検証 佐世保市政 朝長市長の3期(5完)<市民協働> 施策着々「尚早」の声も

 クルーズ客船やカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致、基地との共生-。佐世保市は国と連動した政策が目立つが、市長の朝長則男(69)は、行政運営の指針となる総合計画の重点プロジェクトに「地域の絆」を掲げ、市民協働のまちづくりにも力を注ぐ。2017年には町内会への加入促進を定めた条例を長崎県内で初めて制定。先駆的に取り組んでいる。

 背景には、人口減少と少子高齢化がある。「地域住民の関係が希薄化することに対する市長の危機感は強い」。ある市幹部は代弁する。

 朝長が打開策と位置付けているのは、町内会を中心に青少年健全育成会や消防団、老人会などの団体でつくる地区自治協議会だ。支援を続け、昨年4月までに市内全27地区で設置が完了した。12月の仕事納め式で朝長は「画期的だ。地域コミュニティーの活性化に取り組む大きな下地ができた」と成果を振り返った。

 朝長の理念をかたちにする仕組みづくりは着々と進んでいるように映るが、ここにきて停滞感も漂う。

 市は情報共有など横のつながりを強化するため、各協議会を一つにまとめた「連合組織」の結成を呼び掛けている。しかし、発足から1年未満の協議会もあり、「時期尚早だ」と拙速さを指摘する声が噴出。先行きは見えない。

 朝長は昨年3月に各協議会の活動拠点となる地区公民館を「コミュニティセンター」に名称変更する方針を表明。指定管理者制度を利用し、各協議会にセンターの運営を任せる予定だったが、これも「地域の負担が増える」と不満が出て方針転換した。市はセンターを一括管理する新たな法人を設立する方針だが、具体的な内容は固まっていない。

 センター化は公民館で働く市の正規職員(10人程度)の削減が見込めるため、行財政改革の一環ととらえる向きもある。市職員連合労組委員長の菊永昌和(55)は「朝長市政で業務の民間移譲はかなり進んだ。市民協働の施策は重要だが、中身が伴わなければ単なるコストカットだ」と警戒する。

 強引に進めれば、住民が「押しつけ」と感じ、地域がまとまらない恐れもある。早岐地区自治協議会会長の井戸徳明(84)は、朝長の方針に理解を示した上で、こう注文する。「どうしても時間はかかる。そこは分かってほしい」

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佐世保市の地域コミュニティー施策の経緯

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