現役チアが語る仕事の魅力 努力、成長、達成感…やりがいと喜びが一杯

各球団で活躍するチアリーダーたち【写真提供:各球団】

球場内を駆け回りファンとコミュニケーション

 選手やファンと一緒になってシーズンを駆け抜ける、パ・リーグ6球団のチアリーダーたち。グラウンド上のダンスなど応援パフォーマンスだけが仕事だと思いがちだが、彼女たちの仕事はそれだけではなく、実は私たちが思う以上にハードだ。後編では、チアリーダーの具体的な仕事内容や、この仕事を続ける理由、そしてこれからの夢などを紹介する。

 チアリーダーという仕事に熱い思いを持って全身全霊を捧げる彼女たちだが、実際の仕事内容はどのようなものだろうか。

 埼玉西武のオフィシャルパフォーマンスチーム「bluelegends」のEMIKAさんの1日の仕事は、試合開始の4時間前に球場に入り、当日の進行の流れやダンスをチェックすることから始まる。開門時には、「ウエルカムグリーティング」を行い来場者を笑顔で出迎え、試合開始前には、パフォーマーとしての見せ場である「グラウンドパフォーマンス」で観客を魅了。試合前には場外ステージでダンスパフォーマンスを行い日頃の練習の成果を披露する。

 試合直前、選手が守備位置につく際に、フィールドで選手1人ひとりを応援しながら場内を盛り上げ、3回表が終わった後には、再びフィールドに降り立ち、バズーカに子供用のTシャツを詰めて観客席にプレゼントするといったイベント「バズーカタイム」を実施。試合中は、「スタンドグリーティング」というスタンドを回ってファンとコミュニケーションを取りながら一緒に応援したり、子供たちにバルーンを作ってプレゼントしたりする。

 7回表終了時には、ビクトリーバルーンが球場いっぱいに広がった、ラッキーセブンのパフォーマンスを披露し、そして埼玉西武の勝利で試合を終えた日には、球団歌に合わせた勝利のパフォーマンスで、ファンとともに喜びを分かち合う。

「試合中はスタンドを回りながらお客様と同じ目線に立って一緒に応援します。試合が勝っていても負けていても、笑顔を絶やさず全力で全行程をやり抜いて、少しでもお客様に喜んでいただきたいので、普段からダンスレッスンで体力をつけ、たんぱく質やビタミンを多く摂って疲れが残りにくい体になるよう心がけています。スタンドグリーティングの時にファンから声をかけてもらえたり、勝利の喜びを一緒に分かち合ったりする瞬間が特にやりがいを感じ、疲れも吹き飛びますね」とEMIKAさんは語る。

 最近では、手話を取り入れた手話グリーティングを行い、聴覚障害を持つファンも楽しめるような活動を積極的に行っている。

球場外の仕事やイベント運営への参加、単独ライブ開催など多忙な毎日

 福岡ソフトバンクの「ハニーズ」は、試合時は試合開始約5時間前にはドームに集合。準備ができたメンバーから各自ストレッチやトレーニングを行うが、その姿は試合前のアスリートそのものだ。進行ミーティングの後、試合前オープニングパフォーマンスの練習を本番同様に行い、全員で円陣を組んで気合を入れた後、それぞれの業務の準備を行う。

 試合開始2時間前の野外ステージで踊るメンバーもいれば、花束贈呈や始球式などのアテンドを担当するメンバー、試合開始30分前にはグラウンドでDJたちと一緒にMCを担当するメンバーも。

 試合中もマスコットと一緒に写真撮影会を実施したり、一、三塁スタンド客席通路に設置されているお立ち台とグラウンドに分かれてウーハーダンスというパフォーマンスを披露したり、ファンにマイクを向けたり、チームが勝利すればセレモニーに参加し、ヒーローインタビューでの花道を作って、『いざゆけ若鷹軍団』のパフォーマンスを行う。

 息つく間もないぐらい、細かな仕事が用意されているが、全員がドーム内を動き回り、それぞれの担当が責任を持ってやり抜くことで、観客を退屈させることなく、満足度につなげているという。

 タイムスケジュールだけを見ても忙しさが伝わってくるチアリーダーだが、仕事は球場内だけではない。球場外のイベント活動や、球団のPR活動、学校・幼稚園訪問といった仕事もあるという。

 オリックスの「BsGirls」はオフシーズンに、単独ライブを開催する。ライブ用のダンスは多い日で1日6~7時間ほど練習し、オリジナル楽曲の歌詞はもちろん、ライブの構成や企画なども自分たちで考える。選手の登場曲をメドレーにしてパフォーマンスするなど、単独ライブといえども、チームを感じてもらえるような構成にしているとか。「ファンの皆さんと盛り上がれる空間を作れることが、すごく楽しいです」(CHALさん)。

 東北楽天の「東北ゴールデンエンジェルス」は、球団の職員と一緒に客席を清掃したり、球団全体の朝礼に出席したり、イベント開催のミーティングに参加したりすることも。「職員と一緒に演出を考えるなど、準備段階から携わることで、与えられたダンスをただ踊るのではなく、パフォーマンスを一緒に作り上げるという当事者意識や、チアリーダーとしてのプライドが生まれます。そんな情熱を持って臨んでいることが、私たちのパフォーマンスや活動を通じて少しでもファンの皆さんに伝われば嬉しいです」とKANOKOさんは語る。

「ハニーズ」のNAYONさんは、「ステージを終えた後、お客様から『お疲れ様!』『元気出たよ!』と声をかけてもらい、チームが負けたときでも、『また明日頑張ろうね!』『次は勝とうね!』と温かいお言葉や感謝の気持ちをいただいた時はうれしいし、次も頑張ろう!と思います。ヤフオクドームで日本一になった瞬間を、ファンの方々やメンバー全員と一緒に見て、喜びを分かち合えた時は今も忘れられません」とこの仕事のやりがいについて話してくれた。

グラウンドに立てばどんな辛いことも吹っ飛ぶ

 どの球団のチアリーダーも、「かっこいい、素敵だなと思われるチアリーダーを目指したい!」ということを目標に掲げる。そんな彼女たちは、「チアを仕事にしたい」「野球のチアリーディングチームの仕事に興味がある」という女性がいる中、どのような仲間と一緒に活動をしたいと思っているのだろうか。

 チアリーダーになって、どうすれば来場者に喜んでもらえるかという思考が芽生えたという「bluelegends」のEMIKAさんは、「私たちのチームに入れば、さまざまなダンスや、アクロバット、フラッグを使ったパフォーマンスを学ぶことができます。ダンスへの向上心を持っていることはもちろんですが、ファンとの距離が近いパフォーマンスチームなので老若男女のファンに親しみやすいと思われるパフォーマーを目指すような、元気で笑顔の絶えないメンバーと一緒に踊りたいですね」と話す。

 千葉ロッテ「M☆Splash!!」のASUKAさんは、「うちのチームはどんなジャンルも踊れるような日本一のダンススキルを目指して、球団マスコットと一緒に踊りながらチームを盛り上げるスタイルが売りです。私自身、リーダーとしてメンバーとのコミュニケーションを図りながらチームをまとめるように心がけていますが、メンバー同士の仲もいいのできっと楽しいはず! 興味がある人はぜひチャレンジしてみてください!」と言う。

「どんなに辛いことがあっても、グラウンドに立てば、マイナスな感情が吹っ飛ぶパワーのある最高の時間を経験できます!」と話すのはCHALさん。

 最近は、BsGirlsが入り口となって、オリックスを好きになり応援してくれるファンも増えているという。「CDのリリースやサイン会、単独ライブの実施など仕事は多岐に渡ります。新しいベースボールエンタテインメントを届けるチームの一員になって、私たちと一緒に夢を追いかけてほしいです!」。

応援の手段はダンスだけではない

 北海道日本ハムの「ファイターズガール」になることが夢だったという畠山茉央さんは、「個性豊かなメンバーが多いですが、それぞれの個性や魅力を生かして、優勝という一つの目標にみんなで向かうことができるチームです。多様な個性や特技が集結するからこそチームが成長すると思うので、少しでも興味があれば、ぜひ自分の個性を打ち出して挑戦してほしいです」と話す。

 さらに、「私自身、ファイターズガールというチームが大好き。もし卒業したとしても、夢見る子供たちをサポートするような仕事に関わっていきたいと思っています」と、将来の夢も語ってくれた。

「ハニーズ」の中で最もチア歴が長いNAYONさんは、他の球団ファンの方からも「ハニーズ」は良いね! すごいね! と言われるように、メンバーはもちろん、全球団のチアからも目標とされるチアを目指している。そのため、敵味方関係なく、観客に楽しんで観戦してもらうために、両チームファンの方たちに声をかけて会話をするような心がけも欠かさない。

「表向きは華やかに見えますが、裏では絶え間ない努力をしているのが“チア”の仕事です。チームに入って、こんなはずではなかったと思う人も少なくないと思います。でも、同じ目標に向かってメンバーと一緒に成し遂げる達成感や、グラウンドでの何万人という観客の歓声や、ファンが私たちにかけてくださる温かいお言葉など、言葉では言い表せないほどの喜びを得ることができる、とてもやり甲斐のある仕事です。私たちと一緒に、野球界を盛り上げていきましょう!」。

 自分を成長させたい人にはぜひうちがオススメ!と熱い思いを語るのは、「東北ゴールデンエンジェルス」のKANOKOさんだ。「このチームは、野球で言えば監督のいないチーム。自分たちでパフォーマンスを作り上げていくので、メンバー自身が場内の演出に関するミーティングに参加します。パフォーマンス以外でもグッズ販売やイベントの企画について発信する情熱があれば意見を実現できる環境があります。最初は『そこまで考えられないよ』と思うかもしれませんが、一緒に活動していく中で、自分の可能性を広げたいと自然に思うようになりますよ」。

 大学で書道の勉強をし、将来書道に関連した仕事をしたいという夢を持つKANOKOさんは、チアリーダーのグッズであるタオルに、メンバー1人ひとりの名前を、自身の特技を生かして書いている。「チアリーダーは、お客様の心に寄り添って選手の応援をリードして行く役目だと考えています。ダンスは『応援したい!』という気持ちを伝えるための手段の一つであって、MCも、書道も、思いさえあれば伝える手段になります。自分の特技や個性を生かして一緒に活動してくれる女性が仲間になってくれるとうれしいですね」と話してくれた。

 選手やファンたちに伴走したチアリーダーたちの今シーズンの幕は下りたばかり。しかし彼女たちの熱い思いは冷めることなく、すでに来シーズンへと向けられている。(「パ・リーグ インサイト」高島三幸)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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