故・谷口さんモデル 「ナガサキの郵便配達」寄贈 完全邦訳版、県内20高校に

 核廃絶運動をけん引し、昨年8月に死去した被爆者、谷口稜曄(すみてる)さんをモデルにしたノンフィクション「ナガサキの郵便配達」の完全邦訳版が3日までに、長崎県内20高校に寄贈された。
 原作は元英国軍人のジャーナリストが谷口さんに取材し、1984年に出版。邦訳されながら絶版になったが、谷口さんの依頼を受けていた東京のグラフィックデザイナー齋藤芳弘さん(72)が今年8月9日に復刊した。全国からの寄付で1万部を印刷し、うち3152冊を県内高校に無償提供した。
 長崎市文教町の純心女子高(東千代子校長)では3日、贈呈式があり、各校との調整役を担った長崎市の被爆者、廣瀬大輔さん(75)も出席。生徒を代表し水谷遥さん(18)がお礼を述べ「世界平和のために祈り行動します」と誓った。生徒は学園祭の収益金の一部を寄付した。贈られた282冊は3年生と職員全員が1冊ずつ受け取る。齋藤さんは「これを読んで被爆者の思いに寄り添ってほしい」と話した。
 四六判、260ページ、809円。購入は書店で注文が必要。寄付の問い合わせは一般社団法人「ナガサキの郵便配達制作プロジェクト」(電03・6821・7702、平日午前10時半~午後7時)へ。

生徒に「ナガサキの郵便配達」の目録を手渡す齋藤さん(中央)=長崎市、純心女子高

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