ホンダF1山本MS部長 初日インタビュー:「レッドブルとトロロッソのいろいろな局面が見られるのが、2チーム供給の醍醐味」

 F1第2戦バーレーンGPの初日フリー走行は、フェラーリが圧倒的な速さを見せた一方、レッドブル・ホンダは苦戦を強いられた。そんな展開を、ホンダの山本雅史モータースポーツ部長はどう見ているのだろう。そして初日のパドックで大きな話題となったハミルトンの、「ホンダとの差はわずか10馬力」発言の感想も聞いてみた。

──2018年最高位(トロロッソ・ホンダでピエール・ガスリーが4位)を獲得した、思い出のサーキットです。初日を終えて、手応えはどうでしょう?
山本雅史モータースポーツ部長(以下、山本部長):正直、今日の時点では、レッドブル・ホンダはちょっと苦労していますね。ミディアムは順調ですが、ソフトがクルマのバランスに合っていない感じです。一方、トロロッソ・ホンダはダニール・クビアトが面白いかな。そういったいろいろな局面が見られるのが、2チーム供給の醍醐味というか。やっぱりやってよかったなと思いましたね。

2019年F1第2戦バーレーンGP金曜日 マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

──レッドブルがソフトタイヤで苦労しているというのは、車体が本来の性能を出し切れていないのか。あるいは今年のレッドブルの新車RB15が、ひょっとすると思ったほどダウンフォースが付けられないクルマなんじゃないかと、そんな話も出始めています。
山本部長:そうなんですか。でも、レッドブルは自信を持っていますからね。必ず盛り返しますよ。さっき(クリスチャン)ホーナー代表と(ヘルムート)マルコ博士にも会いましたけど、ふたりが慌てている様子はなかったです。このサーキットをチームはもちろん知り尽くしているし、これまで蓄積されたデータを活用してクルマを作ってきている。なので慌ててはいない。そんな印象でした。

──フェラーリとメルセデスには、どんな感想をお持ちですか?
山本部長:フェラーリの速さは抜けていますね。冬のテストの下馬評通りになったというか。いや、それ以上かな。3番手以下に、コンマ6秒でしょう。バルセロナでは、コンマ4秒差と予想してましたから。中団勢の接戦ぶりも、ハンパないですよね。さっきフランツ(トスト代表)も、「もう競り過ぎて、すごいことになっている」と言っていました。

■今季のホンダPUの性能にトト・ウォルフ代表が激励

──ルイス・ハミルトンがセッション後、「ホンダはメルセデスの10馬力差まで追い付いた」と言ったようです。それでヨーロッパのジャーナリストたちが、けっこう騒いでます。
山本部長:ほお、そうですか。今はGPS測定で、他チームのデータもわかりますからね。そういえばオーストラリアGPの際にトト(ウォルフ/メルセデス代表)に会った時も、「すごく頑張っているね」と言われました。

2019年F1第2戦バーレーンGP金曜日 ルイス・ハミルトン(メルセデス)

──それは、レース後ですか?
山本部長:いや、その前。たしか決勝日の朝ですね。おそらくトトはGPSデータを見て、そう言ってくれたのでしょう。ですので「ありがとう」とお礼を言ってから、「でも、トップは依然としてメルセデスでしょう」と返したら、「いや、これぐらいしかないよ」と、親指と人さし指で、数センチの間隔を作って見せたんです。

──ホンダとの差がですか?
山本部長:そう。ですの僕は両手で、「これぐらいでしょ」と言って、ふたりで笑ったんですけどね。

──ハミルトンの10馬力発言は、根も葉もないわけじゃないんでしょうね。
山本部長:コース上でいっしょに走っていて、そう感じたのかもしれないですね。開幕戦では、自分もタイヤをいたわりながらだったとはいえ、ミラーでマックス(フェルスタッペン)が迫っているのが見えたわけですしね。

■ヘルムート・マルコ博士は、復調したフェラーリの速さに驚き

──もしフェルスタッペンが終盤コースオフしてなかったら、どんな勝負になっていたでしょうねえ。
山本部長:あとでマックス本人も言っていましたけど、あそこでは抜けていなかったでしょうね。真後ろには行けてただろうけど、抜くまでは行かなかっただろうと。でも、そういうのをハミルトンが体験して、10馬力発言になったのかもしれないですね。でもホンダも一歩一歩、着実に進んで行かないと。

2019年F1第2戦バーレーンGP金曜日 セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)

──とはいえマルコ博士が、「エンジンがいいんだから、車体ももっと頑張らないと」と言ったのは、単なるリップサービスじゃないと思いますが。
山本部長:そうですかね。さっき会った時は、フェラーリの速さに驚いてました。

──ハースも速いです。
山本部長:ねえ。FIA会見でBチーム批判に対して、ハースのギュンター(シュタイナー/ハース代表)やフランツ(トスト/トロロッソ代表)が盛んに反論したらしいですね。

──あれは面白かったです。
山本部長:改めてですけど、2チーム供給はホンダにとってとても大事な経験ですよ。ジュニアチームとか兄弟チームとか言われても、やはりレギュレーションで制限がある以上、その枠は超えられないし、方向性は違う。なので同じパワーユニットを載せても、違う傾向が出てくる。ホンダはいい意味で、いろいろ考えさせられる。その材料を与えてもらえることが、すごく有意義ですよ。

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