ローリングストックの極意教えます 本当はストック・ローリング!

袋や缶の見えやすい所に「2020.12」というふうに書いた大きめのラベルを貼るか、ノート、カレンダーに品物と数字をメモしておくと安心

ローリングストックとは何でしょう? これ英語(rolling stock)ですよね。なぜ、こんな言葉が突然現れたのでしょうか。きっかけは、南海トラフ巨大地震という大型災害がやって来るということからです。3日分の飲食物の備蓄では心配だということで、備蓄の推奨期間が急に「1週間以上」へと変わりました。ご存じない! 以前は3日以上でしたが、今は1週間以上なのです(内閣府・南海トラフ巨大地震対策・最終報告書2013)。

でも、わざわざ英語を使って、「これ何?」と大騒ぎしなくても、昔から立派な「日本語」があります。あなたが、いつも家庭でやっている「買い置き」です。ほら、トイレットペーパーですよ。少し余分に買い置きしていますよねえ。うっかり忘れたら「おおごと」なので、いつも残りの量を気にしています。ただ、トイレットペーパーには賞味期間がなく、飲食物の備蓄とはちょっと違います。では、「ローリング」「ストック」と単語に分けて詳しく見ていきましょう。まずは「ストック」から。この順番の理由は後ほど説明します。

 

「ストック」には裏ワザが!

災害時はライフラインが止まり、飲食料品店、外食店が閉まります。飲食物の生産、流通も止まりそれらの入手が困難になります。お金があっても買うことができません。それに、災害復旧には時間がかかります。自衛のために各自「飲食物の備え」が「不可欠」です。これをストックといいます。具体的には、普段の飲食物とは「別」に災害用として買い、「別」に置いておく、この「別に」が重要です。

■ストックのポイント
・常に一定量(1週間分以上)を置いておく。
・賞味期限は半年程度(家庭)を目安にする。
・賞味期限切れにしないように注意する
・室温で保存できる物を置いておく(冷蔵庫は倒れたり、扉が開いて中身が散乱、つぶれたりして使用不能になる場合があり、当てにならない)。
・置いておく物:自分の好きな物、普段食べ慣れている物、栄養のバランスが取れる物、ある程度の満腹感が得られる物。「主食」「おかず:野菜」「おかず:魚や肉」「おやつ」「飲み物」の5つをまんべんなくそろえる。
・災害発生から1週間(ライフラインが止まり、余震も多い時期)をめどに備蓄したものを食べる。開封したら「調理なしで即、食べることができるもの」が望ましい。缶、レトルト、フイルム包装など。
・賞味期間が同日にならないよう、買い方に工夫。同じ日に買うと賞味期間が同じ日に切れてしまう(備蓄量が多くなると避けられない)。それを避けるには、どうしてもローリングという発想が必要。

 

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「ローリング」の極意は普段から食べる

同じ品物を「大量購入、一気買い」した場合、「賞味期間」が同じ日にやって来ます。そんな場合に特に重要な言葉がローリングストックなのです。もし賞味期間が一度に切れたら、一斉に飲み食いできますか? 結局、捨てるしかなくなります。「普段から食べる」ことこそが、期間切れで捨てないための極意・裏ワザです。賞味期間が一挙に切れる不都合をなくすための工夫なのです。

一方、一気買いではなく、「チョビチョビ買い」した人は、賞味期間の手前で順次食べるので、捨てる必要はなく、あらためてローリングストックなんて言わなくても十分同じ効果が得られていることになります。

■ローリングのポイント
・災害時に食べるものでも、日常食として食べれば、その食品に慣れ親しむことができる(災害食に慣れる効用あり)。
・万一、不具合やおいしくない場合は、次回の購入時は他のものに変更する(自分の好み度の合否をチェックする効用あり)。
・単品で食べるのではなく、組み合わせて食べる。相性をチェックして、もし悪いなら変更する(サバの缶詰→シーチキンの缶詰など)。
・保存期間中に飲食すると数が減り、ゼロに近づく。災害が起こったときにゼロでは困るので、数が減った分だけ買い足して、元の状態に戻しておく。
・備蓄した災害食を、やたら食べ過ぎるとお金がかかりすぎるので、ストックした後、災害が起こるまでの間に適宜、飲食し、不足した分を必ず補充する。

ローリングの注意点 特に食べ盛りのお子さんがいる場合

「おいしいもの、自分好みのものを災害食として備えましょう」と呼び掛けていますが、それはそれで困ります。ローリングのやりすぎで備蓄が常にゼロになるという例があります。昨年、大阪北部地震のとき、小学校高学年の児童に災害食の備蓄状況を調査しましたが、その際に興味深い回答を見つけました。自由記述の欄に「僕の家には備蓄がありません。学校から帰るといつも備蓄している災害食(カップ麺)を食べるので、何もなくなります。買い足してもすぐ食べてしまいます」と書いてありました。
「そうかっ!分かるよ、ウンウン」と私はうなずきました。災害食の置き場に鍵をかけるわけにもいかないので、特にお子さんのいる家庭では難しいことだと思います。でも、このご家庭では、すでに「災害食が日常食」になっているわけですから、そこを生かして「カップ麺・日常食用」と「カップ麺・災害食用」と区別して別の場所に置いておくことをお勧めします。そして災害食用のカップ麺は食べないルールを決めておくことも大事ですね。

ローリングストックは、順番としては言葉の逆で、ストックがあって次にローリングがあることが大切です。ストックがなければローリングはできません。2つの言葉は列車のように連結しています。

Q&A

Q.  賞味期間が一挙に切れるのを逃れるのに、もっとうまく管理する方法はありますか?

A. 前にも触れましたが、洗濯物を取り込んだときのように山積みにした状態で置いておかないことです。仕分けが大事です。靴下、パンツというように分類します。すると、中味の減り方が一目瞭然ですよね。あっ、ラーメンがひどく減っている、お菓子も激減だぞ!など。ひと目で数量が判定できるような工夫をするといいですね。
どんな分類でしたか? そうです、①主食、②おかず(2種類)、③おやつ、④飲み物、⑤自分だけの治療食でしたね。

■日替わりメニューを備蓄する企業の挑戦→
https://www.risktaisaku.com/articles/-/14939

Q. 僕の家族は3人ですが、おじいちゃんと僕は好みが違います。おじいちゃんと一緒に備蓄するのは無理です。別々にしたいのですが、いいですか?

A. いい質問です。ぜひ、そうしてください。お買い物は一緒に行ったらいいですね。

Q. 賞味期間の数字を探すのが面倒で嫌になります。どうしたらいいですか?
A.そうですね。袋や缶の見えやすい所に「2020.12」というふうに書いた大きめのラベルを貼るか、ノート、カレンダーに品物と数字をメモしておくと安心ですね。

備蓄品の管理方法例

(了)

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