圧勝の行方 4期目の朝長市政・上 強固な基盤 人、資金、知名度で圧倒

選挙戦で多くの後援会スタッフを引き連れ、四ケ町アーケードを練り歩く朝長氏(中央)=佐世保市

 8年ぶりの選挙戦になった佐世保市長選は、現職の朝長則男(70)が、無所属新人の田中隆治(75)に圧勝した。他を寄せ付けない強さの背景を探るとともに、4年後の市長選に向けた“胎動”を追った。

 告示の3日前。2回連続で無投票となる観測が広がる中、対抗馬が出るという情報が飛び交った。下京町にある朝長の選挙事務所も慌ただしさが増したが、陣営幹部は笑みを浮かべた。「また無投票なら(本格的な選挙活動をしない)8年の空白ができる。“次”に向けたいい準備になる」
 陣営は夜の個人演説会を入れず、市内全域を徹底して回る戦略を打ち出した。「忙しい時間に人を集めても迷惑を掛けるだけだ。広く支持を集める新しい戦い方を試す」。短期間で本番への準備を整えた。
 告示日の出陣式。衆院議員の谷川弥一は「私と全く反対で、あらゆる人と円満に、うまく付き合っている」と朝長の強さに感心した。全方位に気を配る政治姿勢は、国会議員以上と言われる多くの後援会スタッフらが支えている。
 政治資金も飛び抜けている。朝長が代表を務める政治団体の収支報告書によると、2017年の収入総額は約1億1300万円に上る。地元の経済人など多方面から寄付を受け、年間収入額は、県選管への届け出団体で、県看護連盟や県医師連盟に次ぐ3番目だった。ある市議は「人、金、知名度とも圧倒的だ。相手に戦う気持ちすら起こさせない」とうらやむ。
 市議会との関係も良好で、改選後も維持される可能性が高い。近年、うるさ型のベテランが複数引退し、穏健な議員が存在感を増す。政策で対立する社民も議席数を3から2に減らして勢力が弱まった。
 田中の出馬は無投票回避が目的だった。政治経験も、知名度も、支援組織も持たず、目立った政策論争もない“無風”の戦い。投票終了直後に当確が出て、朝長陣営は早々に万歳をした。歓喜が静まった午後11時すぎ。朝長は支援者と選挙事務所に残り、テレビの前で最終投票結果を待った。
 陣営は「誰が相手でも2割の批判票は出る」と踏んでいた。しかし、得票率は8年前より3ポイント少ない76%にとどまり、田中には21%が流れた。支持層の高齢化という懸念材料はあったが、ある支援者は複雑な表情を浮かべてつぶやいた。
 「意外と取られたな」

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