【平成の長崎】 ケネディ大使 来崎 被爆証言「心動かされた」 平成25(2013)年

 12月9日に長崎入りしたキャロライン・ケネディ駐日米大使は10日、長崎市の平和公園や長崎原爆資料館を訪れた。同館では被爆者の証言を聞いた後に「深く心を動かされた」と述べ、父のジョン・F・ケネディ元大統領に倣い、核軍縮に尽力する決意を示した。
 1978年に広島を訪れたが、長崎に来たことはなかった。今回は11月の着任後、初めての被爆地訪問となった。
 同日午前、同資料館に入り、中村明俊館長の案内で米国の原爆投下がもたらした惨状に関する展示を見学。中村館長によると、無言で30分間見入り、倒壊した浦上天主堂の一部を再現したレプリカなどに特に注目したという。館内では元長崎大学長の土山秀夫氏ら被爆者3人と面談し、被爆体験や健康被害に関する研究についてメモを取りながら聞き入った。
 各国の要人がメッセージを書き込む「芳名録」には「この先、(長崎の)皆さま方の取り組みの一端を担いたい」と記帳。報道陣を前に、長崎の町や被爆者を「平和の使者、模範」と表現し、父が核軍縮の足掛かりを築いたことに触れ「誓いを新たにした」と語った。
 その後、浦上天主堂で、現存する被爆聖像に対面。平和公園では、平和祈念像前に花輪をささげ、米国から寄贈された友好の木「ハナミズキ」の植樹式に出席した。同日午後、長崎を離れた。
 田上富久市長は報道陣の取材に対し、植樹式後の会談でオバマ大統領の長崎訪問の実現を要請し、ケネディ大使が「被爆地訪問は大統領が掲げる『核兵器のない世界』に向けた強いメッセージになる。今回の訪問で感じたこととともに、大統領に伝えたい」と応じたことを明らかにした。
(平成25年12月11日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。

平和公園で献花するケネディ駐日米大使=10日午前10時46分、長崎市

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