新日鉄住金ステンレスの省合金二相鋼厚板、国内最大の陸閘門に採用 防潮堤の出入口、2基に合計250トン

 新日鉄住金ステンレス(NSSC)は5日、省合金二相ステンレス「SUS821L1」厚板が国内最大の陸閘門(防潮堤の出入口)に採用されたと発表した。岩手県宮古市藤原地区の超大型陸閘門2基に同厚板が約250トン採用された。大型陸閘門の扉体にかかる水圧は非常に大きくなるため、複雑な設計で強度を確保するのが通例だが、高強度のSUS821L1(NSSC2120)を用いることで構造の簡略化が可能になり、軽量化を実現した。

 工事名は「宮古港海岸藤原地区陸閘設備その3工事」で発注者は岩手県、受注者は中央コーポレーション・丸島アクアシステム復興JV。超大型陸閘門のうち藤原7号(高さ8・17×幅15メートル)は5月末に完成し、藤原1号(高さ8・22×幅25メートル)は現在据付工事中。二相鋼厚板の厚さは扉体用が8ミリ、他部材用が9~40ミリで、7号に約100トン、1号に約150トン使われる。

 一般的に小型の水門には「桁構造」が適用されるが、大型の水門には複雑形状の「シェル(箱型)構造」が適用される。今回の陸閘門は高強度の二相鋼厚板を活用して桁構造で設計されている。

 一般的な陸閘門の大きさ(長さ×幅)は30平方メートル以下。従来の国内最大はNSSCのSUS304厚板を採用した岩手県・釜石港須賀地区の陸閘門(86平方メートル)。藤原7号は、宮古港と室蘭港を結び地域復興への貢献が期待される岩手県初の定期フェリー航路のターミナル出入口に設置されている。

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