンマーは劣勢からの番狂わせを狙う。

北朝鮮は前回の仁川大会ほどのタレント性はないものの、身体能力を生かした戦い方はこの年代でも大いに通用する。イタリア・セリエAでプレーするFWハン・グァンソン(19歳/カリアリ)ら有力選手が順当に招集されれば上位進出は堅いだろう。前回決勝で敗れた韓国へのリベンジを果たせられるか。

実力国のサウジアラビア、イランは日本と同様にU-21代表主体のメンバーで挑む。なかでも注目はイラン。イランを率いるのはかつてクロアチア代表などを率いたクロアチア人指揮官ズラトコ・クラニチャール氏。2017年のU-17W杯で印象的な活躍を見せたFWユーネス・デルフィ(17歳)ら逸材選手たちをどう組織に組み込むのか。国際経験豊富な名将の采配に注目したい。

いかがだっただろうか。

過去の大会における最多優勝国は、前回王者でもある韓国の4回。日本は山口蛍、永井謙佑らを擁し初優勝を果たした2010年大会の1回となっている。

今大会の展望だが、やはり兵役免除がかかる韓国が他国を大きく引き離している。

アジアの強豪国である日本、イラン、サウジアラビアらは東京五輪に向けた若手主体のチームで挑むため、どちらかというと「経験重視」の立場。ウズベキスタンもOA選手を使わない意向であり、やはり韓国との差は歴然と言わざるを得ない。

一方で、韓国は「絶対に負けられない」周囲の強大なプレッシャーと戦うこととなる。そのとてつもない重圧に打ち克つことができるか。メンタル面も含めチームの底力が試されることになるだろう。

世界中が熱狂したロシアW杯が終わり、Jリーグも文字通り熱戦が繰り広げられるこの時期の開催は少々盛り上がりに欠けるかもしれない。また大物OA選手を呼んで上位進出を狙うチームや、2年後の東京五輪を見据え21歳以下で挑むチームなど各国の大会に臨む思惑も様々である。

しかし、この大会は特色あるアジア各国が集うまたとない機会。ぜひとも注目していただきたい。