【半世紀迎え飛躍する太陽シャーリング】造船向け切板供給に注力 鉄骨向け需要、積極取り込み

 新日鉄住金の中国地区拠点シャー工場である太陽シャーリング(社長・天谷武氏)は1968年に新日本製鉄・三井物産・三菱商事の資本参加を得て設立された。2016年に新日鉄住金が出資比率を51%に高め連結子会社化。鉄鋼、造船不況など経済の構造変化の中で経営努力を重ね、今年10月24日に設立50周年のメモリアルを迎え、次代に向け一歩を踏み出した。(小田 琢哉)

 同社は全国でも珍しい造船向けシャーとして機能。三菱重工業江波事業所近くの海岸沿いに立地する。主要顧客はジャパンマリンユナイテッド呉事業所をはじめとする瀬戸内の造船メーカー。高品位の切板供給体制を維持・発展させるため、常に最新機構の加工設備を取り入れてきた。造船向け切板加工が主軸であることは不変だが、非造船分野の建築やエネルギープロジェクト、インフラ開発などの構造部材も手掛けていきたい構え。

 今年6月に、16年間陣頭指揮を執ってきた浅利重法前社長(現取締役相談役)から、かじ取り役を天谷武現社長が引き継いだ。その経営方針は「安全・安心・ワクワク」の3点。安全・安心を基本に置き、「ワクワク」は成長投資との位置付けで、「設備の近代化と溶断プラスαでの高付加価値化を考えたい」とする。

 18年3月期の月間平均加工量は3800トンで、4期連続の3千トン超を記録した。今年に入っても5月に4千トンを超えた。今年度はJMU呉の船種変更で7~9月期は造船向け加工量が2500トン程度に落ち込むとみていたが、足元は2800トンで推移。JMU呉からの前倒し発注や造船以外の鉄骨、産業機械などの新規引き合いが増えたことが奏功している。

 全国的な繁忙期を迎えている鉄骨需要や産業機械、プロジェクト関連からの切板受注を積極的に増やす方針。工程負荷が高い切板を手掛けていくことで「大ロット・大単重・高生産性と小ロット・小単重・高付加価値」の両立を目指す上での試金石と認識している。今後の設備投資は面取りなど精整工程の省力化が焦点。現有する建屋・事務所・設備の一層の徹底活用を図り、作業スペースの捻出による処理能力向上を狙う。

 プラズマ、レーザーなどの大型切断設備に加え、ポータブル切断機を使用した手切りの精密溶断と熟練者が手掛ける高精度開先を極めながら、技術の標準化も進める。工程管理システムの更新時には、もう一工夫を施し、トップランナーの矜持を守る。シャー業界では遅れているAI、IoT活用も視野に入れる。

 社長からひと言

 「広島に赴任し半年余りだが、初めての土地ではないように感じる。当社社員は課題に対し簡単に諦めない。工場・営業とも負荷が高まっても粘り強く努力する姿が素晴らしい。今年7月の西日本豪雨災害での被災地に住居がある社員もいて休日返上で地元復旧に向けボランティアに出かける姿に胸を熱くした。自分自身、前職で東日本大震災の被災地を巡回した経験と重なって、戦後広島の復興を果たした地元への愛、目標に向かい協力して頑張る人々の土壌を実感している」

 企業概要

 ▽本社=広島県広島市中区江波南2丁目

 ▽資本金=1億6千万円

 ▽社長=天谷武氏

 ▽売上高=42億円(18年3月期単体)

 ▽主力事業=造船所向け切板供給

 ▽従業員=75人(18年4月1日現在)

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