平成の上場企業倒産(4月26日16時現在)

 平成の上場企業の倒産は、累計234件に達した。バブル崩壊で膨らんだ不良債権、金融危機、リーマン・ショック、東日本大震災などの相次ぐ経営環境の激変と長引くデフレ経済に翻弄され、平成は上場企業の「不倒神話」が次々と崩れ去った時代といえる。

平成は累計234件 年次最多は2008年(平成20年)の33件

 1989年1月から2019年4月26日(16時現在)までの、平成の上場企業倒産は累計234件(負債合計21兆9,106億6,400万円)に達した。バブル景気真っ盛りの1989年、90年は上場企業の倒産はなく、平成初の上場企業倒産は1991年(平成3年)8月に会社更生法を申請したリースマンション分譲の(株)マルコー(負債2,777億4,000万円、店頭上場)だった。
 ゼロから始まった平成の上場企業倒産は、その後に状況が一変する。小泉内閣による金融機関の不良債権処理が打ち出された2002-03年には第1次ピークの合計48件を記録した。さらに、リーマン・ショックが影響した2008-09年には第2次ピークを迎えて合計53件と多発した。
 しかしそれ以降は、緩やかな景気回復を背景に上場企業の業績が急速に持ち直し、2010年の10件を最後に、2011年から2桁を割り込んだ。なかでも2013年以降は、2014年と2016年のゼロを含めて3件以内で推移している。
 なお、上場企業の年次(1-12月)倒産の最多は、リーマン・ショックがあった2008年(平成20年)の33件。次いで、不良債権処理が加速した2002年(平成14年)の29件、リーマン・ショック翌年の2009年(平成21年)の20件、イラク戦争開戦の2003年(平成15年)の19件の順。

平成の上場企業倒産 年次推移

平成最大の上場企業倒産 マイカルの負債1兆6,000億円

 平成の上場企業倒産の負債額の最大は、2001年(平成13年)9月に民事再生法を申請した(後に会社更生法に移行)総合スーパーの(株)マイカル(東証・大証1部など5市場)で、負債は1兆6,000億円だった。次いで、2017年(平成29年)6月の自動車部品製造のタカタ(株)(負債1兆5,024億円、民事再生法、東証1部)、1996年(平成8年)10月の住宅ローン保証の日榮ファイナンス(株)(同1兆円、商法整理、東証2部)、2000年(平成12年)5月の信販・クレジットカード業の(株)ライフ(同9,663億円、会社更生法、東証・大証1部)、同年7月の百貨店の(株)そごう(同6,891億円、民事再生法、東証1部)と続く。
 一方、負債額が最も小さかったのは、2005年(平成17年)7月のメモリーカード機器製造の日本エルエスアイカード(株)(負債4,800万円、取引停止処分、大証2部)だった。

産業別 製造業67件、建設業39件、不動産業33件

 産業別では、最多が戦後最大の製造業倒産となったタカタ(株)を含む製造業の67件だった。次いで、建設業39件、不動産業33件、金融・保険業25件、サービス業他21件、小売業18件、卸売業16件、情報通信業9件、運輸業5件、農・林・漁・鉱業1件の順。グローバル競争の激化や市場環境の変化などが影響した製造業に続いて、バブル崩壊後に先送りされた不良債権処理を要因とする建設業と不動産業。これに関連したノンバンクを含め、1997-98年の金融危機を経て整理が進んだ金融・保険業などが上位を占めた。

市場別 東証1部に次いでジャスダックが目立つ

 資本金の最大は、2010年(平成22年)1月の(株)日本航空(資本金2,510億円、会社更生法、東証1部)。従業員数の最多は、(株)マイカル(従業員数5,000人)だった。
 市場別では、最多は東証1部の81件、次に、ジャスダックが47件、東証2部が31件、店頭上場が22件、大証2部が21件と続く。東証1部に次いで新興企業を多く抱えるジャスダックが目立つ。

平成の上場企業倒産は年平均7.7件発生 昭和時代の3倍

 平成の上場企業倒産は、年平均で7.7件発生した。東京商工リサーチが全国倒産集計を開始した1952年(昭和27年)から1988年(昭和63年)までの「昭和」の37年間の上場企業倒産は合計95件で、年平均2.5件にとどまる。上場企業数が異なり単純比較はできないが、平成は昭和の3倍のペースで上場企業倒産が発生した。
 平成時代を10年ごとに区切ると、(1)1989年(平成1年)~1998年(平成10年)は44件(年平均4.4件)だったが、(2)1999年(平成11年)~2008年(平成20年)は140件(年平均14件)と急増した。この期間は、金融機関の破綻が相次いだ金融危機直後からリーマン・ショックが起こった時期で、不良債権処理の加速と世界同時不況が相まって上場企業倒産が多発した。
 しかし、(3)2009年(平成21年)~2019年(平成31年)4月は50件(年平均4.8件)と大幅に減少した。背景には、金融機関の不良債権処理が峠を越え、資金調達環境の改善、円安誘導で輸出企業を中心にした上場企業の業績アップ、戦後最長に及ぶ景気拡大などがあり、沈静化を後押ししたためとみられる。

設立年別 平成生まれが37件発生

 上場企業倒産の設立年別では、最古が1889年(明治22年)設立の北海道炭礦汽船(株)(石炭卸・負債1,180億2,100万円)だった。次いで、1910年(明治43年)設立の(株)新潟鐵工所(汎用エンジン製造・負債2,270億円)、1911年(明治44年)設立の大倉商事(株)(商社・同2,528億2,700万円)と老舗企業が続く。これに対して、新興企業では、2004年(平成16年)設立のニューシティ・レジデンス投資法人(不動産投資法人、負債1,123億6,500万円)が、最も設立から日が浅かった。
 元号別でみると、明治設立が3件、大正設立が17件、昭和設立が177件、平成設立が37件だった。平成生まれの上場倒産企業37件の産業別では。マンション分譲などの不動産業が10件で最多。次いで金融・保険業が9件と続く。市場別では東証1部が11件、ヘラクレス8件、ジャスダック7件の順だった。

都道府県別 27都道府県で倒産発生

 都道府県別(本社所在地)では、27都道府県で上場企業倒産が発生した。最多が東京都の125件(構成比53.4%)で過半数を占めた。次いで、大阪府33件(同14.1%)、神奈川県12件、北海道8件、愛知県と兵庫県が各7件、埼玉県と京都府が各6件と続く。
 この一方で、平成に上場企業倒産が発生なしだったのは、東北3県(青森県、岩手県、秋田県)、関東1県(山梨県)、中部2県(長野県、三重県)、北陸1県(富山県)、近畿2県(滋賀県、奈良県)、中国4県(鳥取県、島根県、岡山県、山口県)、四国3県(徳島県、愛媛県、高知県)、九州4県(佐賀県、長崎県、大分県、鹿児島県)で、合計20県にのぼった。

平成の上場企業倒産 都道府県別

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