平和あってこそ

 広島サポーターが突然の「ナガサキ」コール。長崎のサポーターは「ヒロシマ」と返す。入場する広島の選手は原爆投下された8月6日を指す「86」、長崎の選手は「89」の背番号でピッチへ▲被爆地をホームタウンとする二つのサッカークラブが、二つの「原爆の日」のある8月に対戦した。11日、J1の広島とV・ファーレン長崎が広島で「ピースマッチ」に臨み、キックオフの前、サッカーを通じて平和へのメッセージを発する場が設けられた▲広島市、長崎市の高校生が平和宣言し、会場では原爆の悲惨さを伝える展示もあった。現役時代、広島で活躍したV長崎の高木琢也監督は、こうした場を「広げたい」と言う▲思い出したことがある。長崎市出身でサッカー日本代表監督、東京五輪代表監督の森保一さんは広島監督の頃、試合前日に平和記念公園を訪ねて、祈りをささげた。平和だからこそサッカーができるんだぞ。折に触れては選手に語り掛けたと聞く▲ピースマッチの会場に置かれたメッセージボードに書き込まれていたという。「サッカーができる、応援できる日常に感謝」▲肌身に感じたのだろう。一心に何かができる日常ってありがたいんだな、と。「原爆の日」「終戦の日」の巡る8月、「平和あってこそ」の一言がいつになく、ずしんとくる。(徹)

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