【MLB】菊池雄星「まだまだ」 10年MVPからカーブで三振奪取も…煮え切らない理由

オープン戦初登板を果たしたマリナーズ・菊池雄星【写真:AP】

オープン戦デビューは自責0「メジャーの打者を感じられたところが一番の収穫」

 マリナーズの菊池雄星投手が25日(日本時間26日)のレッズ戦でオープン戦デビューを果たした。予定の2回を投げ2失点だったが、2失策が絡む不運もあり自責点は「0」。2010年にMVPを獲得した通算296本の2番ボットからカーブで三振を奪うなど、上々の内容だった。

 登板後の会見で菊池は開口一番「楽しかった」と笑みを浮かべると、こう続けた。

「メジャーの打者を感じられたところが一番の収穫」

 花巻東高時代からずっと憧れたメジャーの強者たちとの対戦で、この日一番の見せ場が早々に訪れた。1回、イチローを敬愛する左の好打者ボットとの対決。カウント2-2からの6球目、体の近くから曲がるカーブで三振を奪った。ボットはドジャースのエース左腕を引き合いに出し「カーショーみたいだった」と嘆息した。しかし、観客を沸かせた勝負には菊池自身が煮え切らないものがあったようだ。

「変化球の中ではカーブがスライダーよりもいいという話をしてくれたが、まだまだ、僕の中ではスライダーが一番と思っている」

 前日には「キャッチャーが感じる僕の良さと、僕が感じる自分の長所には多分、今まだ距離があると思うので、そこを詰めていく」とも話していただけに、受けたナルバエズ捕手との“距離”が見え、「味方を知る」収穫となった。

10分を超える登板後の会見で1度も「緊張」を使わず

 2点を奪われた2回、菊池は「最後いい形で終わりたい」の気持ちを前面に出し、8番パターソン相手にこの日最速の95マイル(約153キロ)の直球を投げ込むと、スライダーで追い込み、最後は94マイル(約151キロ)の直球で内野ゴロに仕留め予定の投球を終えた。

「毎年、スピードが出なかったらどうしようっていう不安が常にあるが、まず初戦で95マイルまで出たということはほっとする材料かなと思う」

 軸球への手応えを得た菊池が、言葉を継いだ。

「ちょっと強めに投げて球速的にもいい数字が出た」

 22日、2度目の実戦形式の打撃練習に登板した菊池は、「いい体の使い方をした力みであればいいボールが行くと思う」と話している。首脳陣にアピールした“3球勝負”。菊池はその感覚を蘇生させるきっかけとした。

 他にも高めの直球が有効なこと、甘く入れば痛打が必ず待っていること、走者を置いてのセットポジションではバランスを欠くなど、実り多き29球だった。

 花巻東高時代から憧れた米国のマウンドに臨む前夜は「ガッツリ」と睡眠を取り、試合への入りも「普段通りの調整で入れた」と淡々と話す菊池。10分を超える登板後の会見で、1度も「緊張」の言葉を発することはなかった。

 夢舞台へ向けた初めての実戦調整で、27歳左腕は最後まで冷静だった。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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