【国内建材市場、下期動向を探る】〈(2)条鋼建材(流通・加工)〉需要堅調も工期遅れネック 品種により値上げピッチに差

 「大型案件で遅延損害金が発生した事例はないか」――。鉄骨ファブリケーター向けに条鋼建材を手配する大手商社幹部は、着工のヤマ場を迎える首都圏での再開発事業などを念頭に、常態化する工期遅延に神経をとがらせる。「人手不足で図面作成が大幅にずれ込むなど、鉄骨製作が計画通りに進んでいない。鉄鋼メーカーの供給余力は限られ、納期調整に苦慮している」(同)と語り、商社がゼネコンから鉄骨工事一式を請け負って協力会社に振り分ける「商社ファブ」事業でも採算性悪化を危惧する。

 鉄骨加工を手掛ける大手流通業者も「ここまで遅れが多いと、既に受注した分の納期が間に合わなくなる」と先々への懸念を隠さない。「一次下請けに入る方が利ざやは大きいが、下期は母材となる鋼材がそろえられない可能性がある」と指摘し「ピークが過ぎるまでは商社ファブの下に入って製作と協力会社への手配に専念し、鋼材調達は商社に任せたい」と心情を吐露する。

 国土交通省が7月に公表した2018年度の主要建設資材需要見通しでは、普通鋼鋼材の需要量は前年度比2・2%増の2120万トンと今年度も伸びるもようだ。このうち鉄骨造(S造)向けが主体の形鋼は3・0%増の490万トン、鉄筋コンクリート造(RC造)向けの小形棒鋼(建設向け出荷量)も2・4%増の730万トンとそれぞれプラスを想定している。

 根拠とするのは18年度の建設投資見通しだ。このうち4割を占める政府投資は0・1%増とほぼ横ばいなのに対し、残る6割の民間投資は3・4%増と伸び率が上回る。さらに工場や倉庫などの民間非住宅建設は4・6%増と、H形鋼やコラムなどの形鋼類の荷動き、引き合いが年間を通じて期待できる状況にある。

 国交省の建築着工統計から推定される鉄骨需要量(換算鉄骨量)も堅調を維持している。下期需要の先行指標となる18年1~6月の累計は、前年同期比0・7%減の255万6千トンとほぼ横ばいだ。ただ店売り市場に直結しやすい中小規模(床面積2千平方メートル未満)は5・1%減と低調な半面、鉄鋼メーカーからの直送が多い大規模S造(同2千~1万平方メートル未満)は1・6%増と濃淡が見られる。

 こうした対照的な状況は、流通市場の現況からも垣間見える。代表的な品種はコラムだ。「納期が1年以上」(流通幹部)とひっ迫するプレスコラム(BCP)に続き、在庫店が扱うロールコラム(BCR)も「大型サイズを中心に納期が3カ月以上掛かる」(同)など需給のタイト感が強まっている。ベースサイズの市場価格もトン当たり10万2千~3千円と、ほぼ8年ぶりの高値圏にある。

 H形鋼もコラムに次いで上伸基調を保っている。これに反して一般形鋼は扱い筋の多さから流通市場での値上げピッチはやや遅れ気味だ。とはいえ、鉄骨ファブの仕事量はグレードを問わず多いことから、穴あけや切断といった一次加工絡みの出庫は伸びる傾向にある。

 S造と双璧を成すRC造でも、前年とは違った市場環境が見えてきた。異形棒鋼は主原料の鉄スクラップ高や副資材、輸送費などの諸コスト高騰を背景に、電炉が売り腰を強めたままだ。直送・ベースの市中価格も7万3千~4千円と、1年前から3割近く上昇している。

 それでも4~7月には大手ゼネコンの手持ち案件が薄く目立った大型物件もなかったため、メーカーへの発注規模は前年同月を割る状況が続いている。

 他方、現場施工や加工を手掛ける鉄筋工の労働需給は近年になくタイトな状況となっている。東京都鉄筋工事業協同組合(東鉄協)の7月労務状況調査でも、必要とされる鉄筋工の総数は前回5月より1割増の6183人に膨らみ、現場稼働率も平均105%と各社が応援要員を求めるまで繁忙感が強まった。目先も年内いっぱいは高い稼働率が見込まれており、流通関係者も「10月以降には大型プロジェクトも具体化しそうなので、今の時点で弱気にならないことが肝要だ」と、下期からの巻き返しに含みを持たせた。

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