定数割れで再選挙となった昭和村議会選。そこから見えてくる地方議員のなり手不足問題とは…?

昨年の11月27日に告示された群馬県の昭和村議会議員選挙では驚くべきことが起きました。それは定数12に対し、9人しか立候補せず、欠員3の再選挙をすぐに実施しないといけなくなったのです。この再選挙は昨日1月22日に告示され、欠員3に対して無所属で新人の男女3人が立候補し、無投票で当選が決まりました。
今回は欠員を埋めるための選挙が行われる条件地方議会の定数割れ問題について紹介します。

欠員補充選挙が行われる条件は?

地方議会選挙において、立候補者数が定数未満しかいなかった事例というのは珍しいものの、現在では1年に数回起きています。例えば、2018年には前述した昭和村以外にも、4月に告示された長野県の小谷村議会議員選では定数10に対し、9人しか立候補しませんでした。また、6月に告示された山形県の庄内町議会議員選でも定数16に対し、15人しか立候補しませんでした。しかし、昭和村を除いて、これらの欠員を埋める選挙をすぐ実施することはありませんでした。これには以下のような理由があります。公職選挙法では欠員が生じた場合にその欠員を補充する選挙を実施する条件が規定されています。地方議会議員選の場合は以下のような条件のいずれかを満たしたときとなっています。

・定数の6分の1以上の欠員があった場合(この場合は50日以内に選挙を行う)
・その自治体で知事選や市区町村長選といった別の選挙が行われる場合(同時に実施する)

このため、立候補者数が定数未満であったり、辞職や死去などの何らかの事情で欠員が生じたりしたとしても、定数の6分の1以上の欠員でなければ、すぐさま選挙を行うことはありません。前述した3つの定数割れになった選挙では、昭和村のみがこの定数の6分の1以上の欠員という条件に当てはまったため、50日以内に欠員補充のための再選挙を実施する必要があったのです。

すぐに欠員補充の再選挙を行った事例は?

前述したように立候補者が定数を下回った定数割れの事例は珍しいものの、現在では年に数回起きる事例です。ただ、すぐさま再選挙を行うような定数の6分の1以上の定数割れはかなり珍しい事例です。
今回の昭和村以前では、2007年に行われた奈良県の上北山村議会議員選の事例があります。このときは定数7に対して、5人しか立候補しませんでした。これは現職7人の内、一気に3人が引退してしまい、現職4人と新人1人しか立候補しなかったことによります。この後の再選挙でも立候補者を探すのに難航し、前述した新人を担ぎ出して選挙事務長をやった人物がやむを得ず立候補するなどして、かろうじて欠員2に対して2人立候補させて定数を埋めることに成功しています。また、その前では2004年に行われた長野県の売木村議会議員選でも定数8に対して、6人しか立候補せずに欠員補充の再選挙をすぐに実施しています。
また、定数割れの再選挙を回避するため、選挙直前に定数を減らした自治体もあります。2013年の群馬県神流町では現職議員が複数引退を表明したものの、新顔が見当たらず、立候補予定者説明会の出席も少なかったため、選挙直前になって定数を10から8に減らしました。このときの立候補者は8人であったため、定数が10のままであった場合、再選挙を実施することになっていたのです。
このほか、拙記事「あなたの一票は「政治家だけ」ではない時代も。教育委員会にも選挙があったこと知ってる?」で紹介したように過去、教育委員も選挙で選ばれていた時期がありました。しかし、教育委員選挙は有権者の関心があまり高くなく、立候補者数が0の自治体すらあったなど、すぐさま欠員補充の再選挙を行う必要があった自治体が小さな町村などで複数存在したことが記録されています。

地方議員のなり手不足問題

このような定数割れの背景には、地方議員のなり手不足問題があります。議員というと、高い報酬をもらっているイメージがありますが、実像は異なります。昭和村議会の場合、議員報酬の月額はわずか17万7千円しかなく、ボーナスを含めても年額300万円程度となっています。また、同じく定数割れで再選挙となった上北山村議会では、2007年当時の月額報酬は約16万円となっており、手取りでは13万円程度にしかなりませんでした。このように小さな町村では議員報酬が極めて少ない上に政務活動費などもないため経費も自腹であり、さらには議員活動が多忙で兼業も難しいという事情があります。もちろん議員のなり手不足問題の理由は金銭面だけではありませんが、このような金銭面の問題が極めて大きなものになっているのは事実としてあります。
このような議員のなり手不足問題に対して、自治体によっては議会を廃止することを検討していたことすらあります。拙記事「日本の歴史上ただ一度の議会廃止が平成で再び起きようとしている。議会って廃止できるの?」で紹介したように、高知県の大川村では議会を廃止して、町村総会と呼ばれる全有権者で構成される総会の設置を検討したことがあります。
現在、地方の小さな自治体は過疎化や高齢化がさらに進むと考えられています。このため、今後は地方議会の定数割れなどの事例はさらに増えるものと考えられます

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