全日本ロード:王者奪還を果たした中須賀。雨の最終戦鈴鹿で高橋巧と「お互いの強さ、弱さが見えた」

 全日本ロードレース選手権の最高峰、JSB1000クラスで通算8度目のタイトルを獲得し、“絶対王者”として君臨するヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームの中須賀克行。37歳の今でも日本のトップライダーとして戦い続けている。

 2005年から全日本の最高峰JSB1000クラスへステップアップした中須賀は、2008年に初タイトルを獲得して以降、2016年までの12年間で通算7度のタイトルを獲得。2012~2016年には前人未到のJSB1000クラス4連覇を果たし、全日本“絶対王者”としての地位を築き上げた。

 しかし、タイヤレギュレーションが16.5インチから17インチに変わった2017年シーズン、中須賀は新しいタイヤでの走り方に苦戦し、2戦連続でリタイアするなど序盤でポイントを獲りこぼしてしまう。後半戦からは17インチタイヤの乗り方にアジャストし、第4戦オートポリスから最終戦鈴鹿まで5連勝を果たしたものの、タイトルには届かず。ホンダの高橋巧にタイトルを奪われ、5連覇はならなかった。

中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING)

 中須賀が“王者”ではなく“挑戦者”として挑んだ2018年シーズンは、JSB1000クラスは2レース制となってレース数が13レースに増えたほか、ホンダがワークスチーム、チームHRCを復活させチャンピオンの高橋巧を起用して参戦するなど大きな変化のあった年だ。

 レース数増加とライバルの体制強化で中須賀の王座奪還は険しい道のりになるかと思われたが、中須賀は悪天候で中止となった第7戦オートポリスのレース1と第8戦岡山を除く11レース中8勝を挙げ、チャンピオンを奪還。通算8度目のタイトルを手にした。

 2018年シーズンを中須賀は「各コースでレコードを更新することができ、優勝も数多く挙げることができて、内容としては安定した1年だったと思っています」とふり返る。

「2017年は前半戦で悔しい思いをし、2018年は挑戦者としてチャンピオンを獲ったときの気持ちを思い出してトレーニングも集中してやれました。それをチャンピオン奪還という結果に繋げることができたので、シーズン1年を通して満足しています」

最終戦鈴鹿レース1で2位表彰台を獲得し、タイトルを決めた中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING)

■最終戦鈴鹿の2レースはホンダ高橋巧との「強弱が見えたレース」

 各コースでのレコード更新や、自身の成長、レベルの高いレースを展開できたのは、チームHRCの存在が大きいという。

「ホンダもファクトリーが復活して1年目ということで、前半戦はチームの連携があまり取れてない印象でした。後半戦からはマシンもライダーもグイグイ上がってきました。高橋(巧)選手もマシンと(走り方を)アジャストしてきて非常に厳しかったですけど、その分、自分もチームスタッフも気を引き締め、さらに集中してレースができました」

「レース内容も良かったですし、お互いに成長しあえるようなシーズンになったんじゃないかと思います。だからこそ、2018年はレベルの高いレースが展開できたと思います。他のメーカーもどんどん力を入れてきて、業界自体が盛り上がっていければいいなと思ったシーズンでした」

 各ラウンドでチームHRCの高橋巧と激しいバトルを繰り広げた中須賀。その戦いのなかで一番印象に残ったレースは、最終戦鈴鹿、雨の2レースだと明かす。

「レース1は、自分が弱点としているレースとなりましたし、向こう(ホンダ)が強いレースにもなりました。レース2のときのようなドライとウエットが入り混じった中途半端な路面コンディションでは、自分たちの方が強いと感じました。お互いの強弱が見えたレースでしたね。そこが一番印象に残りました」

「お互いのパッケージとしての得意不得意を垣間見ることができたので、2019年は引き続きレベルの高いレースができるという期待を持ったレースになりました」

チームメイトの野左根航汰も中須賀克行と激しいバトルを繰り広げた

 中須賀と激しいバトルを繰り広げたのはチームHRCだけではない。チームメイトの野左根航汰も中須賀とバトルを繰り広げ、トップを奪う場面もあった。

 チームメイトの野左根について中須賀はこう語る。

「野左根選手は2017年に2勝を挙げることができましたが、2018年に関しては優勝することが遠ざかってしまい、表彰台も少なかったですね。ポールポジションは獲りましたが、予選はあくまで予選なので、2018年は彼も足踏みしたかなという印象がありました」

「野左根選手は一発の早さも出てきているし、彼自身もプロとして日々の時間の過ごし方が少しずつ変わってきているので、これからが楽しみな選手と思っています」

 今年38歳を迎える中須賀は2019年もJSB1000クラスにヤマハファクトリーから参戦し、9度目のタイトル獲得に挑戦する。日本のトップライダーとして挑み続けるそのモチベーションはどこからくるのだろうか。

「僕は1戦1戦の優勝にとにかくこだわっていて、それがひとつのモチベーションでもあります」と中須賀。

「自分自身MotoGPのマシン開発もやっているので、モチベーションを高くしていなければ良いバイクは作れないと思っています」

「1戦1戦、優勝にこだわって、出場するレースは勝つというスタンスを継続し、より高いレベルで走れるようにしっかり努力はしていきたいです。その結果がチャンピオンに繋がっていきますから」

 38歳を迎える2019年も、JSB1000に参戦し、日本の二輪レース界を牽引する中須賀。今年も「1戦1戦、勝ちにこだわる」走りで、高橋巧をはじめとする後輩ライダーの前に立ちふさがることになりそうだ。

2019年シーズンも中須賀はJSB1000クラスにヤマハファクトリーから参戦し、9度目のタイトル獲得に挑戦する

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