広島ドラ1小園はハイレベルな世界を楽しむ“野球小僧” 「緊張はなくなりました」

広島・小園海斗【写真:沢井史】

高卒ルーキーながら日を増すごとに評価を挙げる小園

 高卒ルーキーながら1軍キャンプで存在感を見せている広島・小園海斗内野手が、日南キャンプ第2クール初日となった5日、フリー打撃で九里と対戦。41スイング中、13本のヒット性の当たりを飛ばし、柵越え1本を記録。視察した他球団のスコアラーの目が釘付けになっていた。

 早朝からは正遊撃手の田中広輔と同じショートのポジションにつき、特守を受けた。田中の動きが軽快なのは言うまでもないが、小園はそばで一流選手でもある先輩の動きをじっと見つめる。そして自分も負けないと言わんばかりの軽やかなスローイング、そして足の運びを披露した。

 高校野球を終えても1日も休まずに練習、そして食事とトレーニングで培ったどっしりとした下半身は天福球場を訪れたOBや野球関係者から「周りの選手と背格好がさほど変わらない」と驚きの声も。周囲を見渡すだけでも球界を代表する選手があちこちにいる中、本人はいたって“普通”だ。

 初日のノックで隣に田中が守りについていた時も「初めはテレビで見た人だと少し緊張しましたけれど、(ノックを)こなしていくうちに、それほど緊張はなくなりました」と冷静だ。

 昨年の今頃は真っ白な練習着を着て同級生と共に白球を追いかけていた。プロのユニホームに袖を通したといっても卒業式をまだ終えていない“高校生”。それでも、グランドでみせる姿は18歳とは思えない。そして、ひょうひょうとした自身の性格のせいなのか先輩からも可愛がられているようだ。

「普段から色んな方から話しかけていただきます。この間、鈴木誠也さんからも言葉を掛けていただいて。優しい先輩方の中で練習させてもらっています」と先輩の心遣いに感謝している。同期入団の4歳上の正隨優弥外野手とキャンプ初日に一緒に自転車を買いに行き、練習後は共に自転車で“散歩”するなど、年が離れている先輩たちとの時間も楽しんでいる。

 母・こず江さんによると、元々どんな舞台でもあまり緊張しない方なのだそうだ。天真爛漫な性格も幼いころから変わらず、物心がついてからも反抗期はなかったという。「何でも話してくれる子。今でも何かあったか毎日連絡してきてくれます」。誰とでも分け隔てなく話ができ、友人も多い。ショックなことがあっても引きずらない方だという。

強靭な下半身ができた転機は高校2年秋、1年で体重は11キロアップ

 野球でも、ミスをしてその日は落ち込んでも、翌日になれば切り替えもできる。昨秋のU18アジア大会の韓国戦で1試合3失策を記録した際はさすがにショックを隠せなかったが、1週間後に取材に応じてくれた時は「このミスがいつか役に立つ時が来る」と悔しさを今後の野球人生に生かすことを誓い、むしろ燃えているようにも感じた。

 日本代表から帰郷後は野球を忘れて休みたいとも思うだろうが「自分には野球しかないんで」と、外にいる時は制服か練習着しか身にまとうことはなかった。

 今、絶賛されている下半身の分厚さは高校2年秋からの積み重ねの結晶でもある。2年秋までの小園は、どちらかというと全体的に“ひょろっとした上手い遊撃手”というイメージだった。だが2年秋の10月に公式戦を終えてから、徹底的に食事量を増やした。朝の7時に朝食。登校して朝練後に持参したおにぎりをほお張る。お昼休み前に学校の売店で天むすを食べ、昼休みに弁当、練習前にはおにぎり、と計7食。

 こず江さんは白米を少しでも美味しく食べてもらおうと電気炊飯器ではなく土鍋でご飯を炊くなど工夫も凝らした。お陰で体重は1年間で11キロもアップ。17年秋の日本代表のユニホームはSサイズだったが18年日本代表ユニホームはLサイズになるなど、見違えるほどたくましくなっていた。

 日に日に期待の熱は高まるが、本人はそれでも重圧とは思っていない。「すごい方がいて、その中で練習させてもらえるのはありがたいです。このまま1軍キャンプでとにかく1日1日をしっかりやり切りたいです」。むしろハイレベルの世界を楽しんでいるようにも見える。失うものはない。先輩たちの動きを目で吸収し、自分のものにするだけだ。(沢井史 / Fumi Sawai)

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