メキシコGP主催者、開催継続に必要な財政を保証できず。2019年限りでカレンダー脱落の可能性が浮上

 2020年のF1カレンダーからメキシコGPが脱落する可能性が出てきた。というのも、メキシコGPの主催者が開催に向けて必要な手続きのひとつを期限内に終えることができなかったためだ。

 メキシコGPは地元に経済効果をもたらしてきたものの、新しい連邦政府が公的資金による支援を続けない考えを示唆して以降、将来の開催が危ぶまれる事態となっている。

 メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は、2月に「F1との契約の詳細は承知していない。もし署名されなければ、将来は開催できなくなるだろう。内容を精査するつもりだ」と述べていた。

 また大統領は、当初F1開催に充てられる予定だった資金が、国の基幹事業である“マヤ鉄道建設プロジェクト”に転用されたことを明らかにした。つまりメキシコGPの主催者がF1に対して、開催継続に向けて必要な将来の財政保証を、現行の契約で公式に求められていた2月末の期限までに確約できなかったということだ。

 主催者側が2020年シーズン以降もメキシコGPを自動的にF1カレンダーに残すために定められた期限は、2月末だった。

 だが今回期限に間に合わなかったことが、必ずしも2019年シーズン限りでのメキシコGP終了を意味するものではない。仮に関係するすべての団体間で契約が結ばれれば、継続される見込みはある。

■メキシコGP主催者はF1開催継続に向け関係団体との交渉へ

 メキシコGPの主催者とF1経営陣はともに、グランプリ開催の継続に向けてあらゆる手立てを打っていくと誓約した。メキシコGPは、20年以上の空白期間を経て2015年から再びF1のスケジュールに組み込まれており、現在はファンにとって最も人気のあるグランプリのひとつとして評価が定着している。

 主催者は声明で、今回の期限に間に合わなかったことで「レースの主催団体として、世界選手権の2020年シーズン中に開催日を確保する権利を失った」と認めたが、さらに以下のように続けた。

「しかしF1およびメキシコ政府当局とは、メキシコでF1を存続させるために実行可能な代替手段を見つけるべく、強い気持ちを持って交渉を続けている」

「関係当局と継続中の交渉において新たな情報が出た場合は、我々の公式ルートおよび報道官を通じてのみ公表する予定だ」

 レーシング・ポイントF1のドライバーであるセルジオ・ペレスは、もしも自分のホームレースであるメキシコGPがF1カレンダーから消滅するならば、これを復活させるためには一世代分の時間がかかるだろう、として懸念を表明していた。

 またスペイン、イギリス、ドイツ、イタリアの各グランプリ開催契約もまた、2019年シーズン終了をもって失効するため、継続のための合意がなされないかぎり終了となるかもしれない。

 一方でプラス面を見れば、ベトナムが2020年に初めてF1カレンダーに加わることがすでに確定したほか、ザントフォールトかアッセンでのオランダGPについても実現の可能性が高いとみられている。

 それでも2020年には年間のグランプリ開催数が現在の21戦から減る可能性があり、リバティ・メディアがF1を買収して新オーナーになったときに目指していた状況とは大いにかけ離れることになる。

 不確実なF1カレンダーの問題については、通常よりも早い時期ではあるものの、FIAが来週開催するWMSC世界モータースポーツ評議会において議論される可能性がある。

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