ブランディング手掛ける「デジマグラフ」 特徴整理 価値を見つけ提案

 全国の企業から依頼が集まるデザイン事務所が長崎県長崎市にある。羽山潤一さん(41)と村川マルチノ佑子さん(40)夫婦が2011年に設立した「デジマグラフ」。商品の企画からロゴやパッケージのデザインに至る「ブランディング」を手掛け、長崎県内だけで50以上の事業に携わってきた。そんな二人にブランディングの秘訣(ひけつ)を聞いた。

 -最近はブランディングに力を入れる企業は増えているが、二人が考えるブランディングとは。

 村川さん 名前や見た目を整えることとよく誤解されるが、大事なのは商品の特徴や経営者の考えを整理して価値を見つけること。その上でネーミングやロゴといった消費者との接点をそろえ、消費者がどこから見ても同じ印象を持ってもらうように工夫している。

 -具体的には。

 羽山さん 代表例は崎永海運(長崎市)が運営する「たかしま農園」。依頼はトマトの箱のデザインだったが、将来的に加工品やメロンもやる構想と聞き、農園全体の概念づくりを提案した。「何でも甘く作り、甘い物ほど高く売る」という考えを明確に決め、ロゴやパッケージは商品の種類が増えても使えるデザインを考えた。

 -何から始めたらいいか分からない事業者も多い。

 村川さん まずやってほしいのは、誰に売りたいか、どうなりたいかという目的を決めること。予算が厳しい場合、ロゴ制作をまずお薦めしている。ロゴが一つあれば、会社の成長に合わせた展開ができる。

 -デザインではデジマグラフらしさを意識するか。

 村川さん デザインは作品でもアートでもなくあくまで“仕事”。(依頼主の)数字にシビアに、売り上げや人材確保に貢献したい。依頼主の話を聞き、それでは売れないと思えば「もっとこうした方がいい」と率直に意見する。最近では、ステンドグラス柄のマスキングテープとしてヒットしている「上五島カノン」(新上五島町・美容室Creo)。ツバキや海をモチーフにしたデザイン依頼だったが、マスキングテープとの調和や世界遺産の動きを考え、教会モチーフの柄を提案した。シリーズ商品で種類も増え、その後の展開につながった。

 -羽山さんは諫早市、村川さんは東彼波佐見町出身。結婚後に長崎に戻って独立したが、今も長崎で仕事を続ける思いは。

 羽山さん どこにいても仕事はできるし、依頼も来る時代。同じ仕事をしてもローカルの方が目立つ。

 村川さん 長崎だと経営者に会いやすくプロジェクトの上流から下流まで携わる機会も多い。若者が県外に出て行くのはさびしい思い。若い人には長崎でやれると感じてほしい。

 -17日まで、長崎市茂里町のみらい長崎ココウォーク5階「ライフスタイルストア コーミンカン」で「デジマグラフの仕事展」を開催中。初の仕事展のきっかけと狙いは。

 村川さん 「コーミンカン」の仕事をしたつながりから展示会の誘いがあった。私たちの仕事展をきっかけに仕事のノウハウを還元でき、長崎に良い会社、すてきな商品があることに気付いてもらえるとうれしい。

 ■16日午後2時~3時、ココウォーク5階の「TSUTAYAブックストア イベントスペース」で トークショー「長崎のデザイン」を開く。参加無料。

 ■ズーム/デジマグラフ

 2011年10月設立。「BARAMON」(フジオカ)で「九州アートディレクターズクラブ賞グランプリ」受賞。「長崎デザインアワード大賞」や「TOPAWARD ASIA」など受賞歴多数。手掛けた長崎県内の主な企業や商品は▽お茶の秋月園▽岩㟢紙器▽九十九島ベイサイドホテル&リゾート フラッグス▽チョコレートハウス▽GOCHISOY(島原食品)▽ディープ!!波佐見町(東彼波佐見町)▽最後かもしれない商店▽CALSA NAGASAKI TROUSERS(ヤマサキ)▽ツバキスト(スワン)

展示品や商品を前に笑顔を見せる羽山さん(左)と村川さん=長崎市、みらい長崎ココウォーク
ポスターや商品パッケージなど手掛けたデザイン

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