史上2球団目のセ3連覇へ突き進む広島 戦いながら進む世代交代をデータで分析

広島・鈴木誠也【写真:荒川祐史】

今季は投打チーム成績は抜群ではないが勝率では圧倒

 広島の勢いが止まらない。セ・リーグでは巨人以外に達成したチームがなかった「リーグ3連覇」は、ほぼ確実な様相だ。この3年の広島の成績を比較しよう。

【過去3年の22週終了時点における勝敗表】チーム打率・防御率

○2016年8月29日
1広島.613(121試73勝46敗2分差–)率.274(1)防3.40(1)
2巨人.522(118試60勝55敗3分差11.0)率.249(4)防3.46(2)
3DeNA.483(121試57勝61敗3分差15.5)率.250(3)防3.79(5)
4ヤクルト.463(122試56勝65敗1分差18.0)率.257(2)防4.83(6)
5阪神.454(122試54勝65敗3分差19.0)率.245(5)防3.51(3)
6中日.412(122試49勝70敗3分差24.0)率.244(6)防3.74(4)

○2017年9月3日
1広島.620(125試75勝46敗4分差–)率.273(1)防3.39(3)
2阪神.567(121試68勝52敗1分差6.5)率.248(4)防3.30(1)
3DeNA.521(121試61勝56敗4分差12.0)率.254(2)防3.82(4)
4巨人.508(121試61勝59敗1分差13.5)率.250(3)防3.34(2)
5中日.432(123試51勝67敗5分差22.5)率.247(5)防4.11(5)
6ヤクルト.331(123試40勝81敗2分差35.0)率.238(6)防4.27(6)

○2018年9月2日
1広島.617(117試71勝44敗2分差–)率.268(1)防4.08(3)
2ヤクルト.496(116試57勝58敗1分差14.0)率.268(2)防4.36(5)
3巨人.488(124試59勝62敗3分差15.0)率.261(4)防3.93(1)
4阪神.468(112試52勝59敗1分差17.0)率.252(5)防3.96(2)
5DeNA.443(117試51勝64敗2分差20.0)率.252(6)防4.36(6)
6中日.442(122試53勝67敗2分差20.5)率.264(3)防4.33(4)

 2018年は試合消化が遅れている。2016年8月29日時点ではセ・リーグは726試合、2017年9月3日時点では734試合を消化していたが、2018年9月2日時点で708試合。天候不順の影響が大きい。これからスケジュールは過密になる。

 広島は3年とも6割超の高い勝率。2016年は巨人と11.0ゲーム差だったが、2017年は阪神が6.5ゲーム差で食い下がっていた。しかし、2018年はヤクルトと14.0ゲーム差。広島以外の5球団の勝率は5割に達していない。広島の強さもさることながら、他の5球団が星の取り合いをしているとも言えそうだ。

 今年の広島はチーム打率.26809で1位ながら、2位ヤクルト(.26808)とは僅差だ。防御率は4.08で3位。投打の成績は抜群ではないが、圧勝を続けている。「勝つ方法を覚えた」というべきではないか。

2016年に驚異の上位打線「タナ・キク・マル」が固定

 各年の打撃成績を見ていこう。

 各ポジションのレギュラーと200打席以上の選手の打撃成績は以下の通り。

【2016年】
〇捕手 石原慶幸 91試209打40安0本10点4盗 率.191
〇一塁 新井貴浩 112試393打121安16本91点0盗 率.308
〇二塁 菊池涼介 119試485打158安12本53点13盗 率.326
〇三塁 安部友裕 94試215打64安5本29点4盗 率.298
〇遊撃 田中広輔 121試496打136安13本34点23盗 率.274
〇左翼 松山竜平 87試206打57安7本32点0盗 率.277
〇中堅 丸佳浩 121試474打137安17本80点20盗 率.289
〇右翼 鈴木誠也 107試386打126安21本80点14盗 率.326
△一塁 エルドレッド 77試265打80安18本41点1盗 率.302
△三塁 ルナ 57試212打60安3本31点6盗 率.283

 2016年は阪神から復帰して2年目の新井が中軸選手として打点を稼いでいた。22歳の鈴木誠也が強打者の片鱗を見せつつあった。「タナ・キク・マル」の上位打線が固定されて1年目だ。

【2017年】
〇捕手 會澤翼 94試252打68安5本29点0盗 率.270
〇一塁 エルドレッド 106試331打90安27本78点0盗 率.272
〇二塁 菊池涼介 120試505打139安13本53点7盗 率.275
〇三塁 安部友裕 111試369打113安3本38点17盗 率.306
〇遊撃 田中広輔 125試506打149安5本52点29盗 率.294
〇左翼 松山竜平 103試289打91安10本59点0盗 率.315
〇中堅 丸佳浩 125試487打151安21本84点12盗 率.310
〇右翼 鈴木誠也 115試437打131安26本90点16盗 率.300
△一塁 新井貴浩 89試223打66安8本44点2盗 率.296

 2017年は正捕手が石原から會澤に代わる。一塁はエルドレッドと新井が併用され、鈴木が4番に座った。また安部が初めて規定打席に達した。

【2018年】
〇捕手 會澤 翼 82試253打79安12本35点0盗 率.312
〇一塁 松山竜平 102試337打107安11本64点1盗 率.318
〇二塁 菊池涼介 117試476打115安12本49点9盗 率.242
〇三塁 西川龍馬 85試254打81安5本39点3盗 率.319
〇遊撃 田中広輔 117試476打124安9本51点21盗 率.261
〇左翼 野間峻祥 100試299打88安4本37点16盗 率.294
〇中堅 丸佳浩 99試337打109安31本78点10盗 率.323
〇右翼 鈴木誠也 99試335打113安27本81点4盗 率.337
△一塁 バティスタ 80試239打61安23本48点0盗 率.255

 2018年は會澤が打撃好調。三塁と外野に西川、野間という若い選手が定着しつつある。広島では外国人選手は好調な時だけ打線に据える起用法が続いているが、今年はエルドレッドに代わってバティスタがその役割を果たしている。

昨季は岡田と藪田、今季は大瀬良が先発ローテを牽引

 それでは投手陣はどうだろうか。先発投手は投球回数上位5人、救援投手は10セーブ、10ホールド以上は以下の通り。

【2016年】
〇先発
ジョンソン 22登12勝6敗0SV 0HD 153.1回 率2.23
黒田博樹 21登8勝7敗0SV 0HD 133.2回 率3.03
野村祐輔 21登12勝3敗0SV 0HD 128.2回 率2.87
岡田明丈 14登3勝3敗0SV 0HD 79.1回 率3.4
福井優也 12登4勝4敗0SV 0HD 70.2回 率4.46
〇救援
中崎翔太 53登2勝4敗27SV 7HD 53.1回 率1.52
ジャクソン 57登5勝4敗0SV 29HD 58.1回 率1.70
ヘーゲンズ 47登6勝3敗0SV 19HD 68.1回 率2.77
今村猛 54登3勝4敗0SV 14HD 60.2回 率2.82

 ジョンソンが12勝、ヤンキースから復帰して2年目の黒田が8勝を飾った。黒田はこの年限りで引退。救援ではクローザーになって2年目の中崎が活躍した。

【2017年】
〇先発
岡田明丈 22登12勝5敗0SV 0HD 134.2回 率3.61
野村祐輔 21登9勝4敗0SV 0HD 133.1回 率2.77
大瀬良大地 21登8勝2敗0SV 0HD 127回 率3.68
薮田和樹 35登13勝3敗0SV 3HD 106.1回 率2.62
九里亜蓮 28登6勝5敗0SV 0HD 106回 率3.91
〇救援
今村猛 60登1勝4敗23SV 13HD 56.2回 率2.54
ジャクソン 52登2勝2敗1SV 25HD 54回 率2.17
中崎翔太 48登3勝1敗4SV 24HD 46.2回 率1.35
一岡竜司 49登4勝2敗1SV 15HD 49回 率1.84
中田廉 47登2勝3敗0SV 12HD 42回 率2.57

 引退した黒田の穴を岡田、薮田が埋める。救援では今村が一時クローザーを務めるなど活躍。セットアッパー陣は全員、防御率3点を下回るなど優秀だった。

【2018年】
〇先発
大瀬良大地 22登15勝5敗0SV 0HD 146.2回 率2.21
岡田明丈 21登7勝5敗0SV 0HD 123回 率4.54
ジョンソン 19登10勝2敗0SV 0HD 117.2回 率2.98
九里亜蓮 20登7勝3敗0SV 0HD 96.1回 率4.67
野村祐輔 15登6勝3敗0SV 0HD 90.1回 率4.38
〇救援
中崎翔太 56登3勝0敗29SV 5HD 55回 率2.78
ジャクソン 42登3勝1敗1SV 23HD 40回 率2.70
フランスア 36登1勝3敗1SV 16HD 53.2回 率1.68
一岡竜司 49登3勝6敗1SV 14HD 46.2回 率3.28
今村猛 36登3勝2敗1SV 12HD 31.2回 率5.12

 大瀬良がエースの働き。ジョンソンは一時戦線離脱したが10勝到達。他の先発陣は今ひとつ冴えない。救援は中崎がシーズン通して活躍。後半からフランスアが目覚ましい働きをしているが、今村が不振に陥ったのが気がかりだ。

 3年間を振り返ると、広島は戦いながら世代交代を進めていることがわかる。それができるのは、若手選手が順調に育っているからだ。広島は他球団から大物選手を獲得することはない。ドラフトでの人材獲得の的確さ、そして優れた育成力で3連覇を果たそうとしている。

 今オフは丸と松山がFA権を取得するが、たとえ彼らが移籍しても若手の成長でそれを補っていくのだろう。今オフの展開にも注目したい。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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