地道な選手育成 結実 10年ぶり総合V 大村・東彼

3強から転落 危機感 「子どもたち」が活路に

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 10年の我慢の時を経て、大村・東彼チームが頂点に返り咲いた。第68回郡市対抗県下一周駅伝大会最終日の17日。ジュニア選手の育成を地道に継続してきた関係者の努力が、地元が一番盛り上がる大会の総合優勝という形で結実した。
 県内主要都市で陸上自衛隊の駐屯地もある大村・東彼地区は、古くから長距離が盛んだった。県下一周は第22~25回の4連覇をはじめ、第58回までに計17回の総合優勝を果たしてきた。
 状況が一変したのは2012年。有力ランナーを輩出していた実業団のSUMCO陸上部が廃部となり、県下一周の選手層も一気に薄くなった。以降は2、3位に甘んじる年が続き、第64回大会は24年ぶりに“3強崩れ”となる4位に転落した。
 何か手を打たなければいけない。陸上関係者たちが危機感の中からたどり着いた答えが「育成」だった。ちょうどそのころ、県下一周に小学生区間が創設され、大村市にも小学生対象の「大村陸上クラブ」が発足していた。そのコーチを務めたのが、県下一周の野口康之総監督(57)=九州電通=だった。
 それからは大村市陸協を挙げて協力態勢を確立。「トップ選手が来てくれるのを待つだけではいけない。底辺から育てないと真の強さとは言えない」(野口総監督)。子どもたちの指導にみんなで、真剣に向き合うようになった。
 第一に掲げたのは「楽しむこと」。陸上のすそ野を広げようと、やらされるのではなく、やりたいと思ってもらえるように心掛けた。年齢が近い中学生に頼んで一緒に走ってもらうと、子どもたちは引っ張られるように速くなった。上下の絆も深まり、中学、高校で陸上を続ける数も増えた。全国トップレベルのランナーに成長した廣中璃梨佳選手(長崎商高)や林田洋翔選手(瓊浦高)をはじめ、今回のエントリーメンバーのうち、実に11人がクラブ出身者だった。
 今大会、2区間で区間賞を獲得した林田選手は「当時は勝つことよりも、とにかく楽しむことを考えていた。それが今の自分につながっている」と言葉に実感を込めた。
 ピンチをチャンスにして生まれ変わった新生大村・東彼。就任20年目の野口総監督が感慨深げにつぶやいた。「来年以降も、きっと強いチームであり続けるはずですよ」。10年前より少ししわが目立つようになった顔が、満足そうにほころんだ。

ジュニア育成が結実して、10年ぶりの総合優勝を果たした大村・東彼。選手たちに胴上げされる野口総監督(九州電通)=長崎市茂里町、長崎新聞社前