出塁を許した失策の割合は60%前後、鷹と中日は堅守のチーム
出演させていただいているラジオ番組で、野球解説者の新谷博氏より「各チームの失策の中で、出塁に関わるものと、進塁に関わるものの割合はどの程度なのでしょうか」というご質問をいただきました。失策は打球の処理をミスして出塁を許す「失策出塁」と、悪送球などで余分な進塁を許したり、アウトにできる走者を生かしてしまう「その他の失策」に分類できます。ただ、NPBをはじめ、失策出塁のみの数値がデータとして記載されているところは稀。そこで、新谷氏の質問に答えるべく、各チームの失策を「失策出塁」と「その他の失策」に分類してみました。
ソフトバンク
失策数45 許した出塁26(57.8%) その他19
楽天
失策数55 許した出塁32(58.5%) その他23
オリックス
失策数53 許した出塁 33(62.3%) その他20
ロッテ
失策数61 許した出塁 27(44.3%) その他34
日本ハム
失策数63 許した出塁 38(60.3%) その他25
西武
失策数72 許した出塁 38(52.8%) その他34
◯セ・リーグ
中日
失策数42 許した出塁29(69.0%) その他13
巨人
失策数59 許した出塁30(50.8%) その他29
DeNA
失策数62 許した出塁43(69.4%) その他19
広島
失策数70 許した出塁43(61.4%) その他27
ヤクルト
失策数75 許した出塁44(58.7%) その他31
阪神
失策数76 許した出塁48(63.2%) その他28
(データは9月6日現在)
どのチームもおおむね、全失策のうち出塁を許した失策の割合は60%前後です。両リーグで最も失策数が少ないソフトバンクと中日は、許した出塁が30以下ですし、グラウンド内に飛んだ打球のうちアウトにした割合を示すDERがリーグ1位でもあることから、堅守のチームであることがわかります。またロッテも許した出塁が30以下となっています。
この数値の要因の一つとして考えられるのが、人工芝の貼り替え。ヤフオクドームは2017年、ZOZOマリンスタジアムとナゴヤドームは2018年から新しい人工芝に貼り替えています。特に千葉ロッテのDERは
2017年 0.690
2018年 0.700
と改善していることがわかります。ただ、ロッテの場合、その他の失策が多いため全体の失策数がリーグ4位となっており、投手のサポートができていないことも物語っています。連携プレーの技術向上がこれからの課題となるでしょう。
失策の走者を得点に結びつける率の高い西武、巨人、広島
さて、このデータに関連して、番組のリスナーからご質問のメールをいただきました。
「失策によって出塁したランナーをどのチームが最も多く得点にしているのでしょうか?」
つまり相手のミスに最もつけこんでいるチームを知りたいとのこと。そこで失策により出塁したランナーが得点を記録している例と、失策出塁がいわゆるタイムリーエラーになった例に分けて集計してみました。
◯パ・リーグ
楽天
失策出塁34 得点10 タイムリーエラー8(52.9%)
西武
失策出塁27 得点12 タイムリーエラー2(51.9%)
ロッテ
失策出塁32 得点9 タイムリーエラー5(43.8%)
ソフトバンク
失策出塁30 得点10 タイムリーエラー3(43.3%)
オリックス
失策出塁35 得点5 タイムリーエラー9(40.0%)
日本ハム
失策出塁25 得点3 タイムリーエラー2(20.0%)
◯セ・リーグ
巨人
失策出塁40 得点15 タイムリーエラー10(62.5%)
ヤクルト
失策出塁38 得点12 タイムリーエラー10(57.9%)
広島
失策出塁46 得点15 タイムリーエラー11(56.5%)
阪神
失策出塁39 得点14 タイムリーエラー7(53.8%)
中日
失策出塁44 得点12 タイムリーエラー10(50.0%)
DeNA
失策出塁34 得点9 タイムリーエラー7(47.1%)
リスナーの方のご質問に答えるならば、27の失策出塁のうち12のランナーを得点にした西武が「最も相手のミスにつけこんで得点にした割合が多いチーム」といえるでしょう。セ・リーグでは巨人と広島が相手のミスにつけこんで得点しているチームと言えます。逆に日本ハムは失策出塁が得点に絡んだ割合が20%と、最も低い数値となっています。
なお、「失策」は、公式記録員の判断によって記録されるもので、簡単な打球の処理をミスしたものだけでなく、普段の守備範囲よりも広い範囲において取り損ねたものもエラーとして記録されたりします。なので、「エラーが多い」と「守備が下手」は一概にイコールにはならないことはご承知おき願いたいところです。事実、西武のエラー数はリーグワーストですが、DERはリーグ2位。ショート源田、セカンド浅村をはじめとする守備陣の貢献は少なくないのです。(鳥越規央 / Norio Torigoe)
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、統計学をベースに、テレビ番組の監修や、「AKB48選抜じゃんけん大会」の組み合わせ(2012年、2013年)などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。
文化放送「ライオンズナイター(Lプロ)」出演
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