【MLB】大谷新人王で相次ぐ“場外戦” ヤ軍中継アナが不満「アンドゥハーこそ新人王」

エンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

中継の実況アナであるマイケル・ケイ氏は投票結果にも“クレーム”「接戦であるべき」

 ア・リーグの「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたエンゼルスの大谷翔平投手。12日(日本時間13日)に発表された投票結果ではライバルと見られていたヤンキースのミゲル・アンドゥハー内野手に大差をつけることに。日本人で4人目の快挙となったが、この受賞を受けて、ヤンキース戦のテレビ中継でお馴染みの名物アナウンサー、マイケル・ケイ氏が大荒れ。未だに「申し訳ないが、アンドゥハーこそが新人王だ」と大差で敗れたアンドゥハーをゴリ押ししている。

 ヤンキースの中継局「イエス・ネットワーク」で実況を務めているマイケル・ケイ氏は同局で放送されているトーク番組「ザ・マイケル・ケイ・ショー」に出演。その中で、全米野球記者協会による新人王投票結果に不満を露わにした。

「ヤンキース・バイアス(偏見)というものが本当にあるとは信じないようにはしています。けれど、これはちょっとヤンキースに対する偏見を感じてしまいます。これ以上アンドゥハーはどうすればよかったというのでしょうか?」

 圧倒的な資金力を武器にライバル球団のスター選手を次々に引き抜いてきたヤンキースには「悪の帝国」という異名もある。ケイ氏は感情をむき出しにし、強烈な身内びいきを展開。絶大な人気を誇るヤンキースだが、その反面アンチ・ヤンキースによる偏見が今回の投票結果に影響したと持論を述べ、さらには、打率.297、27本塁打、92打点の成績を残したアンドゥハーはどんな活躍を見せれば、新人王を獲得できたのかと提起している。

 これに対し、セイバーメトリクスの専門家として有名なビル・ジェームス氏は「この上ない活躍でした。彼はジョー・ディマジオの持っていた新人記録を破ったのだから」と分析。英雄ジョー・ディマジオの持っていた二塁打44本というルーキーとしての記録を破り、47二塁打を放っていたアンドゥハーは素晴らしい活躍だったと評価した。その上で「彼(オオタニ)はルースが成し遂げて以来、100年間実現しなかったことをやり遂げようとしていました。彼はいい打者でした。22本塁打を放ちました。そしていいピッチャーでした。けれど、フルでプレーしていません。そして、投打のどちらにおいても極めてスペシャルというわけではありませんでした。とんでもない大コケさえなければ、契約した瞬間に、この受賞は決まっていたと思うのです」と主張した。

 どうしても納得のいかない様子のケイ氏は「それでもいいですよ。すごい接戦の末の受賞だったのなら。でも、圧倒的な大差であるべきではなかったのです。かなりの接戦であるべきでした」と、大差のついた投票結果にも“クレーム”。「彼(アンドゥハー)は最も価値のあるルーキーではありません。そこは理解しています。でも、ミゲル・アンドゥハーがエンゼルスで155試合プレーすれば、今年の大谷の働きよりも上回っていたとは思いませんか? もしも(大谷が)1年間プレーしていたら、とかは聞きたくありません。彼は実際、年間通してはプレーしていないのですから。アンドゥハーよりも打席数がはるかに少ないのです。これはフェアではありませんよ」と不満が止まらなかった。

セイバーメトリクスの専門家ジェームズ氏は「WARに著しい差」

 すると、ジェームス氏は自身の専門分野であるセイバーメトリクスの視点でこの争いを分析。「結局は(数字などの)分析的な面が重要ということなのでしょうけれど、オオタニはWARで3.9、アンドゥハーは2.2でした。誰も理解していないかもしれないけれど、WARこそが本当の指標なのです。いかにその選手が優秀かを評価する決定的な要素なのです。見てください、3.9対2.2なのです。著しい差があるのです」。

 WAR(Wins Above Replacement)とは現在のメジャーリーグで最も重視されているセイバーメトリクスの指標の1つ。様々な指標を総合して、ある選手が走攻守の全てを合わせて、どれだけ勝利に貢献したかを評価するもので、控えレベルの選手が出場する場合に比べて、どれだけチームの勝利を増やしたかを表している。ジェームズ氏に、このWARの部分で大谷がアンドゥハーを凌駕したと指摘されると、ケイ氏は「そうですね…」と返すしかなかった。

 さらにジェームズ氏は「これは勝敗に関わる指標です。彼はほぼ4勝分をもたらしています。ミゲル・アンドゥハーは2勝です。ヤンキースはシーズン100勝もしている中で、2勝とはどれほどの(意味を持つ)ものでしょうか」と、データ上はアンドゥハーがチームの勝利にそこまで貢献していないとも指摘。「ミゲル・アンドゥハーの守備は素晴らしいですか? ノー、彼はそうではありません。偉大な打者でしたか? 信じられないほど素晴らしいルーキーの打者でした。彼は年齢も一歳若いのです。でも、オオタニのユニークさというものが、彼に勝利をもたらしました」と語った。

 意気消沈していたケイ氏だが、最後は諦めきれずに再び“アンドゥハー推し”を展開。「“ベーブ・ルース以来”という面で、ファンキーな違いが生まれました。素晴らしい。野球にとっては素晴らしいことです。けれど、申し訳ないですが、アンドゥハーが私にとっての新人王です。彼のほうが(オオタニより)はるかに多くプレーしたのです。彼はヤンキースの今季に重要な存在でした」。どうしても未練が残るようで、新人王投票結果に憤るヤンキースファンの心を代弁していた。(Full-Count編集部)

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