医療的ケア児の在宅支援 多職種連携 底上げ図る

来年度、長崎県内4地域に「協議会」

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 人工呼吸器の装着やたんの吸引などの医療的ケアが日常的に必要な子ども「医療的ケア児」が近年増加し、在宅医療や生活支援の充実が求められている。県小児科医会小児在宅医療部会は2019年度から、医療、福祉、行政関係者らが連携してケア児や保護者を支える体制の構築に乗り出す。今月、部会長に就任した岡田雅彦氏に課題や改善の方向性を聞いた。

 -小児在宅医療の現状は。
 県内の医療的ケア児は百数十人とみられるが、訪問医が付いているのは1割程度。このうち小児科医は西彼時津町に1人、大村市に1人だけ。長崎市とその近郊には「長崎在宅Dr.ネット」があり、内科医なども訪問診療をしているが、佐世保・県北や島原半島には小児を診る訪問医はほとんどいない。
 例えば県北の平戸や松浦の子どもは月1回、人工呼吸器を付けていても、診察などで25キロ以上離れた佐世保市総合医療センターに通院しなければならない。体が大きくなれば、母親が1人で車に乗せることも難しく負担が大きい。ただ、小児の訪問診療に取り組もうとする医師も出てきつつある。

 -どう訪問医を確保するのか。
 開業の小児科医は多忙なので訪問診療は難しいが、間接的に関わることはできる。長崎在宅Dr.ネットがしているように主治医の内科医などを、副主治医の小児科医がサポートする。大人と子どもではさまざまな違いがあるが、県内各地の訪問医に子どもも診てもらい、血液検査結果の判断、薬の量の調整、予防接種のスケジュール管理などを小児科医が担うという方法も考えられる。

 -県内では医療的ケア児の人数など実態が正確に把握できておらず、医療面だけでなく福祉や教育面での支援も必要とされる。
 さまざまな職種の人が日ごろから顔を突き合わせて連携することが必要。県内を四つの地域に分け、それぞれに「地域協議会」を置き、年3回会合を開く。協議会は各地の医師、看護師、保健師、行政の担当者、障害者の相談支援専門員、保育所や学校関係者らで構成し、リアルタイムでケア児の実数、重症度、医療依存度などを把握する。訪問看護を誰が担うのか、訪問医は必要なのか、災害による停電時に医療機器の電源をどう確保するのか、通学支援は必要ないかなどを検討し、問題解決に当たる。ある地域で課題があっても、別の地域で解決できていれば、それを参考に改善に努め、県内全体の底上げを図りたい。

 -どの職種がキーパーソンになるのか。
 県は17年度から相談支援専門員らに一定の研修を受けてもらい、「医療的ケア児等コーディネーター」として養成する事業に取り組んでいる。多職種をつなぐ役割がコーディネーターに期待されるが、病院でもまだ十分に周知されていない。病院から在宅に移行する際、すべてのケア児にコーディネーターが付くようになってほしい。

 -なぜ在宅支援に力を入れるのか。
 長年、小児科医として働き、多くの子どもを診てきた。ずっと入院が必要な子どももいるが、在宅に移行できる条件が整い、家族がそれを望むのであれば、その障壁をなくしたいという思いはあった。子どもと一緒に過ごしながら両親も働くことができ、医療が必要ない子どもと同じように生活できる。それをさりげなく支えられる社会がゴールだと思っている。

 【略歴】おかだ・まさひこ 1966年、長崎市生まれ。90年、長崎大医学部を卒業し、98年、同大大学院医科学研究科小児科学博士課程を修了。2015年12月から長崎大学病院小児科准教授。今月末で同病院を退職し、来月から医療型障害児入所施設療養介護事業所「みさかえの園 あゆみの家」(大村市)の副施設長。

◎医療的ケア児
 重い病気や障害を抱えて生まれたため、人工呼吸器の装着やたんの吸引、胃ろうのチューブを通じた栄養・水分摂取など医療的ケアが日常的に必要な子ども。従来は助からなかった命が、医療の進歩で救えるようになったことなどを背景に増えている。厚生労働省によると、19歳以下のケア児は2016年時点で全国に約1万8千人いると推計され、10年前の2倍近くに上る。長崎大学病院小児科によると、県内の15歳未満のケア児は13年度に少なくとも137人。県の17年度の調査では在宅酸素療法や気管切開など比較的重症度が高い15歳未満のケア児は72人だった。16年5月に成立した改正児童福祉法は、自治体が保健、医療、福祉などの関係機関と連携し、ケア児の心身の状況に応じた適切な支援に努めるよう求めている。

医療的ケア児の支援の充実について語る岡田氏=長崎市内