島移住者の仕事

 鮮魚店や保育園のロゴマーク、つばき油製品のパッケージ、護岸ブロックの色彩選択のアドバイス、廃校を活用したレストランの企画運営…▲五島市のデザイナー、有川智子さんが手掛けてきた仕事だ。2011年に勤務先の関西から祖父母が住む五島に移り住み、五島初のデザイン事務所を起業した▲お店や商品や地域の良さが、多くの人に伝わりやすくなったと感謝される。「代わりがいくらでもいる都会とは異なり、五島では自分の仕事が直接、地域の役に立っているというやりがいが味わえる」と語る▲島は一つのまとまった社会を形成している。その内部で生活する人々はお互いの顔がよく見え、相手が必要としていることも把握しやすい。相手に役立つ新たな何かを提供できれば、それが仕事になる。島外で仕事をした移住者の経験も生きるだろう▲人口減少と高齢化になかなか歯止めがかからないのが離島の現状だが、一方で五島への移住者は、若い世代を中心にじわりと増えている。その中には有川さんのようなやりがいを感じている働き手がたくさんいるはずだ▲地域社会の一員として生き生き働く移住者が増えていけば、そこには新しい風が吹き、どんどん活気が生まれてくるだろう。そんな離島が、地域が、本県のあちこちにあればうれしい。(泉)

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