【台湾】時が止まったかのような歴史の町、ノスタルジックな鹿港さんぽ

各地に歴史を感じさせる古い町並みを残す台湾。なかでも、一度は訪れてみたい町が、台湾中部に位置する鹿港です。

かつては台南に次ぐほどの繁栄を誇った町は、古きよき台湾の雰囲気を色濃く残すノスタルジックタウン。昔懐かしい、絵になる風景の数々に会いにいきましょう。

古き良き台湾が残る鹿港

台湾中部に位置する町、鹿港。現在も昔ながらの台湾の町並みが保存された歴史都市で、「台湾中部で訪れるべきスポット」として台湾人も太鼓判を押します。

かつての鹿港は、台湾の重要な港として発展し、「一府(台南)、二鹿(鹿港)、三艋舺(台北の万華)」と呼ばれたほど。今では小さな地方都市といった趣ながら、一時は古都・台南に次ぐ貿易拠点だったのです。

コンパクトな町には、歴史的・文化的に価値の高い廟や家が多数残り、その数は廟だけでも60近く。提灯屋、ろうそく屋といった伝統工芸の店も多く、町がまるごと生きた博物館のような場所です。

鹿港へのアクセス

鹿港は、台湾中部の彰化県に位置しています。鹿港への起点として便利なのが、台湾第三の都市・台中。干城站バスターミナルから彰化客運、台中駅東口付近から中鹿客運のバスが運行しており、所要1~2時間程度。

所要時間は交通事情によって異なりますが、停車地の少ない中鹿客運のほうが短時間で到着することが多いようです。

ノスタルジックな老街

鹿港の魅力は、なんといってもノスタルジックなムードあふれる老街(旧市街)。台湾に「老街」と呼ばれるスポットは数あれど、鹿港ほど大規模で保存状態の良い歴地地区はそうそうありません。

鹿港で古い町並みが楽しめるのは、おもに北の天后宮と南の龍山寺のあいだ。この一帯に、歴史的建造物がひしめき合っています。

鹿港の老街は、赤レンガと木が組み合わさったレトロな雰囲気の建物が印象的。情緒ある古い建物の数々は、土産物屋などとして使われていて、陶器や扇子、古いおもちゃ、お菓子、お茶など、さまざまな品物を眺めながら歩くだけでも楽しめます。

もちろん、現役の住居として使われているものも多数。どこをとっても絵になる鹿港の老街は、写真好きなら、シャッターが止まらなくなるはずです。

楽しい路地裏散策

メインストリートの中山路から、大小の通りが網の目のように張り巡らされている鹿港は、路地裏散策が楽しい場所。

鹿港で最も有名な路地裏が、「九曲巷」。その名の通り、うねうねと曲がりくねった小路で、時が止まってしまったかのような静寂の世界が広がっています。このようにカーブの多い道ができたのは、「九降風」という北東季節風による強風や砂埃の被害を防ぐためなのだとか。

九曲巷に入り50メートルほど進むと、向かい合う建物をつなぐ渡り廊下「十宜樓」。鹿港が港町として栄えた時代、ここに文化人が集まって、10の愛好「琴・棋・詩・酒・絵・花・月・博・煙・茶」を楽しんでいたといいます。

鹿港にあるもうひとつのユニークな通りが「模乳巷」。インパクト大のこの名前は、この路地が「人がすれ違おうとすると乳が触れてしまうほど狭い」ことからきています。

それを聞けば、「そんな大げさな」と思うところですが、実際に模乳巷に足を運んでみると、その表現が誇張ではないことがわかります。

世界各地に狭いことで有名な通りがありますが、ここは本当に狭い!入口部分こそ意外とスペースがあるように見えますが、奥に入ってみるとその狭さに改めて驚くはずです。

もともと通り道というよりは、防火や採光、通風を目的に造られたもので、現在では鹿港の人気スポットのひとつになっています。

台湾最古の媽祖廟・天后宮

鹿港を代表する観光名所が、町の北に位置する天后宮。航海の安全を司る神である媽祖を祀っており、1591年に台湾で最初の媽祖廟として建てられました。その後、1683年には中国の福建省から媽祖像を迎えています。

台湾のなかでも長い歴史をもつ廟だけに、貫録あふれる存在感は抜群。けばけばしさのない重厚なたたずまいは、日本の寺院にも通じるものがあるかもしれません。

とりわけ、柱や天井に施された精巧な石彫刻の美しさは格別で、ずっと眺めていても飽きない気がするほどです。

鹿港一の名刹・龍山寺

鹿港一の名刹として知られるのが、町の南に位置する龍山寺。龍山寺といえば、台北にある同名寺院が有名ですが、鹿港の龍山寺は、台北のものよりもずっと落ち着いた静かなたたずまい。

かつては「台湾の紫禁城」の異名をとったほどの名建築で、北宋の宮殿を模したという建築様式は、格調高い雰囲気を漂わせています。

鹿港の観光エリアの南端に位置することもあり、中心街に比べると人通りも少なく、境内にはゆったりとした時間が流れています。穏やかな時の流れを感じながら、美しく刻まれた木の彫刻を楽しみましょう。

阿振肉包の絶品肉まん

台湾では、小吃(軽食)の町としても有名な鹿港。鹿港に行ったら必ず試してみてほしいのが、行列のできる有名店「阿振肉包」の絶品肉まん。

「たかが肉まん」と侮るなかれ。筆者はここの肉まんを食べて「肉まんってこんなにおいしいものだったんだ!」と衝撃を受けました。

フワフワの生地に、豚肉の旨みが凝縮されたたっぷりの餡が詰まっていて、気をつけないと肉汁がこぼれてしまうほどのジューシーさ。これを食べれば、肉まんの概念が変わるかもしれません。

大都市・台中から日帰りで行ける距離ながら、まったくの別世界の風景が広がる鹿港。ノスタルジックな町並みを散策しながら、小吃を頬張るのも粋なものです。

あなたも歴史ある港町で、古きよき時代の台湾にタイムスリップしてみませんか。

[All photos by Haruna]

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