先祖を思い 祈りささげる 枯松神社祭 潜伏キリシタンの「聖地」

 長崎市外海地区の潜伏キリシタンの「聖地」として知られる長崎市下黒崎町の枯松(かれまつ)神社で3日、「サン・ジワン枯松神社祭」があり、潜伏キリシタンを先祖に持つ人たちが、同神社に祭られるジワン神父の遺徳をしのび祈りをささげた。

 明治期に禁教が解かれた後、人々はカトリックのほか潜伏時代の信仰形態を受け継ぐかくれキリシタン、仏教徒に分かれた。枯松神社祭はこの3者の融和を図ろうと開かれ、今年で19回目。地元カトリック黒崎教会は行事の重複などを理由に、昨年に次いで今年も不参加だった。

 「かくれ信徒」の黒崎旧キリシタンは午前中に集い、帳方(指導者)の村上茂則さん(68)が社殿の前で両手を組み、先祖から受け継いだ「オラショ」(祈り)を約30分唱えて奉納。

 カトリック長崎大司教区の祭儀は午後に行われた。同教区の野下千年神父(81)は「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が7月に世界文化遺産に登録されたことを受け「潜伏の時代に苦しんだ先祖たちに、あなた方のおかげと報告したい」などと語った。集いにはそれぞれ約60人が参列した。

 同神社は世界遺産の構成資産には含まれていないが、参道脇の「祈りの岩」では潜伏キリシタンがオラショを練習していたと伝わる。

オラショを奉納する、かくれキリシタンの村上茂則さん(右)=長崎市下黒崎町
野下千年神父とともに祈りをささげたカトリック信者ら=長崎市下黒崎町

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