WEC上海:小林可夢偉組トヨタ7号車が2連勝。大雨で2度の赤旗、SC5回出動の難レースを制す

 2018/2019年WEC世界耐久選手権第5戦上海は11月18日、上海国際サーキットで6時間の決勝レースが行われ、TOYOTA GAZOO Racingの小林可夢偉、ホセ-マリア・ロペス、マイク・コンウェイ組7号車トヨタTS050ハイブリッドが、前戦富士に続く2連勝を飾った。
 
 大雨によるコンディション不良のためセーフティカー(SC)先導でのスタートが切られるも、わずか5周で赤旗が提示されることとなったWEC“スーパーシーズン”第5戦上海。その決勝は最初の赤旗中断から約55分後の12時10分にSCランで再開されると、8周目にSCが退去し実質的なスタートが切られた。
 
 まず、レースをリードしたのはロペス駆るTOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタで、これに僚友セバスチャン・ブエミの8号車トヨタTS050ハイブリッドが僅差で続くと、2台は実質的な1周目からレベリオン・レーシング、1号車レベリオンR13・ギブソン以下を引き離していく

 9周目、1秒以内に迫る8号車トヨタのプレッシャーに押されてか、ストレートエンドのヘアピンでロペスがオーバーシュート。これでトップが入れ替わるとブエミの8号車トヨタが一気に3秒のリードを取った。後方では11周目にサラザン駆るSMPレーシングの17号車BRエンジニアリングBR1・AERが1号車レベリオンを交わして総合3番手に順位を上げている。
 
 トップが12周目に入ったところで雨が強まったか、各所でスピン、コースアウトするマシンが続出。このなかでTFスポーツの90号車アストンマーチン・バンテージが最終コーナーでスピンからスタックしたことで、今レース2度目のセーフティカーが出動し、その後、スタートから1時間39分を迎えた段階でふたたび赤旗が提示された。
 
 2度目のリスタートは中断から20分後の14時20分。17周目からセーフティカーランとなったが、18周目にガルフ・レーシングの86号車ポルシェ911 RSRがメインストレートでクラッシュを喫すなど、依然として雨の強い状態であることを窺わせる。
 
 上位陣に動きがみられたのは25周目から。まずは予選3番手から総合4番手に順位を下げた1号車レベリオンがピットに入り、給油とともにニール・ジャニからブルーノ・セナにドライバーチェンジをしていく。トヨタも28周目にトップの8号車と2番手の7号車が同時にピットへ。それぞれブエミからアロンソ、ロペスから可夢偉にバトンをつないでいくが、7号車トヨタは停車位置が悪く、この修正に時間を要したことで大きくタイムをロスしている。

■一度は雨脚が弱まるも、終盤にふたたび強雨襲来。最後は7号車、8号車トヨタの接近戦に

8号車トヨタTS050ハイブリッド
レース序盤から中盤にかけて大雨に見舞われた今戦は、2度の赤旗中断があった

 一方、総合3番手にポジションを上げた17号車BRエンジニアリングBR1・AERとドラゴンレーシングの10号車BRエンジニアリングBR1・ギブソンは、32周目のグリーン振動後もステイアウトを選択した。そんななか、33周目にフォード・チップ・ガナッシ・チームUKの67号車フォードGTが1コーナーでスピンを喫しグラベルにスタック。これによって3度目のSCランが導入されると、まだピットに入っていなかったプライベーターの2台もピットに戻り、ちょうどレース折返しとなる3時間の時点では1号車レベリオンが実質トップに浮上している。
 
 スタートから3時間7分、3度目のレース再開を迎えると、総合2番手となった8号車トヨタのアロンソがAWDの強みを生かして1号車セナを攻略し、再度総合首位に立つ。一方、抜かれたセナはペースが上がらず。3番手から迫ってきたジェンソン・バトン駆る11号車BRエンジニアリングBR1・AERにも交わされ総合3番手にドロップした。
 
 ピットイン時に後退した7号車トヨタは、22秒先の首位を行く僚友を追うなかで、42周目に1号車レベリオンをパスして表彰台圏内に復帰。47周目にはバトン駆る11号車BR1を捉え、ふたたびトヨタのワン・ツーとなった。

 その後、レースは3時間38分過ぎにホームストレート上で炎を上げてストップしたバイコレス・レーシング・チームの4号車ENSO CLM P1/01・ニスモを撤去させるためSCカーが導入されることに。これで約22秒あった8号車と7号車トヨタのギャップが一気に縮まる。

 2台のトヨタはSCラン中に7号車、8号車の順でピット作業を追えると、可夢偉がドライブする7号車がアロンソの8号車を先行。その差は、フィニッシュまで2時間を切ったところで迎えたリスタート時点の16秒から、30分後には31秒に広がり7号車トヨタが優位に立った。
 
 この頃になると雨量が減り路面コンディションが回復したことで、各チームは最終スティントのタイヤ選択に頭を悩ませることに。そのなかでワン・ツーを占めるトヨタは、残り1時間あまりとなった82周目に7号車と8号車を呼び戻し、レインタイヤのままコンウェイと一貴をコースに送り出す。
 
 チェッカーまで残り40分、ふたたび雨が強まるとトップ2台の差は20秒を切り、10分後には一貴駆る8号車トヨタが7号車トヨタの後方7秒の位置に迫った。このタイミングでコンウェイの7号車が最後のピットに入り、翌周には一貴もピットへ。しかしピットアウト後、2台のギャップは22秒に広がっている。
 
 残り21分、最終コーナーの手前で17号車BR1が大クラッシュを喫し、このレース5度目のセーフティカーが出動する。これで7号車8号車トヨタのギャップが三度消滅。レースは残り6分で再開され、7号車のコンウェイと8号車を駆る一貴の一騎打ちに。しかし、最後は僅差のままコンウェイの7号車トヨタがトップチェッカーを受け、8号車トヨタは総合2位でフィニッシュ。同3位はバトン組11号車BR1が入った。
 
 LMP2クラスはジャッキー・チェン・DCレーシングの38号車オレカ07・ギブソン(ホー-ピン・タン/ガブリエル・オブリ/ステファン・リケルミ組)が母国でポール・トゥ・ウインを達成。LM-GTEプロクラスでは、アストンマーチン・レーシングの95号車アストンマーチン・バンテージAMR(ニッキー・ティーム/マルコ・ソーレンセン組)が、迫りくる2台のポルシェ911 RSR勢の追撃を振り切り新車のデビュー後初優勝を飾った。

 GTEアマクラスはデンプシー・プロトン・レーシングの77号車ポルシェ911 RSR(クリスチャン・リード/ジュリアン・アンドロウアー/マット・キャンベル組)が難レースを制している。日本勢は石川資章のMRレーシング、70号車フェラーリ488 GTEがクラス6位、澤圭太を擁するクリアウォーター・レーシングはクラス7位で“ラストレース”のチェッカーを受けた。

 2018/19年WEC“スーパーシーズン”の次戦、第6戦セブリング1000マイルは2019年3月14~16日、アメリカのセブリング・インターナショナル・レースウェイで開催される。

WEC第5戦上海は2度の赤旗に加えて5回のセーフティカーランを挟んでレースが続けられた
今季初となる表彰台を獲得したSMPレーシングの11号車BRエンジニアリングBR1・AER
2018年の新車デビュー後、悲願の初優勝を飾ったアストンマーチン・レーシングの95号車アストンマーチン・バンテージAMR
クラス10位に終わったコルベット・レーシングの64号車シボレー・コルベットC7.R

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