【新春インタビュー 鉱業支援政策のあり方、提言に向け議論】〈日本鉱業協会・関口明会長〉資源開発の継続性を担保

高止まりする電力料金、多消費産業の負担軽減を

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日本鉱業協会・関口会長

――昨年の振り返りを。

 「実需は国内外とも堅調だった。一方で非鉄金属価格は昨夏ごろから急落し、上値の重い展開が続いた。これは実需の変調というよりは米中貿易問題を中心とした政治的な動きに対する投機筋のリスク回避によるもので、相場サイクルの中の一つの動きだろう。実体経済、足元の非鉄価格水準にしてもそれほど心配する状況ではないとみている。だが、政治リスクの問題が足元の相場に織り込まれているとはいえ、これが長期化して中国の実体経済に大きく影響してくるようであれば来年は少し厳しい局面も想定しなければならない。先行きはまだ見通せないが、この問題が早期解決することを願う」

 「協会では経団連下部組織の経済広報センターの企業人派遣講座への派遣を始めた。こうした活動を通じて人材の確保・育成につなげていければ良いと思う」

――国内のベースメタル需要の動向は。

 「銅は五輪に向けた建設投資に遅れがみられ、期待されていたよりも盛り上がりに欠ける面はあるが、堅調に推移している。また、その遅れた分が五輪後にずれ込み、ある程度の期間で需要が平準化されるのは良いことだと思う。亜鉛も自動車生産が好調なため、最大用途のめっき鋼板向けが堅調だ。鉛は韓国向けの廃鉛蓄電池輸出が制限され、原料の流れが国内生産者にとっては良い方向に向かった。鉛蓄電池向けは原料が手当てできずに引き合いに応じきれない部分があったが、足元では改善しつつあるように思う」

――昨年は自然災害が多い年だった。

 「会員企業の一部事業所で浸水被害を受けたが、それも早期に復旧し、大きな影響を受けずにすんだのは幸いだった。豪雨や地震などの自然災害はこれまで想定されてきたものよりも大きくなってきたのは間違いない。これは各社の拠点によって立地などの事情が異なるため、一概には言えないが、災害対応は業界の中でも大きなテーマの一つになっていきそうな気がする」

――昨年10月にはリサイクル原料の輸入手続き簡素化などが盛り込まれた改正バーゼル法が施行された。

 「協会としても改正の趣旨に則って正しい運用ができるよう、自主的な認定制度を設けた。E―スクラップなどから有価金属を環境に配慮した形で適切に回収できるという製錬所を認定し、適正な処理とトレーサビリティを確保しようというのが目的だ」

――中国のスクラップ輸入規制もあった。

 「中国が規制しているのは金属品位が低いスクラップなので直接的に製錬原料にするのは難しい。これは製錬所の役割と前処理業者の役割をどう整理して連携するかだと思う。ただ、これは各社がどう判断して対応していくかによる。一方で中国の銅鉱石や地金の輸入が増える方向に働く可能性があるという意味では市場的に多少の影響があるかもしれない。その場合も地金の新たな需要が喚起されればプレミアムは上がるが、銅の買鉱条件は厳しくなる可能性があり、どういった影響が出てくるかはまだ読めない」

――昨年は協会で品質保証に係るガイドラインを策定した。

 「会員企業が銅スラグのJIS認証取り消しを受けたという事案を重く受け止め、策定したものだ。この作業に当たり、今回の事例を除き会員各社が適切に品質管理を行っていることを協会の共通認識として確認できたことは収穫だった。当業界は各社がさまざまな業種業態で事業を展開しているため、ガイドライン自体は最大公約数的なものにならざるを得なかった面はあるが、それぞれの事業内容に合わせて上手く活用してもらい、業界の信頼性がさらに高まっていけば良いと思う」

――製錬所では高止まりする電力料金が重荷となっている。

 「鉱業政策促進懇談会などの活動を通じて低廉・安定的な電力供給を求めている。特に実現してもらいたいのがFIT賦課金減免措置の維持・拡大だ。現在も減免制度はあるが、これがなければ事業が継続できないレベルになっている。我々も省エネ努力は継続しているが、例えば製錬の電解工程では震災前から理論上の最低原単位に近い水準で操業しており、これから大幅に改善する余地は残っていない。我々の製錬所は昼間に操業せずに電力会社の夜間の余剰電力を使った操業を行ってきた。そのために必要以上に大きなプラントも抱えてきた。こうした業界のこれまでの努力を評価してもらい、電力多消費型産業に過大な負担がかからないような政策をぜひ実現してほしい」

 「日本では銅、鉛、亜鉛の各製錬所が緊密に連携して多種多様な金属資源を回収している。電力代を理由に亜鉛製錬所の操業が困難になれば、その資源循環のネットワークが崩れかねない。製錬所、リサイクルも同様だが、国際競争にさらされている中で他国と競争環境があまりにも違い過ぎるという点は改善してもらいたいということだ」

――鉱業政策では減耗控除制度の維持・拡充も求めてきた。

 「今年度で期限を迎える減耗控除制度は日本企業が海外で資源開発を安定的に進める上で不可欠な制度だ。我々も鉱促懇の活動などを通じ、各方面に減耗控除制度の重要性を説明してきた。その延長が税制大綱に盛り込まれたことに対し、関係者の方々に感謝したい。一方、要件緩和についても当業界が訴えてきたことを理解していただき、一定の成果を得られたと考えている」

――資源の安定確保のために必要な支援制度の恒久化などは図れないか。

 「現行の鉱業関連税制はもともと国内鉱山を開発する鉱業者を想定して組み立てられた制度であり、海外で自主鉱山開発とはいえ、そのほとんどがマイノリティでの参画という現状とはそぐわない面が多々あると思う。そうした背景から現在、あるいは今後の日本の資源開発にとって、より有効な制度はどういう中身を担保すれば良いかという議論や検討を関係省庁などにも相談しながら始めたところだ。今後も期限を迎える鉱業関連税制の延長を要望していく姿勢に変わりはないが、その先に減耗控除制度と海外投資損失準備金制度の期限が同じタイミングで来る。そこでの制度の大改正に向けてさまざまな議論やスタディを1年から1年半程度かけてじっくりやっていきたい」

 「日本は海外で資源を確保しなければならないという現実がある。それに対してあるべき国の支援のあり方とはどういうものか。例えば税制や、JOGMECなど政府系機関の機能、金融支援、補助金、さらに言えば資源外交もテーマになるかもしれない。単に税制という切り口だけでなく、すべて白紙の状態から国の資源政策としてどういう支援制度が望ましいか、今後も有効なのかを議論していく」

――資源開発投資が少しずつ動いてきた印象がある。

 「昨年は日本企業による大型投資案件もみられた。資源ブーム時には、その後の価格低迷で各社とも減損を計上するなど厳しい経験もした。そういう意味では各社とも目利き力をつけて本当に有望な案件を厳選し、投資するという形になっていると思う」

――中国での銅地金供給能力の増強で同国の需給ギャップが縮小している。懸念は。

 「懸念がないとは言えない。現状で日本の最大の銅地金輸出国なので、その吸収力が小さくなれば影響はあるだろうと思う。だが、それがいつどのぐらいになるのかが一つのポイントだ。中国経済自体は伸びが緩やかになっただけで後退しているわけではない。その緩やかな伸びに対して供給能力が増える。一方で環境問題に対応できない中小製錬所の淘汰は引き続き進むと想定されるので全体としての需給バランスがどうなるか。また、昨年はインドの製錬所が操業停止になるなどしてアジア域内の地金需給がタイト化するという事象もあった。そういう意味では中国国内だけでなく、東南アジアなども含めて少し広いエリアでの需給バランスを見て、その中で日本の銅製錬所がどういうポジションをとれるかになってくると思う。単に中国だけを見てどうこうということにはならないのではないか」

――鉱石中の不純物増加という課題に対してJOGMECなどが不純物の分離技術開発を進めている。

 「これは製錬側からみれば不要なものを分離できる、資源国からすれば資源化できなかったものを有望な資源にできるということで双方にニーズがあり、期待は大きい。だが、個人的には技術を確立した後にそれをどう使うかという点も議論しておくべきだと考える。不要なものは資源国に置いてくるという発想が先行してしまうと、資源国の反発を招きかねない。技術の確立と並行して双方が納得できるような解決策を模索しておくことが必要ではないか」

――今年取り組むべきことは。

 「協会としては時代に合った鉱業支援政策の構想を提言するための準備が一番大きな仕事になると思う。また、自然災害も激甚化しているので各社ともまずは安全に留意して安定操業を継続し、高機能・高品質素材の安定供給という需要家、社会からの要請に応え続けていくということに尽きると思う」(相楽 孝一)