3大会連続MVPを目指す日本人最速126キロ右腕 大黒柱・里「殿堂入りできれば」

16年に行われた女子野球ワールドカップではMVPを受賞した里綾実【写真:Getty Images】

2010年から5大会連続代表入りの里

 第8回WBSC女子野球ワールドカップ(22~31日、米国フロリダ)で6連覇を目指す侍ジャパン女子代表。選手紹介第3回は14、16年でMVPを獲得した里綾実投手(愛知ディオーネ)に迫る。

 日本が世界に誇る絶対エースは、3大会連続のMVPを虎視眈々と狙っている。成田空港出発直前に行われた15日の記者会見。大会に懸ける意気込みを問われると、里は迷うことなく言い切った。

「シンプルに優勝する。1位を勝ち取って日本に帰りたいです。個人的には3大会連続MVPを獲って、殿堂入りできればなと思います」

 殿堂入りとは、日本ではなく、米国の野球殿堂入りのこと。5年前、クーパーズタウンにある野球殿堂博物館を訪ね「野球をやっているなら、こういうところに入れるレベルになりたい」と感銘を受けた。

 その強い思いが活躍の原動力になり、翌14年のワールドカップ決勝のアメリカ戦では雨の中でも集中力を切らさず、7安打完封勝利。大会を通じ4試合12回を投げて2勝0敗、自責0と文句なしの成績でMVPに輝いた。16年大会でも決勝のカナダ戦で2安打完封勝ち。先発3試合を含む4試合に登板して3勝を挙げ、20回2/3を投げて防御率は1.35という好成績で2大会連続のMVP獲得となった。

 今回で10年から5大会連続の代表入り。チーム最年長の川端友紀内野手(埼玉アストライア)と同い年で、代表歴はチーム最長を誇る。

日本人最速126キロの直球を武器にカーブ、スライダーを操る

 日本人投手最速であるMAX126キロの直球を軸に、カーブとスライダーをクレバーに織り交ぜる投球スタイル。2月から3回に渡って行われた国内強化合宿では、若手に積極的に声をかける場面が目立った。気さくで面倒見の良い性格で、変化球の握り方から海外の打者の特徴や場面に応じた配球まで、日本代表やプロで養った経験を惜しみなく若手に伝えてきた。

 半年に渡る集大成となる本番では、自らの力を最大限発揮することはもちろん、若手の力を引き出すことも自身の役目と認識している。出発前の記者会見でも「高校、大学、社会人、プロのトップ選手が集まっているので技術面では力を出し切ればいい。ただ、(ワールドカップの)経験者が少なく、力を出せないとなるのが怖い。若い選手が伸び伸びできる環境、一人ひとりの強さを引き出すためにコミュニケーションを取っていきたい」と語った。

 精神的支柱としてチームを背負う覚悟十分の里に対し、橘田恵監督は「大黒柱」と絶対的な信頼を寄せる。世界を代表するエースは、その右腕と強い精神力でチームを6連覇に導く。

◆里綾実(さと・あやみ)1989年12月21日生まれ。鹿児島県奄美市出身。兄の影響で9歳から野球を始めた。神村学園高から尚美学園大に進み、10年に日本代表初選出。大学卒業後に福知山成美高のコーチを経て、13年に女子プロ野球リーグ入りした。16年の角谷賞(MVP)、16、17年の最多勝利、16年の最多奪三振などプロでのタイトル多数。日本代表には10年から5大会連続で選ばれ、14年と16年に大会MVP獲得。愛知ディオーネ所属。166センチ。右投右打。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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