発揮した「底力」と終盤の失速… 希望と課題が見えた2018年日本ハムの戦い

日本ハム・栗山英樹監督【画像:(C)PLM】

下馬評を覆し、優勝も見えたが、終盤に失速

 2017年のオフシーズン、日本ハムは激動の中にあった。投打で圧倒的な存在感を示していた大谷翔平(現エンゼルス)を筆頭に、守護神の増井浩俊(現オリックス)、リリーフのマーティン(現レンジャーズ)、主力捕手の大野奨太(現中日)と、複数の主力がチームを離れたことで大幅な改革を余儀なくされたのだ。

 当然、今シーズンの日本ハムをBクラスに予想する声は多かった。しかし、その前評判を跳ね返すかのように、選手たちは春から躍動する。今季スタートダッシュを決めた西武からも大きく離されることなく、長きにわたってAクラスをキープし続けた。

 上沢直之が7月末までに10勝を挙げるブレイクを果たし、エース候補に名乗りを上げる。新加入のマルティネスはシーズンを通じてローテーションを守り続け、6月中旬までに7勝を記録。同じく新助っ人のトンキンも8月17日の時点で防御率1点台と安定した投球を続け、中継ぎ・抑えとしてチームを支えた。

 野手陣では、4番の中田翔がチーム最多26回の殊勲安打を放つなど、昨季の不振から脱却した姿を見せ付け、FA権を行使して古巣復帰した鶴岡慎也がチーム最多の89試合でマスクをかぶった。3度目の盗塁王に輝いた西川遥輝や、リーグ3位となる打率.323、同2位の出塁率.427を記録した近藤健介もそれぞれの持ち味を発揮し、大田泰示も2か月近くの離脱がありながら「恐怖の2番打者」として14本塁打、出塁率.350をマーク。高い出塁率と足、長打力を備える生産性の高い上位打線は、対戦相手の脅威となった。

 雲行きが怪しくなったのは、8月に入ってからだった。首位の西武を追いかけ続け、3連勝すれば首位奪取という状況で迎えた3日からの天王山。その重要な初戦では、2点をリードしたまま終盤へ突入したが、守備の乱れで痛恨の逆転負け。これをきっかけに、シーズン全体の流れが変わり始めてしまう。

 悪い流れを止められずに8月を10勝13敗2分と負け越すと、8月2日時点で7ゲーム差をつけていたソフトバンクに、2位の座を明け渡す。9月に入ってからも大きく浮上することはできないまま、最終的にはリーグ3位に終わり、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージでもソフトバンクに1勝2敗で敗れた。

新陳代謝の良さと試合運びの巧さに定評

 シーズン開幕前の評価を考えれば、Aクラス入りは大健闘だろう。しかし、優勝争いを繰り広げた序盤戦の戦いぶりを思えば、終盤の失速は惜しまれるところだ。

 チーム全体にブレーキがかかってしまった要因はいくつも考えられる。まずは、主力選手たちのシーズン終盤の不調だ。上沢は8月に入ってから勝ち星に見放されて、最後の9先発でわずか1勝止まり。10勝目を挙げた時点で2.43だった防御率は、8月に4.50、9月に5.40と打ち込まれた。同じくマルティネスも後半戦は援護に恵まれず、7月以降は12先発で3勝6敗。それでも来日1年目から10勝11敗、防御率3.51と好成績を残した。

 また、有原航平、高梨裕稔、加藤貴之ら、主力の3投手が揃って防御率4.50台に終わり、トンキンが終盤戦に深刻な不調に陥ったことも痛手だった。トンキンは8月中旬まで安定していたが、18日の西武との首位攻防戦で8回に3失点を喫して負け投手になるなど、月間防御率7.71と背信の投球が続いた。CSファーストステージ第3戦でも、1点を追う6回に登板すると、2者連続本塁打を被弾。1死も取れずにノックアウトされ、後味の悪い形で来日1年目を終えた。

 ただ、育成には定評があり、新陳代謝が活発なチームだ。いずれはチームを背負うであろう若手の出現が期待され、また、現時点でも将来有望な選手は少なくない。二塁のレギュラー獲得が見込まれる渡辺諒や、正捕手候補として86試合で7本塁打とパンチ力を披露した清水優心、シーズン中は低打率にあえいだもののポストシーズン2本塁打を放った横尾俊建といった面々は、近い将来の主力として大きな期待がかけられている。また、ゴールデンルーキーの清宮幸太郎、堀瑞輝などポテンシャルを評価される選手たちが1軍で経験を積んだ。まだ22歳ながら抑えに抜擢された石川直也も、過酷な実戦の中で飛躍的な成長を遂げており、来季はそれに続く存在が出てくる可能性も高いだろう。

 多くの主力を失いながらAクラスに食らい付き、単純な選手層では測れない強豪チームとしての「底力」を感じさせた日本ハム。来季も「らしい」戦い方でシーズンを戦い抜き、北の大地に3年ぶりの歓喜をもたらすことができるだろうか。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

© 株式会社Creative2