球場再生を目指して――八千代市が取り組む地域に根差した野球プロジェクトとは

千葉県八千代市で「クリスマスベースボール2018」が開催された【写真提供:竹村裕児】

老朽化のひどい野球場を再生しようと立ち上がった地元

 シーズンオフは公式戦こそないが、日本各地で野球イベントが開催される。実際にプレーしている選手はもちろんのこと、ファンもまた『野球ロス』を解消することができるだろう。12月22日に千葉県八千代市で開催された「クリスマスベースボール2018」も、そんなイベントの1つだ。

 会場となった八千代総合運動公園野球場は、今でこそ高校野球の春季大会県予選が開催されるまでに回復したが、以前は老朽化がひどく試合を行うことすら困難な状態にあった。この状況を変えようと立ち上がったのが、八千代市で選手マネジメントやコーチング事業等を行っているスポーツマネジメントオフィス「B.B.CLOVERS(ビービークローバーズ)」だ。「八千代総合運動公園野球場 再生プロジェクト」と銘打ち、定期的なグラウンドや施設整備を継続することで、再び球場使用が可能となった。

 この球場再生に向けた取り組みを幅広く知ってもらうため、そして野球を純粋に楽しんでもらいたいという想いをきっかけに、2013年から始まったのが本イベントだ。国内ではチャリティー試合や野球教室も手掛ける一般社団法人「All Nations Baseball」が運営協力。ミネソタ・ツインズ傘下マイナーでコーチを務める代表・三好貴士氏の下、選手や指導者として世界6か国で活躍した田久保賢植氏など世界の野球を知るメンバーが集まっている。

 今回で6回目となったクリスマスベースボールは、小中学生向けの野球教室や指導者講習、現役選手との対決がメインとなる。今年は6人の講師が参加。その中には小林雅英氏(元ロッテ)や星野真澄氏(元巨人)などNPBでプレーした選手の姿もあった。

野球教室や指導者講習など盛りだくさんのプログラム

 小雨が降りしきる中で始まったイベント。午前中は投手と野手に分かれての野球教室が行われた。「All Nations Baseball」のメンバーでサンフランシスコ・ジャイアンツでブルペン捕手を務める植松泰良氏は、捕球後から送球体勢に入るための足の踏み出し方を丁寧に指導した。また、同イベントには地域チームの指導者も参加。同時間に行われた指導者講習に参加し、今後のチーム指導における大きなヒントを得ていた。

 午後からは小中学生と講師による対戦が行われた。小学生の部は、星野氏との1打席対決。参加者はプロ経験者が投げる球のスピードに戸惑いを見せつつもフルスイングで応じ、会場は大盛り上がりとなった。続いて行われた中学生の部では、ティーボールでの飛距離対決が行われた。ここからは八千代松陰高校出身で、2018年ドラフトで楽天から育成1位指名を受けた清宮虎多朗投手も参加。左打席に立った清宮は、投手ながらもライト方向へ大きな当たりを連発して周囲を驚かせていた。最後はMVPに選ばれた中学生と星野氏による1打席対決でイベントは締めくくられた。プロ経験者から直接指導を受ける機会はなかなかない。参加した小中学生は雨が降る悪条件でも、目を輝かせてグラウンドに立っていた。

 イベントではスタンドにいる参加者も楽しめる場が用意されており、講師として登場した選手が実際に着用したユニホームの展示をはじめ、野球グッズ販売、手羽先や豚汁など飲食店ブースも充実。八千代市に根差した企業や団体も一体となってイベントを盛り上げていた。

 八千代市をはじめとする全国各地で行われるオフのイベントは、これからも継続していく必要があるだろう。まずは野球を身近に感じる環境づくりこそが、競技普及のへ第一歩と言えそうだ。(豊川遼 / Ryo Toyokawa)

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