街頭演説 全力の笑顔で 候補者一日密着ルポ

選挙カーから有権者に手を振る候補者=長崎市内

 7日の投開票に向けて舌戦が繰り広げられている県議選。候補者はどう戦っているのか。長崎市区に立候補したある候補者とその陣営に週末、記者が密着した。

 ■“桃太郎作戦”

 午後1時半、選挙事務所。候補者は昼食をかきこみながら、昼からの選挙カーのルートについて陣営関係者と話し合っていた。そこへ「今、出島近辺に人が多いらしい」との情報が入る。より多くの有権者にアピールできるチャンス。急きょ、出島周辺を通るルートに変更し、街頭演説の予定地に向かうことにした。

 選挙カーで、慌ただしく出発。出島近辺を歩く休日の有権者に向かって、同乗した2人のうぐいす嬢が立て板に水の口調で支持を訴える。こつは「地域にちなんだ話題を織り込むこと」と「ネタが切れたらひたすら名前を連呼すること」だという。

 選挙カーが街頭演説の場所に到着。先回りしてのぼりを立てていた運動員が、「全力の笑顔でお願いします」と候補者にマイクを握らせる。演説が終わると、そのまま繁華街を練り歩く“桃太郎作戦”を展開。12人が2キロ近く歩き、先頭で声を張り上げて支持を訴えた男性運動員は「もうのどが痛い」と悲鳴を上げた。

 この日は街頭演説を市中心部で計4回実施。候補者は長崎の町をもっと魅力的にしたいなどと訴え、陣営がチラシを配った。ただ、熱弁とは対照的に、ほとんどの人は素通り。それでも候補者は「慣れてます」。気持ちを入れ替えて次の場所へ向かった。

 ■夜まで総力戦

 夕方、選挙カーのうぐいす嬢は、全開の窓から吹き付ける冷たい風と戦っていた。春とはいえ、日が沈むとさすがに肌寒いが、道行く人に手を振るため窓を閉めるわけにもいかない。結局、手首を布で巻き、タオルケットで首回りを覆った上にジャンパーを羽織る“完全防寒スタイル”で夜まで街宣を続けた。

 陣営を心身ともに支えるのが炊き出しだ。支援者が毎日昼食と夕食を手作りしている。この日の夕食は筑前煮、白身魚のフライとみそ汁。調理スタッフの女性が「母心」でつくった温かい料理に、疲れた体もじんわり癒やされたようだ。

 陣営の総力戦は午後9時を過ぎても続いた。煌々(こうこう)と電気がともる事務所には、翌日の計画の話し合いや、チラシの準備に励む関係者の姿があった。記者が一日身に着けていた歩数計の表示は「1万3277歩」。疲れたか、と候補者に問い掛けるとこう返ってきた。「大変だけど、次のステージへ行けると思うと楽しい」

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