県都の選択 4期目の田上市政・下 人口減少など課題山積 議会対応も「進化」するか

大型事業や人口減少など課題が山積する長崎市。田上市長の手腕が問われる=同市内(小型無人機ドローン「空彩3号」で撮影)

 田上富久・長崎市政の4期目となる4年間で、市中心部は大きく姿を変える。
 2022年度の九州新幹線長崎ルート暫定開業に伴い、MICE(コンベンション)施設整備を含めてJR長崎駅周辺の再開発が進む。近隣地にはジャパネットホールディングスによるサッカースタジアム、公会堂跡地では新市庁舎が整備される。ソフト面でも各種事業が進む。「時間をかけ進めてきた未来の基盤づくりをしっかり仕上げたい」。田上は意欲をみなぎらせる。
 交流人口の拡大に力を注ぐ田上だが、足元では人口流出が加速している。昨年の日本人の転出超過数2376人は、全国市町村で最悪だった。市長選では田上を含め各候補者が対策の緊急性を訴えたが、具体論になると「新産業の育成」「子育て支援の強化」などが中心で目新しい内容は少なく、有効打が示される気配は今のところない。
 旧合併町など周辺部の振興も課題となっている。琴海地区で農作業をしていた60代女性は「市は中心部ばかりにお金を使っている印象がある。この辺りは高齢者が増え、バスの便数も減り、さびれていく感じだ」と不満をこぼす。
 あるベテラン市議は、市長選は大型事業が争点となり、中心部で票が割れたが、大型事業への関心が低かった周辺部で田上に票が流れたため、田上が勝てたと分析。その上で「次は周辺部の政策を進めてほしいという住民の期待の表れといえる。裏切ってはいけない」と田上にくぎを刺す。
 市長選と同時に市議選も行われ、市議会内では早くも勢力争いが始まった。市長選で善戦した前市議、橋本剛への応援姿勢を示していた複数の現職、新人が当選した。橋本が所属していた2人会派の勢力拡大が実現するか注目される。橋本を巡っては、4年後の市長選への再出馬を期待する声がある。ある議員は橋本と連携するとした上で「市政と市民の溝が深まっている中で、強引な行政が進まないように監視を強めたい」と意気込んでいる。
 田上市政は「根回し不足」と指摘されることが多く、議案の否決もたびたびあった。反田上派の増加は議会運営にも影響する。市政の課題が山積する中、まちづくりの「進化」を唱える田上が議会対応も進化させられるか。4期目の幕が開く。=文中敬称略=

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