【マークテックの〝技術承継事業〟立ち上げ】〈西本圭吾社長に聞く〉〝品質保証〟関連事業を拡充 第1弾、本田工業を子会社化

 アルコニックスグループのマークテックは、非破壊検査事業、印字・マーキング事業に次ぐ第3の事業の柱を築くため、後継者不在に悩む中小企業の事業を承継する「技術承継事業」を立ち上げた。M&Aや業務提携を通じて事業を拡大させるもので、すでに動風圧試験装置などを手掛ける本田工業(大阪市)を傘下に収めるなど成果を出している。マークテックの技術承継事業の戦略を西本圭吾社長に聞いた。

       

――技術承継事業とは。

 「非破壊検査事業、印字・マーキング事業の二つの柱で事業を展開し、安定的に収益を上げている当社であるが、将来に目を向けたとき、例えば『自動車業界で進むEV化の動きによってわれわれの非破壊検査装置が従来通り採用されるかどうか』など不透明感は強い。表面探傷を必要とする特殊鋼などの市場縮小が懸念される中で成長していくためには、M&Aや資本提携、業務提携を通じて成長の柱を構築することを考えていた。一方で社会的課題として、国内では技術のある会社でも後継者不在で廃業を選択する企業も多い。当社の軸である〝品質保証〟にマッチする企業の受け皿になることが互いのメリットになると思い、〝技術承継事業〟を立ち上げた」

――8月には本田工業を買収しました。

 「本田工業は非常にニッチだが、動風圧・断熱・風洞試験装置ではJIS認証機関や大手建材・住設メーカーなどにも納入するなど国内トップクラスの技術を持っている。特にJIS認証機関への影響力が強く、JIS規格の制定・変更にもかかわっているため規格対応力が高い」

 「本田工業は安定的に黒字を計上している企業だが、創業家が後継者問題を抱えていた。自社ブランドの維持や社員の雇用を守る意向が強く、さまざまな事業継続の方策を検討していた。取引銀行経由で話をいただき、面談を重ねて譲渡契約を結んだ」

――本田工業の買収でどのようなシナジーを実現できるか。

 「われわれにとっては本田工業の技術や人材、顧客といった事業基盤を引き継ぐことで〝品質保証〟関連事業の幅が広がる。一方、本田工業はマークテックの傘下に入ることで人材採用や与信力が向上するといったメリットがある。また本田工業の事業の一つに自動車検査装置である風洞システムがあるが、これをマークテックのアカウントを活用すればシナジーを発揮できる可能性がある。協力会社を相互に活用するということもできるだろう」

――今後の技術承継事業の展望は。

 「今回、第一弾として本田工業をグループ化することができたが、今後も案件があれば前向きに取り組んでいきたい。1年に1件程度のスピード感で取り組んでいきたい。例えばEV化の進展では、モーター用磁石での技術に注目している。またAI分野にも興味があり、すでに業務提携の可能性を探っている。これらは新規事業をにらんだものだが、既存ビジネスに絡んでは溶材や塗料など化学品関係で原価低減につながる案件があれば前向きに検討していきたい」

――海外でもM&Aをしていくのか。

 「海外では既存ビジネスの拡充が第一になる。非破壊検査事業では、当社の製品を販売するインドの代理店との合弁事業を考えている。インドの現地メーカーが造る探傷(磁粉探傷・浸透探傷)装置は、インドに進出している日系メーカーの要求する品質に達していないケースが多い。当社がノウハウを提供することで市場ニーズを捕捉できればと思っており、来年には形にしたい。米国でも非破壊検査事業の足掛かりを築きたい」(遊佐 鉄平)

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