武雄温泉-長崎間 実質追加負担 最大174億円 県議会特別委 事業費増で県試算

 整備中の九州新幹線長崎ルートについて、武雄温泉-長崎間の建設費総額が人件費高騰などに伴い約5千億円から約6200億円に膨らむ見通しになったことを受け、長崎県は20日、増額分約1200億円のうち、長崎県の実質負担は最大174億円との試算を示した。JRが負担する施設利用料(貸付料)を考慮しておらず、貸付料が確定すれば174億円より低くなる可能性がある。

 長崎県議会九州新幹線西九州ルート整備特別委で、小林克敏委員(自民・県民会議)に、廣畑健次企画振興部次長が答えた。

 整備新幹線の建設費はJRが負担する貸付料を充て、残りを国が3分の2、地元自治体が3分の1ずつ負担する仕組み。武雄温泉-長崎間の増額分のうち、長崎県内の建設費は951億円。長崎県によると、長崎県の実質負担額は貸付料を考慮せずに試算した場合、後年度に国から充当される交付税措置を加味すると174億円という。

 特別委ではこのほか、与党検討委が整備方式をフル規格かミニ新幹線に検討を絞った新鳥栖-武雄温泉間に関連し、長崎県側はミニ新幹線方式の山形、秋田新幹線では2016年度までの5年間に、自然災害時などで計291件の輸送障害が起きたと指摘。全線フル規格で整備した九州新幹線鹿児島ルート(44件)の6・6倍で、「ミニ新幹線は課題が多い」と強調した。

 また、浅田眞澄美委員(自民・県民会議)の質問に対し廣畑次長は、全線フルの最短の開業時期とみられる34年度に間に合うには、来夏の概算要求に環境アセスメントのための費用を盛り込んでもらう必要があると説明。委員からは「時間がない」「危機感がある」など意見が上がった。

 田中愛国委員(自民・県民会議)や深堀浩委員(改革21)は、全線フルを目指す上で並行在来線問題にどう向き合うか質問。廣畑次長はJR九州が新鳥栖-武雄温泉間の並行在来線を経営分離した場合、「県民に影響がないことはない」とし、「経営分離されることがないよう国やJR九州に訴える」と述べた。

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