金属行人(12月20日付)

 2018年の世相を表す「今年の漢字」に「災」が選ばれた。地震、豪雨、台風。史上最も早い梅雨明けで始まった猛暑もあった。例年にない規模の自然災害が日本各地を脅かし、誰しもその脅威を痛感した1年だった▼翻って今年の日本鉄鋼業は、自然災害以外に設備トラブルによる生産不調も頻発し、思うように生産量を伸ばせない状況が続いた印象がある。その点でやはり「災」の字に象徴される1年だったかもしれない。需要は比較的堅調だったが、暦年の全国粗鋼生産は昨年の1億460万トンに届かない見込みだ▼設備トラブルが多発している背景には生産設備の経年劣化や現場の世代交代、造り込みの難しい鉄鋼製品が増えていることなどさまざまな事象があるだろう。高炉各社は人と設備の両面から製造基盤整備に力を注いでいるが、なかなか対応が追いつかない。設備を刷新しても人の問題で対応し切れない面もあるようだ▼自然災害も設備トラブルも自ら経験しようと思ってできるものではない。あえて前向きに考えるなら、この1年の奮闘を糧にすれば、安定生産の力を取り戻すだけでなく、現場力のさらなる向上にもつながるかもしれない。災い転じて福となす。来年は息災な1年にしたい。

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