連邦議会だけじゃない!|「アメリカ中間選挙」州議会選が連邦議会にとっても重要な理由

11月に迫ったアメリカ中間選挙

いよいよアメリカの一大政治イベント中間選挙が来月まで迫ってきました。テレビや新聞では「トランプ政権への審判」と位置付けています。これは、トランプ政権が共和党に属することから、共和党が上下両院で過半数を獲得するかによって、「トランプ政権が国民から信任を受けたか」という発想からくるものです。実際、トランプ政権は多くの政策において共和党議員の票に依存しています。そのため、共和党が過半数の議席を失えば、それだけトランプ政権は政策を推し進めることが難しくなります。そのため、中間選挙はトランプ政権にも大きな影響を与えるという点から注目されているのです。

しかし、中間選挙は連邦議会選挙にとどまりません。州議会選も行われます。そして、この州議会選が、連邦議会選に負けず劣らずの重要な意義を持つのです。一言でいえば、今後10年の連邦議会の趨勢をも決めかねないのです。

今回のこの記事では、この州議会選の意義と区割りを巡る問題を解説したいと思います。

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連邦下院の選挙区は州議会が決める

アメリカの連邦議会には上院・下院がありますが、上院では各州2人ずつ選出されることが憲法によって規定されています。そのため、選挙区をめぐる問題は起きません。一方で、下院では、国勢調査に基づいて、選挙区当たりの人口が同じになるように割り当てられます。この選挙区改正過程では、州議会の支持が必要になります。そのため、選挙区改正をめぐっては、その時々の州議会多数派が自身の党に有利になるような選挙区改正を推し進めるということが度々発生してきたのです。

例えば、ノースカロライナ州で昨年、州議会多数派である共和党は、自党に有利な選挙区割りにするために黒人の人口比が不自然に大きい選挙区を作りました。というのも、黒人は統計的に民主党支持が多いことで知られています。そのため、黒人が集中する選挙区を意図的に作ることで、他の選挙区では共和党候補が勝てるようにしたのです。

今回、行われる州議会選で選ばれる800にも及ぶ新州議会議員は、2020年に行われる国勢調査の後、選挙区改正を担うことになります。行ってみれば、今回の州議会選は、今後10年の連邦議会選挙区を決める選挙でもあるのです。

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連邦下院の勢力も変わる

それでは、連邦議会の選挙区改正はどのような問題を引き起こすのでしょうか。既に論じたように選挙区改正の結果、民主党・共和党のいずれかに有利な選挙区ができます。その結果、連邦下院全体の議席もいずれかの政党に有利なものに歪められるのです。近年、連邦議会では民主党と共和党との議席が拮抗しています。その上、現在トランプ政権は最高裁判事の指名承認手続きでそうだったように、ほとんど共和党議員の支持のみによって政策を推進する姿勢を示しています。その結果、恣意的な選挙区改正手続きの積み重ねが、本来想定される政策以上に党派的な政策を生み出しかねないのです。

このように、11月に行われる中間選挙は州議会選も重要な地位を占めるのです。

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