阪神は外国人補強が上手い? 近年はイマイチも、球史に名を残す歴代助っ人

歴代勝利数でも3位につける阪神のランディ・メッセンジャー【写真:荒川祐史】

草創期の阪神を牽引した若林忠志と田中義雄のバッテリー

 阪神は元来、外国人選手の“選球眼”が良いチームだと言っていいのではないだろうか。草創期から、球史に残る活躍をした外国人選手を獲得してきた。歴代の阪神の外国人選手の数字を見ていこう。戦前の日本統治下の台湾人選手は含まない。

〇阪神の外国人選手、安打数10傑
1マートン1020安打(2010-2015)
2バース743安打(1983-1988)
3ラインバック598安打(1976-1980)
4カークランド559安打(1968-1973)
5オマリー548安打(1991-1994)
6シーツ463安打(2005-2007)
7ブラゼル433安打(2009-2012)
8ゴメス420安打(2014-2016)
9田中義雄400安打(1937-1944)
10ソロムコ369安打(1960-1963)

〇本塁打数5傑
1バース202本塁打(1983-1988)
2カークランド126本塁打(1968-1973)
3アリアス95本塁打(2002-2004)
4ラインバック94本塁打(1976-1980)
5ブラゼル91本塁打(2009-2012)

〇投手勝利数10傑
1若林忠志233勝(1936-1949)
2バッキー100勝(1962-1968)
3メッセンジャー95勝(2010-)
4キーオ45勝(1987-1990)
5スタンリッジ35勝(2010-2013)
6郭李建夫27勝(1993-1998)
7ムーア20勝(2002-2003)
8ゲイル18勝(1985-1986)
9ウィリアムス16勝(2003-2009)
10アッチソン12勝(2008-2009)

〇セーブ数 5傑
1呉昇桓 80セーブ(2014-2015)
2ドリス77セーブ(2016-2018)
3ウィリアムス47セーブ(2003-2009)
4リベラ39セーブ(1998-1999)
5バルデス22セーブ(2002)

 戦前、巨人と覇権を争った阪神のエースは、ハワイ出身の日系アメリカ人の若林忠志だった。若林は阪神、毎日で投げて237勝を挙げたが、200勝投手の中では最も奪三振率が低い。「7色の変化球」と言われる多彩な球種で打たせて取る投法だった。この若林とバッテリーを組んだのもハワイ出身の日系アメリカ人、田中義雄。「カイザー田中」と呼ばれ、勝負強い打撃でも貢献した。若林、田中ともに阪神の監督を務めている。田中義雄は巨人の長嶋茂雄が阪神の村山実から天覧ホームランを1959年当時の阪神監督だった。いわば、草創期の阪神は外国人選手が引っ張っていたとも言えそうだ。

バースは2年連続3冠王、マートンはイチロー抜く214安打

 その後も阪神には多くの外国人選手がやってきた。爪楊枝を咥えて打席に立ったウィリー・カークランド、ハッスルプレーで人気になったマイク・ラインバックなど、個性的な選手が多かったが、なんと言っても強烈な印象を残したのはランディ・バース。2年連続3冠王、1985年の21年ぶりの優勝の立役者となった。NPBを通じて史上最強の外国人打者という評価もある。

 以後も外国人選手の系譜は続いたが、平成に入ってからはマット・マートンの活躍が目覚ましい。カブス時代は1試合最多二塁打のメジャー記録を作り、若手打者として期待されていたが、阪神に入団。相手投手について個別のメモを取るなど研究熱心で、1年目の2010年にイチローの210安打を抜く214安打のNPB記録(当時)を作るなど、安打製造機として活躍した。阪神の外国人では唯一1000本安打を記録している。

 投手陣では、昭和40年代にジーン・バッキーが登場。小山正明、村山実、江夏豊らと先発投手陣を形成し、アメリカ出身の外国人ではジョー・スタンカと並ぶ100勝を挙げた。ジェフ・ウィリアムスは21世紀に入って「JFK」という勝利の方程式を担う救援投手として活躍した。

 さらに2010年、マートンとともに阪神に入団したメッセンジャーは毎年200イニング前後を投げる抜群のスタミナで、阪神投手陣の屋台骨を背負ってきた。2016年に入団したドリスとマテオはともにドミニカ共和国出身。救援投手として活躍。

 こうしてみると、実績のある大物選手を連れてくる巨人とは対照的に、阪神は無名の外国人選手を掘り出して活用するケースが多い。バースもメッセンジャーもメジャー実績はほとんどない。バッキーに至っては3Aが最高だ。スカウト陣と外国人選手の扱いに慣れた指導者の功績ともいえるだろう。

 しかし、マートンが退団してから阪神の新外国人打者は1年ごとに入れ替わり、活躍できていない。また投手もメッセンジャー、ドリス、マテオ以降は定着しておらず、今オフにはマテオも自由契約となった。果たして来季は、活躍する外国人選手が出てくるだろうか?(広尾晃 / Koh Hiroo)

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