《GT300決勝あと読み》GT300決勝波乱のなかでの上位陣それぞれのドラマ。GT300のタイトル争いはますます混沌

 終盤、31号車のTOYOTA PRIUS apr GTを駆る平手晃平がK-tunes RC F GT3にヒットされるかたちになり、SPコーナーでクラッシュ。それまで鳴りを潜めていた“SUGOの魔物”が今年も目を覚ました瞬間だった。その後、GT500クラスでは波乱も相次いだが、GT500と同様に今回GT300で優勝を飾ったSUBARU BRZ R&D SPORTは、その速さと強さでこれまでの不運を払拭する勝利を収めた。

「スタートからうまく流れをつかむことができました」と序盤から山内英輝が逃げをうったSUBARU BRZ R&D SPORTは、井口卓人に交代してからも「山ちゃん(山内)から無線で『タイヤがキツイかも』と言われたのが早かったので、ロングランを覚悟しましたけど、そのロングランも安定したラップで走れましたね」と独走態勢を築く。

 終盤、セーフティカーが出てからも、その走りは盤石だった。「チームのみんながすごい苦労して、このクルマを作り上げてくれていて、ファンも見放さずに応援してくれています。その恩返しがここでできてよかった(井口)」「メカとファンの思いがすべてだと思います(山内)」と語るとおり、これまでの思いが一気に結実したのが今回の勝利だっただろう。思い返してみれば、今季はレースに強い、ストレートで勝負できるクルマを狙ってSUBARU BRZ R&D SPORTは改良を受けてきた。セーフティカーラン明けは、持ち前の速さに加え、これらの改良も実を結んだかたちだろう。

 2位はこの週末、速さをみせてきたGAINER TANAX triple a GT-Rが入った。吉田広樹にとっては、鈴鹿1000kmで第3ドライバーとして登録されて以来、そして“自力”での嬉しい初表彰台だ。

 今回、ニッサンGT-RニスモGT3の2018年モデルは「GT-Rのセットアップが理解できてきた(GAINER・福田洋介チーフエンジニア)」とSUGOで安定したパフォーマンスをみせており、それが結実した。ウエイトハンデの感度が高いなかで10kgのハンデで臨んだことも大きく、「9号車(GULF NAC PORSCHE 911)をかわせたことが大きかったですね」と高畑直仁エンジニアも語る。逆に、チームメイトのGAINER TANAX GT-Rは74kgものウエイトが響き、9号車ポルシェをかわすことができずにいた。

 そして「できることを全部やり切っての3位(片岡龍也)」に入ったのは、グッドスマイル 初音ミク AMGだ。「今回のレースは、僕らは自力で『よーし勝負だ!』という力はありませんでした(谷口信輝)」という状況ではあったが、今回のレースでは20周過ぎあたりからタイヤのデグラデーションで苦しむチームが多く、その間隙を縫ってポジションアップ。さらに左側二輪交換という作戦を採ってさらにポジションを上げ、終盤マネパ ランボルギーニ GT3に迫られたものの、「いつもの“谷口渋滞”がはじまりましたね(笑)(谷口)」とテクニックで表彰台圏内を死守。わずか0.057秒差での3位を得た。

■マザーシャシーやBS勢のSUGOを得意とする陣営が苦戦。ランキングはさらに混沌

 一方、その0.057秒差で惜しくも表彰台に乗ることができなかったのはModulo KENWOOD NSX GT3だ。ただ、チーム代表でもある道上龍は「富士の後はいろいろ苦労もしましたが、4位という結果で終われて、やってきて良かったと思いました」とチーム最上位を喜んだ。

 Modulo KENWOOD NSX GT3は後半、一時順位を落としていたものの、四輪交換したことも功を奏し、「無我夢中でした」と大津弘樹がセーフティカー明けに、まさに“1周1台”のペースでオーバーテイクを連発した。ただ、大津は「やっぱり表彰台と4位は違いますから……」と悔しい表情も。富士でのクラッシュから復活を果たしたModulo Drago CORSEは、セットアップもいい方向を見つけたようで、終盤2戦で上位を脅かす存在となりそう。

 惜しくも0.008秒差での5位となったマネパ ランボルギーニ GT3は、予選でトラブルが起きたことで17番手だったものの、多くのライバルが「88号車は速い」とにらんでいたとおりの追い上げをみせた。今季のJLOCは大きく体制面も強化しているが、そのとおりの強さを披露した。表彰台にわずかに届かない悔しさはあるが、平峰は現在ランキングでも20点差の8位。こちらもライバルにとっても“怖い存在”と言える。

GULF NAC PORSCHE 911

 予選では3番手につけ、今回の“ダークホース”的な存在だったGULF NAC PORSCHE 911は、レースでもバトルを展開しつつ、6位でフィニッシュした。「今季のポルシェは、レースではそこまで強さがなかったのですが」と久保凛太郎。ただ、「去年は表彰台含めていい結果があったので、僕たちのコンビについていろいろ言われることもありました。でも、今回でベースが一段階上げられた。今はホッとしています」とまずは結果が出たことを喜んでいる様子だ。

Hitotsuyama Audi R8 LMS

 そして今回、不運に見舞われたのは、タイヤトラブルが起き、序盤でレースを落としてしまったHitotsuyama Audi R8 LMS、そして無交換作戦を敢行しつつも、アームのトラブルでピットインしたHOPPY 86 MCだろう。特にHitotsuyama Audi R8 LMSは決勝のペースも良かったが、左リヤタイヤにパンクが起き、緊急ピットイン。さらにその際にインナーフェンダーを叩いており、それが干渉してさらにピットインを強いられるなど、またも不運に見舞われてしまった。これがなければ「2位はいけていたと思います(富田竜一郎)」だけに悔しさはつのる。

 GT300も上位入賞チーム、そして上位を戦ったチームそれぞれにドラマがあった。また、今回はマザーシャシー勢、ブリヂストン勢など、SUGOを得意としていたチームが揃って苦しむ結果にもなっている。

 この結果、ランキングもさらに混沌としてきた。いったい誰が覇権を握り最終戦に臨むのか……。第7戦オートポリスは、シリーズを左右する一戦となりそうだ。

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