県立大留学生に奨学金 中興化成工業 実質的な給付型

 フッ素樹脂加工の中興化成工業(東京)は2019年4月から、長崎県立大にいるベトナムからの留学生を対象に、月額5万円の奨学金貸与を始める。年度ごとに1人を選抜し卒業まで貸与。卒業後、同社に就職すれば返還を免除するため、実質的な「給付型」となる。県立大の学生を対象にした企業による奨学金の貸与は初めて。
 東南アジアでのビジネス展開をサポートできる人材を育成する狙い。大学も優秀な留学生の確保につながることを期待している。
 現在、ベトナムからの留学生は佐世保校とシーボルト校に計7人在籍。08年からベトナム人留学生を受け入れており、13年以降は毎年入学している。同社がこれに着目し、奨学金創設につながった。
 留学生は大学を通じて応募し、同社が面談し貸与する学生を決定。10月にも選考作業を始める。今後、ほかの国からの留学生や日本の学生への拡大も検討するという。
 同社は、松浦市の炭鉱を運営していた中興鉱業が前身。国内で唯一、ドームの屋根膜材を手掛け、東京ドームのほか、長崎駅や佐世保駅の屋根にも使用されている。松浦工場は全体の3分の2を製造する一大拠点となっている。9月には松浦に新工場が完成する。
 庄野直之社長(61)は現在、県立大学法人経営協議会の委員を務めている。庄野社長は「ベトナム人と日本人は文化的に共通する側面がある。東南アジアをにらむ上で、ビジネスパートナーとして協力できる」と強調。その上で「いかにいい人材を確保できるかが企業にとっての生命線。県立大と連携し、他との差別化を図りたい」と語った。

中興化成工業
1963年創業。国内で唯一、ドーム用屋根膜材を手掛ける。松浦市に工場を置き、製造全体の3分の2を占める。売上高は2018年3月期連結決算で185億円。従業員数は4月現在、405人。このうち、松浦工場では232人が働く。

「企業にとって人材確保は生命線。県立大と連携していきたい」と語る庄野社長=佐世保市川下町、県立大佐世保校

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