金属行人(9月12日付)

 「原料炭が大幅上昇、21年ぶり高値」との報が伝わり、鉄鋼業界に激震が走ったのは、今から15年前の2003年暮れのことだ。当時は年間契約の時代。翌年度の価格を決める高炉メーカーと石炭会社の交渉は通常、前の年の暮れまでに決まることが多く、この時もクリスマス直前の決着となった▼21年ぶり高値といっても決着価格は25%高の1トン56ドル。今の3分の1以下だ。それでも10%を超える価格変動が珍しかった当時は深刻な出来事で、原料の値動きによって鋼材価格が変動するきっかけとなった▼鉄鋼原料をはじめとする一次産品の当時の急騰は中国の経済成長の結果だ。鉄鋼原料の場合はこれに加え、サプライヤーの「寡占化」も大きかった。その伏線となったのが1990年代の鉄鋼不況。鉄鋼原料の価格低迷が長引く中、サプライヤーの再編・集約が相次ぎ寡占化が加速した▼不況―再編―需給ひっ迫という似たようなサイクルに入っているのが電炉用の黒鉛電極。発火点が中国なのも同じで、上昇のスピードはさらに速い。10月からは1トン150万円を超える見通しだ▼「歴史は繰り返す」と悠長には言ってられない。このコスト増をいかに吸収するか。電炉メーカーにとっては正念場が続く。

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